受け継がれる意志
「本山ケイジ三曹入ります。」
「うむ。座りたまえ。」
「田中一佐、話とは?」
「君の父上には、とても世話になってな。素晴らしい潜水艦乗りだったよ。その御子息が海上自衛隊にいると聞いてな。急に呼び出してすまなかった。君も潜水艦乗りになるんだろ?」
「自分は父を尊敬しています。しかし、父の様なサブマリナーにはなれません。そんな器もないんです。」
「でも、きちんと潜水艦紀章を取得しているじゃないか。本当は成りたいんだろ?サブマリナーに。最近の若者は丘勤務の護衛艦乗りになりたがる奴が増えてな。まぁ、昔からサブマリナーはけんえんされていたがな。今に始まった事ではないよ。給料は高く飯は旨いんだけどな…。ちょっと我慢するだけで、厚待遇を得られるんだがな。」
「やっぱ、人手不足なんですね?」
「運用出来るギリギリのメンバーしかいない。だから、それぞれがプロフェッショナルだ。」
「自分は防大も出てませんし、ただの下士官です。父の様な指揮官にはなれません。」
「だから、どうした?エリートじゃなければ潜水艦には乗れないのか?そんな決まりどこにもないぞ?」
「良いんですか?」
「ああ、フラグシップ潜水艦おやしおで訓練を積み、一人前のサブマリナーになったら、その時は俺の元へ来い。階級も努力次第で爆上がり出来る。防大卒のエリートになんか負けるな。」
「はい。ありがとうございます。」
それから一週間後。
「お、お前谷山リュウジ?」
「本山ケイジ?久しぶりだな?お前も親父の後を追ったのか。」
「なんだ。知り合いか?なら説明は不要だな。」
「リュウジ、お前海上保安庁に行くんじゃ無かったのか?」
「あーあ、それな。試験落ちて流れ着いたのが海上自衛隊の自衛官候補生だったって訳よ。お前こそ、防大に行ってるもんだと思ってたが、同じ階級ってのは何かの縁だな。」
「二人とも顔見知りだからと言って容赦はせんぞ。」
「俺の方が先任なんだから、分からない事は俺に聞け。谷山三曹?」
「あーあ、分かってるよ。本山三曹。」