ここはいったい…
撒かれた種はいつか、芽吹く時を待っています
頭がぼーっとする…
暗い、とにかく暗い世界が目の前に広がっている。
『ここはいったい何処なんだ…』
さっきまでおはしさんと話してたはずじゃ…
そんなふうに考えているとだんだん意識が覚醒していく。
『そうだ、たしか上から木が倒れてきて…』
木に潰されたはず、そう声に出そうとした瞬間気がついた。
『声が、出ない?』
心の中でそう呟き、慌てて周りを確認しようとするが目が開かない、それどころか首の感覚や腕や脚の感覚すら感じない。
一気に不安と恐怖が押し寄せてくる。正常に頭を回すことが難しいほどの恐怖、そしてその恐怖と共に蘇る目の前に迫ってくる死のフラッシュバック。
頭が回らない
何も見えない
何も聞こえない
匂いも分からない
怖い
助けて…
そこからは長かった。
何も見えないし感じない事による終わらない恐怖と不安、そして圧倒的孤独。
頭の中がぐちゃぐちゃになり始めてから何日経ったのか分からない、状況はかわらない。
とめどない恐怖が残響の様に留まり続ける。
そんな気が狂いそう、否ほとんど狂ってしまっている中、昔入ってまもない頃に園田先輩から教わったことが突然頭の中をよぎった。
《いいか?もし作業中に何か怪我をしたりトラブルが起きても絶っ対にテンパるなよ、山の中、それも作業中にテンパったりしたら最悪死ぬからね。》
その言葉が頭をよぎった瞬間からゆっくりと冷静になれた。
『落ち着け…ゆっくりでいい…とにかく落ち着け。』
少し時間が経ち、落ち着いて今のこの訳が分からない状況を少しずつ整理し始めた。
まずは手足から、とりあえず動かして…
『……動く気配とか以前に手足の感覚がない…』
…気を取り直して次は口だ、声を出してみて
『そういえば声、出なかった…』
……いやまだだ!次は目を開いて…
『手足と同じで目の感覚がない…それどころか身体全体が動く気配がない…』
分かるのはせいぜい何かが触れているということが分かる感覚程度…
『……これはどうしたらいいの?』
そんな考えが頭をよぎっていった。
それにしてもさっきから足元に何かがもたれかかってる感覚がするが気のせいだろうか…
╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶
渚が発狂しかけてる同時刻、1人の鎧を着込んだ騎士が囮になるように森の中を息も絶え絶えになりながら走っていた。
「はっ…はっ…はっ…うぐっ!!」
【ドザァ!!】
その鎧を着込んだ者、騎士が木の根に足を引っ掛けて転んでしまった。
するとその騎士からそう遠くない所から複数人の声が聞こえてくる。
「おい!こっちから音がしたぞ!!」「相手は龍人種だ、絶対に逃がすな!!」「なら音のしたこっちに…」「まて!あいつは鎧を着てる、音的にそっちよりこっちの方が可能性はある!!」
声達が遠くなり騎士は安堵する、幸いにも声達が向かったのは騎士の方でも、騎士が向かって欲しくない方向でもなかったからだ。
騎士はその場からゆっくりと立ち上がり森の奥へ進んでいく。
すると突然騎士がよろめく。
「ウッ!…奴らめ、俺たちにも効く毒を使ってたのかよ…クソッ…」
ふらり、ふらり、とよろけながらも騎士はゆっくりと森の奥へ歩いて行く、まるで何かから少しでも遠くへ逃げる様に。
すると騎士の目の前に明らかに人ならざる者が現れる。
頭部の無い人型に4本の腕、上腕2つはまるでノコギリの様な刃がついており下腕は胸上あたりで手を組んでいる、そして胸から腹にかけて化け物の口の様な大きな顎が縦についている人ならざる者が佇んでいた。
「クソッ…どうなってやがる!なんでここに居る!!」
震える腕でボロボロの剣を引き抜き構える。
だがその人ならざる者は何もせずただ佇んでいた。
「…何かは分からないか進ませて…貰うぞ…」
剣を引きずりながら騎士は進んでいく。もう騎士には剣を振ったり持ち上げたりするだけの気力も体力もなかったのだ。
だがそれでも剣をはなそうとはしなかった。
そして騎士は森の1番奥に辿り着き、1本の木にもたれかかった。
限界はとうに通り過ぎており気力で動いていたがとうとうその気力も尽きてしまった。
「もう…無理だな…リュン…先逝ってるよ……」
一瞬だけ騎士の眼が鈍く光り、騎士はその木にもたれかかりながら永遠の眠りについた。
もたれかかったのは森の奥でいちばん大きい木であった。
物語はここから幕を開けるのだ。
to be continued…
初投稿初執筆ではなくなりましたがまだまだ始めたばかりなので改善点などがあれば教えて欲しいです。