内密な話
1941年12月8日、大日本帝国海軍の真珠湾攻撃により、遂に日本軍は米英蘭仏に宣戦を布告した。
本山ら、現場にその事が伝えられたのは、開戦から2日後の事であった。
「おい、モト!遂に戦争だぜ。やったな!」
「タニ、お前何が嬉しいんだ?」
「来たれ有事。この日の為に訓練してきたやないか?で、俺達はどこに向かうんだ?」
「まだ大本営からは何も連絡はない。」
「ったく、ドンガメの俺達はいっつも後回しなんだよな。司令部から連絡あったら知らせろよ。」
「嗚呼、分かった。」
すると本山は何も言わず自室に戻っていった。パールハーバー作戦は大戦果を上げ日本国民は喜びに湧いた。だが、軍事的には大失態を犯していた。米国太平洋艦隊の空母を一隻も沈められ無かったからである。これが後の戦いに響く事になる。と、当時の人間のほとんどは知る由もなかった。
そんな時であった。政府肝入りで米国本土攻撃様の超大型潜水艦伊400号の開発計画が着々と進められていた。
「君が本山五十八か?」
伊200号が広島県呉基地に半舷上陸した時であった。
「失礼ですが、どちら様ですか?」
「ああ、失敬失敬。私は海軍省の細山武と言う者だ。」
「そんなお偉いさんが、私に何の御用でしょう?」
「本山中佐、腹空いてないか?」
「はぁ、これから夕飯ですが?」
「近くにレストランを予約しているんだ。少し話があるんだ。何かせ極秘りの案件でな。」
「はい、分かりました。御同行させて頂きます。」
「どうだ?旨いだろ?」
「貧弱な物ばかり食わされていますからね。で、話とは?」
「実はな本山君、君に政府(日本海軍)開発の最新鋭潜水艦の艦長になって欲しいんだ。君の武勇伝は海軍省でも有名でな。」
「自分にその様な大役は…。」
「物は試しだ。君以外に適任者がいなくてな。」
「分かりました。」
本山はつい安請け合いしてしまった。