自己紹介
驚きで私は固まってしまった、まさかこんな森の中で人に出会うなんて全く想像してなかったんだもの。
びっくりして固まってる私をよそに男の子は話し出した。
「答えろ!!誰なんだあんた!!」
この子口悪っ!!まぁおそらくそこに倒れてる鹿?に襲われた後に顔以外鎧に覆われてて剣持ってるヤツが出てきたら警戒するよな。
そんな事より早く弁明しなければ!、さっきから持ってる枝を殺す気で振りかぶってきそうで正直怖いし。
「待って待って!!私は君を襲いに来た訳じゃないからその枝を一旦下ろして!」
そう言いながら持ってた剣を地面に刺し、手を少し上に挙げる、なんか降伏してるみたいだな、これ。
私の言葉と動きを見て男の子は少し私の方を睨んだ後、持っている枝を下ろした、いやめちゃくちゃ殺気立ってるし枝もすぐ構えれる様な持ち方してるけど。
すると男の子は私に聞いてきた。
「とりあえず誰なんだ、あんた」
相変わらず口が悪い、けど話は聞いてくれそうだ。
「私は若海 渚、仕事中に死んだと思って、気づいたらこの森の中にいたの」
嘘は言ってない、と言うか本当の事を言っても信じてくれないだろうし、これくらいの嘘なら許されるよね。
「…俺は待宵 風雅、休日出かけてたら突然この森の中にいた」
待宵風雅、男の子はそう名乗った、そして少し考えたあと1つの答えにたどり着いた。
「「君[あんた]日本人か?」」
どうやら向こうも同じ答えにたどり着いたようだ。
「俺は日本人だ、あんたは?」
「私も日本人だよ…」
少しの静寂が森の中を流れる、聞こえてくるのは鳥の声や風で揺れる木々の音だけだった。
そして男の子からの殺気が消えて少し空気が軽くなる、さっきまでのピリついた空気は霧散し、まるで安堵する様な空気が流れた。
男の子が息を吐き出し、口を開いた。
「はぁぁ〜、まさか日本人だったなんて、さっきは申し訳ございません、あんな高圧的な態度を取ってしまい」
「!?……いッ、いえいえ、私も威圧感のある姿をしているのに不用心に近ずいてしまい…」
私は目を大きくして謝罪をした。
いやだってさっきまで高圧的で敬語のけの字すら無い男の子から社会人の気配と敬語、そして社会でよく聞く謝罪の言葉が聞こえてきたのだから。
ん?待てよ、何故男の子からこんな営業マンの様な雰囲気を感じるのだ?
まさか、と思って本来聞くのは無粋な事だが軽くテンパった私はそんな事気にせず聞いてしまった。
「…ところでご年齢はいったい…」
……やってしまった、だがもう言ってしまった中取り消すことは出来ない、と言うか取り消す考えが頭によぎってこなかった。
「?俺…私の年齢ですか?今年で22になります。」
その言葉を聞いた時、私の頭に雷が落ちた感覚がした。
嘘だろ!?成人済みなの!?この身長で!?
私の頭の中で様々な事が洪水のように流れて行った。だって目の前にいる明らかに13か14くらいの子が20歳超えてるなんて誰が想像できようか。
「………………うそぉん……」
つい私はそう声に出してしまった。小さな声で人混みのなからな聞こえないであろうその声は、静かな森の中でははっきりと聞こえるのだった。
「……そんな変に見えますか、私…」
多分自分の体についてまだいまいち理解してないのだろう。
男の子、いや彼はブカブカなポケットから小さな鏡を取り出していた。
「確かに異常事態でも体が変わってるなんてそんな事…そんな事………」
鏡を見た彼は固まっていた、今の私と全く同じ状態、見えている現実が脳内の思考とリンクしていない状態。
そして彼は、小さく声を先程の私のように捻り出した。
「………………嘘だろ……」
また訪れる静寂、だが先程と違うのはさっきは色々と張り詰めた空気だったが、今回は思考が停止した静寂が流れて行った。
そんな中、彼はまだ頭の中がまとまっていない状態だが私に聞いてきた。
「…………失礼ですがそちらのご年齢は…」
そう聞いてきた、答えてもいい、だが今の彼が受け止め切れるだろうか。今の私は彼と同じくらいの身長、なんなら2cmほど私の方が身長が低い。
こんな状態で答えたらまた頭の中がこんがらがってしまうのではないだろうか。
だが聞かれたので答える他ないのである。
「…私は今年で27になるはずでした」
そう言うと彼はまたフリーズしてしまった。
その時彼の手の中から小さな鏡がすべり落ち、すかさずそれを拾った。その時私の顔が鏡に映り自分の顔を知ることとなった。
「おっとっと、危ない、?これって私?」
鏡に映った私の顔は前の面影が全くない美少年?女?の顔をしていた、いや二重なのは面影あるな。
正直、私は自分のことにそこまで驚かなかった。そりゃ体が木になってる方がインパクト強いからなんだけども。
だが、そんなインパクトが無い彼はなかなか復活せず、彼が完全に復活するのは30分後のことであった。
to be continued……