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異世界の猫もアレは好き


全力で愛車マウンテンバイクを走らせ木々の切れ目、森の出入り口で停車する。


稲音「此処が出口…、んげ!?」


音の方向へやって来て目にした光景に思わず変な声が出てしまい思わず口を手で塞ぐ。


森を抜けた直ぐ目の前には複数の人間がバトルをしていた、杖から火の玉出したり、剣と剣がぶつかり火花が散ったり、アニメで見た光景そのものが今まさに広がっている。


命をかけた攻防戦に対して不謹慎だけどさ。

『私、本当に異世界に来たんだなぁ』とちょっと感動した。


稲音「あわわ、凄い…ッ!?」


覆面を被った同じ防具服を纏うザ・悪人達が8人。

銀の鎧を身に纏ったおそらく騎士団?であろう人達が4人。


悪人達は数に威張り一人に付き、2人で襲いかかってる所が見るからに卑怯だ。


え?なんで悪人かって?

だってさっきから覆面の人達、悪人定番のセリフばかり言ってるんだもん、言ってると言うか怒鳴ってると言うのが正しいかな。


?「盗賊共に遅れをとるな!ここで捕らえるぞ!」


「「「はい!!」」」


白い鎧を着たリーダーと思わしきポニテの金髪碧眼の女性騎士が2人の悪人を吹っ飛ばし、鼓舞と威嚇にそう叫べば3人の仲間たちが返事をする。


彼女の周りに居るのは、ローブを着たヒゲを生やした老人の魔法使い、銀色の鎧を着た短髪の青年剣士、片手にタガーを構え戦うツインテールの女性戦士、この3人だけ。


それでも確かな実力者達なのだろうと言うのは分かる。

数で押してくる盗賊に怯む事なく勇猛果敢に挑んでいく。


稲音「4人だけで大丈夫かな…、あ!!?」


ふっ飛ばされた覆面の一人がゆっくり起き上がり後ろから白い鎧を着ている女騎士さんを狙ってたのが見えた、思わず『大変!』となって気が付いたら飛び出しちゃって。


稲音「危なぁぁぁぁい!!」


高らかに叫んで猛スピードで突っ込む私は全員の注目を浴びる、それが良かったのか女性騎士は自分の背後の敵に気が付きすぐさま武器を破壊、無手になった覆面は尻もちをつく。


この期を逃さまいと他の仲間たちも自分に攻撃する敵を1人倒す。


私はと言うと。


稲音「やっぱり無理ぃぃぃ!」


ブレーキを掛け戦闘真っ只中で停車。

人にぶつかったらと考えたら怖くなったんだもん、しょうがないじゃない!?


数秒の沈黙、呆然としていた時が動き出す。


覆面リーダー「てめぇ、なにもんだごらぁ!?」


『こら』が『ごらぁ』になってる!ですよね、そうなりますよね!


…でもね?

なんかこいつら見てたらあの貴族の坊っちゃん達を思い出して無性にイライラしてきたんだよね。


稲音「別にどんなものでもいいでしょ!こんな馬鹿なことに体力と知力を使うぐらいならもっと他にやれることあるでしょうが!」


気がついたら怒鳴ってた。

私だって死にものぐるいで仕事を探したんだ。

楽な方に転ぼうとするなんて、なんか許せなかった。

完全に個人的な感情だったかもね。

でも言わせてもらうよ!


もう此処まで来たら悔いなく言いたいことを言う。


相手はわなわな震えてる、これはあれね、逆鱗に触れたようだ。


覆面リーダー「他にやる事か、はっ!てめぇに…、てめぇなんかに俺達の気持なんて分かるもんかぁぁぁぁ!!!」


覆面リーダーは斧を私目掛けて投げた。

ヤバイ、終わった!?

こんな痛い死に方するなんて最悪〜〜〜!


