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第十三話  大嫌いなあいつ

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 マリータにとっても、ダミアンにとっても、フローチェは非常に都合の良い存在だった。


 自分たちが楽しく過ごしている間も、フローチェは勝手にダミアンが仕事で忙しく働いているのだと考えて、家の中の掃除、洗濯、食事の用意まで完璧に行ってくれたのだ。作り置きの料理のご相伴にあずかるのがマリータで、美味しい料理をダミアンと二人で楽しむ時間は最高だったのだ。


 仕事にしても、新人いびりをする怖い先輩がフローチェで、先輩の悪意に耐えながら健気に頑張るのがマリータだったのだ。フローチェが会計事務所を辞めた後は、自分を担当する上司を悪者にすれば良いだろうと安易に考えていたマリータも、所長が相手では思うようにいくわけがない。


 フローチェが会計事務所を辞めて一週間もすると、女性職員が全員、マリータを無視するようになってしまった。おそらく、ダミアンと浮気をしていた事実をフローチェの友人のミランダあたりが噂としてばら撒いたのだろう。


「私、そんな・・ダミアンさんとお付き合いなんかしていないのに!全て誤解なのに酷過ぎる!」


 悲劇のヒロインとなったマリータは、ベレンセとキストの前で涙を流しながら訴えると、

「そうだよな、そんなことをマリータがするわけがないよな」

と、キストが言い、

「あいつは辞めた後も迷惑をかけ続けるんだな」

と、ベレンセが呆れたように言い出した。


 マリータは自分よりも美人な女が嫌いだ。美人な上に真面目だと、更に嫌い度が増していく。会計事務所で働くフローチェはマリータよりも一つ年上の女性で、十五歳の時から事務所で働いていることから、古株の職員からもとても可愛がられているのだった。


 美人で有能なフローチェ、彼女をどうやって落としてやろうかと考えない日はない。自分よりも格上とされている女性を罠に嵌めるのは面白い。落ちていく様を見ると、自分はその女性より遥かに格上だったのだと実感することが出来るから。


 今までも何人か罠に嵌めて来たけれど、今回の場合は自分でもうまくいったとマリータは考えていた。フローチェが会計事務所に勤めている間は、絶対に、ダミアンとの交際はバレないように細心の注意を払っていたのだ。


 バカなフローチェは恋人の浮気にも気が付かず、結婚を理由に仕事を辞めて、ダミアンの家に引っ越すために荷物もまとめて、後は家を出ていかなければならない状況にまで自分を追い込んでいる。


 無職、家無し、そんな状況で恋人を奪われたら、一体どんな表情を浮かべるだろう?

 結局、マリータの想像通り、フローチェは恋人の浮気を知って泣いた。

 泣きながら、花束でダミアンとマリータを殴りつけてきたのだった。


「あああ、面白い」

 いつもスカした表情を浮かべている可憐な花の妖精とも言われるフローチェが、嫉妬と憎悪を露わにしながら、花束で殴りつけてくる。花束だから全然痛くない、それが尚更笑えるのだった。


「はあ・・もう一回やりたいな」

 フローチェは面白い、もう一度、罠に嵌めて落としたい。今の会計事務所にはフローチェほど陥れたいと思う女性が居ないのだ。


 同棲している恋人がいるというミランダが居るけれど、普通すぎてつまらない。

 ミランダの恋人であるポールを見たことがあるけれど、普通すぎてつまらないのだ。


「はあ、そういえば先輩、その後、本当にどうしたんだろう?」


 職を失ったフローチェは会計事務所に戻って来るだろうとマリータは考えていたのだが、フローチェは会計事務所に戻って来ることはなかった。


 元恋人であるダミアンのところにも戻って来ていない、引っ越しは無事に済んだようだけれど、その後、何処に行ったのかマリータもダミアンも知らないままだった。



     ◇◇◇



 マリータ・スラウスは、ゴーダ王国と隣国ザイストの国境を流れる大河スヘルデの近くに住む漁師の家の生まれであり、両親も親族も、スヘルデ川に住む淡水魚を街におろして生活の糧としていた。


 スラウス家は元々、ゴーダとザイストの両国を結ぶ船の渡守をしていた関係で、商家との荷の取引などに関わることが多かった。そのため、計算に強い人間が一族の中には多く存在したらしい。両国の関係が悪化し、国交が断絶されて以降は渡守の仕事が無くなり、漁師として残る者と商家などに雇われて出て行く者とに一族は分かれることになったそうだ。


 スラウス家があるカテド村にまで顔を出したバルトルトは、情報を提供してくれた少年に対して金貨一枚を放り投げると、

「だから私情で動いていないと言っただろう?」

と言って、側近のアダムの方を振り返る。


「どう考えても私情で動いているようにしか見えませんでしたけど・・」


「いやいや、全然私情じゃないって!僕がカテド村までやってこなかったら大変なことになっていたのは間違いない。僕がフローチェに会わなければ、こんな辺鄙な村までやって来ることはなかったわけだから、彼女は僕の幸運の女神以外の何者でもないよ」


 バルトルトがフローチェと初めて顔を合わせたあの日、フローチェは元恋人からこっぴどい振られ方をしていたのだった。


 会計事務所に勤めていたフローチェは後輩のマリータに恋人のダミアンを取られてしまったということになるのだが、バルトルトはマリータとダミアンについては個人的に調査をすることにしたのだった。


 ゴーダ王国と隣国ザイストとの国境にはスヘルデ川が流れているのだが、川を跨いでの両国間の衝突が増えているのは、スヘルデ川の上流でのことになる。下流に位置するカテド村は視察の対象外だったのではあるが、マリータの生家があるということで、ここまでバルトルトは足を運んだのだが。


「二年前の洪水で川底に土砂が流れ込み、スヘルデの水位に変化をもたらしていたか・・」


 長大なスヘルデの川を眺めながらバルトルトが呟くと、

「上流の衝突は囮ですね」

 と、側近のアダムがポツリと言ったのだった。


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