未来への投資
「山田一佐は呉ですね?」
「ああ。偶数番艦だからな。」
「寂しく無いんですか?」
「呉にはパールハーバー以来の戦友もいる。だから寂しくはない。」
「そう言われちゃうとこっちはめちゃ寂しいんすけど。」
「大した縁じゃないだろ?」
「まぁ、そう言うなよ。山田一佐は、立派な戦友だ。と思わせてくれよ。」
「短い間だったが、世話になったな。」
「海の忍者である俺達はもう会えないかもな。」
「そうかもしれませんね。」
「第2潜水隊司令官のポストは山田一佐に任せた。」
「ああ。全力で任務を全うする。じゃあな。」
「武運長久を願っています。」
「お前らも達者でな。」
「ったく。最後まで頑固でロートルな帝国海軍軍人だぜ。」
「馬鹿‼聞こえるぞ。」
「それより、タニ。貴様も第一潜水隊の司令官になってんぞ?今までのやり方じゃ限界かもな。」
「はぁ?何ィッ!?そんな話聞いてねーぞ。」
「海幕に言え、上の司令官に。」
「こう言う縦割りがGHQのやり方らしい。最も帝国海軍も縦割りだったがな。それを踏襲したよってのがGHQの言い分らしい。」
「警察も消防も海上保安庁も同じだ。」
「まぁ、欧米も縦割り行政をしていたがな。」
「それで、海上自衛隊はどんな組織を目指しているんだ?」
「古き良き帝国海軍の伝統を残しつつ、米国式の新しい海軍の様な形にしたいと言うのが、今の俺の考え方だ。」
「何かめんどくせーな。」
「そのめんどくせー事をやるのが将官の役割なんだよ。未来への投資って奴だ。」
「50年100年先の日本人の為でもある。愚かな戦争に手をつけない様に、米国様と上手く付き合い平和を維持する。それが、我々自衛隊員の最初の仕事なんだよ。」
「それは大切な事だな、モト。」