覚悟を決めて目を閉じた。


・・・・。


稲音「(……ん?痛みが来ない……?)」


斧の行方を知るため目を開けて見ると、鋭利な刃物らしきものが目と鼻の先で停止している…。


稲音「ぎゃあああ!!」


愛車から転げ落ち腰を抜かしてズリズリ後退り。


稲音「なに?なに!なに!?なんなの!?なんなの、ねぇ、ねぇ!?」


誰かに同意を求めるようにそう叫んでいる私の元に【その猫】はやってきた。


?「みてたよお嬢ちゃん、しかし未だにいるんだね?勇敢と無謀を履き違える人間は」


後ろを振り返ればちょっとぽっちゃり気味の焦げ茶の毛並みのスコティッシュフォールドがちょこんと座って居た。


稲音「あ、あなたが助けてくれたの?」


くるっとひっくり返えり私は四つん這いで猫に近づくと向き合うように座る。


?「そうさアタシの固有スキルだよ、時間を止める能力があるのさ、今はお前さんとアタシ以外の時間を止めている」


稲音「なにそれすご!異世界の猫は優秀なんだなぁ」


?「うふふ、そうだろそうだろう、なーんてね、アタシはただの猫じゃなくしてホーリーケットシーって言う聖獣なんだよ」


稲音「ケットシー?人語を使い人の波に暮らすって言われてる?」


ケットシー「ああ、そうさなんだい賢いじゃないか」


稲音「いや〜♪それほどでも♪」


ケットシー「そんな事よりお前さん今ピンチだろ?助けてやっても良いけど、代わりにお願い聞いてもらえないかい」


稲音「いきなり本題ですか!?」


ケットシー「当たり前さ、時はカネ成りだよこのスキルも何時までも持たないよ、ま、アタシは別に時を動かしても構わないけど」


背中を向けて尻尾をふりふり、こちらをチラチラ。

うん、私没落♡。


稲音「お願いってなにをすれば?私、見るだけで分かると思いますがお金ないですよ?」


ありのままを言ってみる、すると猫さんは『あはは』と笑う。


ケットシー「アタシはお金より食べ物が欲しいんだよ」


稲音「食べ物?」


ケットシー「ああ、あんたからすっごく良い匂いがするんだアタシには分かる、極上の食べ物だよ!」


こちらに近づき目をキラキラさせる。


稲音「私、食べ物もってたかな?あるとすればアレだけど……」


腕を組みうーんと考える私に猫さんはさらにたたみ掛けてくる。


ケットシー「それをくれるなら助けてやるよ、それともここでサヨナラするかい?答えは一つ!もう決まってるだろ?さぁさぁ!」


正直、もう答えは出てるんだけどね。


稲音「もちろん!助けてくれたら、と、とと、とびきり美味しいのを食べさせてあげる!!」


私は目の前に居る強そうな猫さんに向かい、拳を突き上げ必死にそう叫んだ。


ケットシー「そうこなくっちゃ☆」


猫さんは私の肩にヒラリと乗る。

う、ぐ、お、重い…。


ケットシー「ほら真っ直ぐ立ちな!」


稲音「は、はい」


よろよろしながら立ち上がる私の両肩に猫さんは足を乗せ、頭に前足を乗せた、頭に爪と肉球のダブルパンチ…。


ケットシー「うむ、悪くない景色だ」


稲音「と、所でどうするんですか?」


ケットシー「当然、こうするのさ」


尻尾をしならせ、ビン!と立てた。

次の瞬間、覆面達とその武器に稲妻が落ちる。


私に飛んできた武器は跡形もなく消える。


稲音「ひぇぇ〜!」


ケットシー「はい終わり」


尻尾をしならせ、私の背中をパチンと叩く。

痛く無かったけどびっくりするなぁ。


なんて思ったら再び動き出し愛車と共に覆面達はバタバタ倒れる。


稲音「うぉお!?」


ケットシー「変な声出すんじゃないよ、麻痺して倒れただけさね」


稲音「麻痺?本当?」 


ケットシー「武器は破壊したけど人間にはギリギリ手加減はしたよ、殺るのは簡単だが手加減は骨が折れる」


稲音「ありがとう猫さん」


ケットシー「よしとくれくすぐったい」


顔を赤らめプイとするも、尻尾はぶんぶん。

おーい顔に当たってますよー。

でもやっぱり猫はかわいいなぁ♡

なんて和んでたのもつかの間だった。


えーと、実はさ?

騎士団の人達が来て色々質問されたんだよ。

そりゃ当然だよね、覆面達があんなだし、私はこんな格好してるし、気になるよねフツー。


そしたら猫さんが機転を利かせて私を【テイマー】だって言ってくれたから、そこから色々話を盛り上げて、なんとかわかってもらえた。


悪いやつらを拘束して、近くだと言う街まで連れて行くとの事で一緒に行かせてもらうことになった。



            ∇

            ∇

            ∇



剣士と戦士と騎士の街。

【ギルティアラ】


稲音「わぁぁ♪」


大きな賑やかな町に思わず感動の声が上がる。

覆面達を仲間と町にいる他の騎士たちに任せ、女騎士【クリミア】さんが宿屋まで案内してくれた。


稲音「ここは広い町なんですね」


クリミア「ああ、ここは剣士と戦士、そして騎士の職業の冒険者たちが多く住んでいるんだ、護衛は勿論だが主に受けるのは討伐でね、そのためか別名【討伐の町】とも呼ばれるんだ」


