あまのじゃく
元伊400号潜水艦の乗組員が、3隻の伊400系潜水艦に乗り米国海軍の所属になった事は、トップシークレットであった。
彼等は日本海軍の灯火を少しでも絶やさない為の精一杯の現場判断であった。大日本帝国の戦争は終わった。しかし、本山達の戦争は終わっていない。その敵が誰かと言う事は関係無い。
ただ、米国はもう敵ではなくなった事は確かだ。となると仮想敵国はソビエト連邦や中国と言う事になる。それは所謂冷戦の始まりであった。
横須賀を拠点とする米国海軍第7艦隊は進駐軍と共にやって来た。旗艦ホワイトアークに始まり、空母ミディホークや、フィッツジェラルド等そうそうたるメンバーが、横須賀に集結した。すると本山は1枚のカードを谷山に渡した。
「ジョーカー?」
「そう。俺達はこれから日本は米国のジョーカー(切り札)になる。」
「つまり?」
「あまのじゃくって事さ。」
「戦況は余談を許さないものであるがな。」
「とりあえず、スリーサイレントは、米国に徹底的に調べあげられた。」
「それは我々にとって何かメリットはあったのか?」
「馬鹿。あるわけねーだろ。化けの皮を剥がされた様なもんだからな。」
「所詮今の俺達は米国のひとこまにすぎない。」
「だから従ってるのか?」
「他に理由等無い。」
「もう米国に抗う必要はないって事か?」
「ああ、大義と信念はベクトルが変わった。」
「亡くなった山本長官がよく言ってたな。とにかく一刻も早い停戦を、と。」
「米国人と日本人が憎み合ったのはもう過去の話さ。」
「これだけ日本人が殺されたんだぜ?急にギアチェンジはちょっと無理じゃねーか?」
「敗戦は国力の差だ。そんな事戦う前から分かってた事じゃねーの?」
「それを言うのは無しだろ?で気が済んだ?本山大佐?」
「もっと愚痴りてぇ所だが日本人は、こんなにスレイブ魂が強いのかと思われるよりはマシかなと、思ってな。」
「そうだな。」
「東京で、戦勝国が敗戦国を裁く国際裁判が行われるらしい。まぁ、俺達には関係無いがな。」
「米国海軍に組み込まれてなきゃ、真っ先に裁かれてたんじゃん。あっぶな。」
「米国本土襲撃の罪は軽くは無いだろ?」
「失礼します。お話し中申し訳ありません。」
「どうした?」
「ハルゼー提督が御呼びです。」
「またあの爺ぃか…。」
「って事で、スリーサイレントを宜しくな。谷山副司令。」
「お、おい。聞いてねーぞ!ってもういねーし。」