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申し訳ない事

 「鼠が虎にちょっかいを出した。」

 「と、まぁあの戦争はそんな感じだったな。」

 「虎穴に入らずんば虎児を得られなかったな。」

 「今となっては懐かしい思い出だな。」

 「伊400号潜水艦で太平洋を横断し、米国西海岸まで辿り着けたのは奇跡だと思うよ。」

 「いや奇跡ではあるまい。伊400号潜水艦のスペックをフル稼働させれば、無理な事では無いと信じていたさ。」

 「とか、何とか言って、結構冷や汗かいてたじゃねぇか。」

 「そりゃあ仕方無いよ。周りには味方艦船や潜水艦は一隻も無いんだから。お前が俺の立場ならどうしてた?」

 「あんなリスクを犯してまで、米国本土攻撃にはこだわりはせん。」

 「それは勇気が無いだけだ。米国本土攻撃による米兵の戦意喪失には一定の効果はあった。まぁ、一番ビビったのはハルゼー大将やニミッツ元帥ら米国海軍指導部だろうがな。」

 「随分と御自身のとった作戦行動に自信がある様ですが、犠牲者がいたのをお忘れですか?」

 「晴風(はるかぜ)の事か?」

 「はい。」

 「奴等に無理強いをさせた訳では無い。晴風搭乗員6人は、皆志願して行った。例え捕虜になろうとも生きて帰ってくる。そう言ったから、俺は彼奴等の発進を許可したんだ。米国本土は広い。不時着して生きて帰ってくる望みは充二分にあった。」

 「その主張は間違いだ、モト。」

 「何故だ?」

 「敵空母機動部隊が近くにいたからだ。あのタイミングで潜水しなければ、俺達はやられてた。一度潜水したら晴風は発進出来なくなる。」

 「それで発進を急いだのか?」

 「てっきりお前は分かってるものだと思っていたが、知らずに発進を許可したとは愚かだよ。」

 「晴風はどうなったんだ?報告がないぞ?」

 「結局、3機の晴風は米国海軍空母機動部隊に達する前に、敵のグラマンF6Fに落とされた。晴風ごときの戦闘機では、逃げるも特攻も無理だった。潜望鏡で見た限りでは、そんな最後だったよ。」

 「タニなら、分かってるだろう?彼奴らも俺達も発進させるなら今しかないと天性の勘で晴風を発進させたんだ。決してあれは神風ではないぞ。」

 「でも、何で米国海軍空母機動部隊は、俺達が近くにいたのに戦いを避けていたんだ?」

 「多分だけども、手負いか油切れで戦闘不可能だったのかもしれない。グラマンを発進させるのがやっとって感じだったしな。」

 「晴風隊員には申し訳ない事をした。」

 「今更遅いよ。でも、晴風が囮にならなきゃ米国本土攻撃は不可能だったってのも事実だな。」

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