稲音「討伐、冒険者って事はクリミアさんも?」


私の質問にクリミアさんは『そうだ』と答えてくれた、騎士団じゃなかったんだ。


クリミア「ホーリーケットシーを従魔にしているテイマーが住んでくれたら色々助かるんだが、な?」


稲音「い、いえいえ!私は駆け出しなので討伐なんてとてもとても…」


クリミア「あっはは、冗談だ冗談、あははは」


からかったんかいこのヒト…。


クリミア「お!見えてきたぞあそこだ」


稲音「ん?」


辿り着いたのは獣舎のある宿屋。


クリミア「従魔と泊まれる宿【剣の鞘】だ、ここの亭主はおおらかな人だからケットシーぐらいなら一緒に部屋に入るのを許してくれるはずだよ」


クリミアさんは優しくそう教えてくれた。

宿に着いた所で彼女とはお別れ。


クリミア「それでは私は失礼するよ、命を助けてくれて本当にありがとう」


稲音「いえ!私の方こそありがとうございました」


クリミアさんは私に深々頭を下げると帰っていく。

遠ざかる背中に手を振った後、私は項垂れる。


稲音「うー、宿に来ちゃったけどお金が無いからどうすればいいの…」


すると自転車の籠の中で寝ていた猫さんが起きた。

くわ〜と欠伸をする。


ケットシー「お金が欲しいならあげるよ」


そう言って私に渡してくれたのは小さな麻袋、開けると中には金貨が入っていた。


稲音「ぇ゙?」


ケットシー「なんだいその顔、聖獣が金貨持ってちゃいけないのかい?」


稲音「いやいや、まさかそんな」


言えない、一瞬『猫に小判』って思ってしまったなんて。


稲音「でも、金貨なんてどうやって?」


ケットシー「暇つぶしに森の中にあるダンジョンに寄ってね?そこの魔物が時折落とすのさ、どうせ使わないけどって思ったけど役に立つもんだね」


うん、猫に小判だった。


ケットシー「それより早く入ってご馳走食べさせてくれ!ほれほれ!」


急かす猫さんに押され、宿に入り部屋を取る。

自転車は従魔小屋に入れたよ。



            ∇

            ∇



私は部屋に入るとベッドに座り込んだ。


稲音「はぁ、疲れた」


ケットシー「んん♡早く早く〜、唯一無二の究極のご馳走を早くアタシに!」


スコ座りをして尻尾をブンブン振る猫さん。


稲音「(あはは、プレッシャー…)えーと、確かリュックに〜…って、なにこれ!?」


リュックが、リュックの中が七色の光が詰まってる〜〜〜?!


思わず叫んだ私に猫さんが小首をかしげる。

猫さんにリュックを見せれば『おやま!』と猫さんは驚いた声を上げる。


ケットシー「ビックリだよ、あんたこれアイテムボックスの空間じゃないか」


稲音「ア、アイテムボックス?アイテムボックスってなんでも収納できる異世界定番のアレ?」


ケットシー「そうだよ、手を突っ込めば中に何があるか分かるはずだ」


そう言われて恐る恐る手を突っ込んでみる、普通のリュックに手を入れるのと感覚は何も変わらない事に拍子抜けながらも、無事にぢゅ〜るを取り出す事が出来た。


稲音「出た!」


ケットシー「まってました!それだよそれそれ!」


稲音「待って待って慌てないで、はい」


封を切って伸ばす猫の手に渡して上げればぷにぷに肉球が触れる、ああ幸せ♪

猫さんは待ち焦がれたご馳走に夢中に吸い付く。


ケットシー「んん〜〜!!うまーーい!!アタシの鼻に狂いはなかった!!」


歓喜の声を上げ幸せそうにぢゅ〜るを食べる。

その姿にほっこりしながら気になった事を聞いてみた


稲音「ねえ、猫さん聞いても良い?」


ケットシー「ん?なんだい?」


稲音「どうして私が異世界から来たってわかったの?」


ケットシー「おや、ボーッとしてる割にはちゃんと聞いてたんじゃないか」


稲音「最初の時も今も私が異世界って言ったことにツッコミもしなかったし、何かあるんじゃないかってね」


ケットシー「御名答」


猫さんはぺちゃんこのぢゅ〜るを置くとスコ座りのまま毛づくろいを始める。


ケットシー「あんたから古代の魔力の波動を感じてね、何かと思って千里眼でステータスを見たのさ、ちなみに千里眼はステータスを見るスキルの事だよ」


稲音「へー、そんな便利なスキルがあるんだ」


ケットシー「まぁね、そしたらさ出身って項目に異世界って出たから、それでハッキリしたあんたは古代の召喚術で呼ばれた勇者ってね」


稲音「ゆ、勇者!私が!」


思わず声が出る、だって勇者だよ勇者!興奮するって!私は勇者として呼ばれたんだ、くー!テンション上がる〜♪♪♪


ケットシー「ああ、とー…言いたいんだけどね」


稲音「?」


ケットシー「変なんだよ、職業が勇者じゃ無くて《ぱーと》ってなってて、ステータスも低い、オマケに4つのスキルはも今まで見たことないものばかりだ」


稲音「見たことないの?」


ケットシー「ああ、いっちゃあなんだけど、へんてこりんだね」


稲音「え…、へ…?へんてこりん!!?」


勇者じゃなくパート、スキルは4つともへんてこりん。

私って、なんなのよーーーー!?





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