逍 遥
朝
あの甍この甍を照らし
朝日が彩りを加えてゆく
漆喰の塗られた壁に阻まれて
中庭で欠伸をする貴族は見えない
それでも甍は喜びに踊り
極彩色を施された神殿は
凛として佇んでいる
あれは、パルテノン
アテナーイの学徒たちが
夢幻のごとく逍遥している
そしてわたしもその一人
私淑し憧れた師との邂逅は
何をもたらすか
エピステーメー
言葉で理解る
昼
高みに憩う叢雲は
なにかを囁きあい
ゼフィロスは彼らを誘う
旅の道連れは
腕に抱えた書物だけ
向かうは見知らぬ大地
ペルシャか、トルコか
四つの尖塔に見守られ
青い天井も鮮やかな
イマーム・モスク
その模細工の精妙さは
まるで言葉にできない
わたしの中にある
命と神秘が
静かに脈打つよう
カリスは何を示すのか
ヌース
心でぢかに感じる
夜
漣だって揺れる天の川
子どもたちは夢の彼方で
寝息は月と語りあう
スースー
ハーハー
草原を渡るタジクの風は
我が家の子守唄
翁と媼に刻まれた皺は
歩むべき道の地図のよう
ああ、これこそ現であり
詩である
みながみな
なすべきことをなし
地球は廻り続け
やがてまた朝がくる
それはまた
わたしが続けるべき旅
フロネーシス
行うべきを行う
逍遥の道は限りなく
遥かに先へと伸び
絡みあう、ミノスの迷宮
世界は蠢めきながら
止むこと無く
推理を語っている
ロジック
言葉で論じる
論など旅の友には心もとなし
星が微かに瞬いた
そんな気がした
遠くから
馬が嘶く声がする
この世界は美しい!