天上天下唯我独尊
「久しぶりのシャバだぜ!」
「でもよ、下っ羽の俺達はどうしたら良いんですか?」
「きっと、もう召集はかからないだろう。」
「って事は大日本帝国陸海軍は解散ですかね?」
「もう武装解除は終わっているみたいだぜ?」
「しかし、何で艦長は捕まるの分かっていて横須賀に帰投したんだ?」
「外地の給油地はもう使えないし、距離的には横須賀が最適地だったんじゃねーの?」
「俺達を助ける為に…。」
「そういやぁ、巣鴨プリズンのMPは意味不明な事を言っていたな。」
「グッドバックホーム、ユウーOK。」
「家に帰っていいよって意味なんじゃね?」
「まぁ、確かに聞くこと聞いたら用無しだしな。」
「伊400号潜水艦で重鎮と言えば本山大佐と谷山少佐の二人だもんな。」
「とは言え、もう関わり無いんだ。帰るぜ。」
「おい、ちょっ、待てって!」
こんな兵士達が伊400号潜水艦クルーには沢山いた。MPも重要な事を知らない目をよく見れば分かった。目は口程に物を言うとは、この事である。
「艦長と谷山少佐大丈夫かな?」
「お前人の心配より自分の心配しろよ。日本全国壊滅状態やぞ。」
「自分の実家は山形なんで大丈夫だと思います。」
「東京を見てみろ?焼け野原やぞ。」
「とりあえず無事に帰れ。」
「はい、分隊長も御元気で。」
「さて、俺はどうするかな…。」
「あ、熊倉少尉、こんなところで何してんですか?」
「俺は天上天下唯我独尊身寄りがない。だから艦長や谷山少佐を待ち受けていたんだ。」
「いつ出てくるか分かりませんよ?」
「それは、百も承知だ。」
「ボロ家に帰っているよりも、また潜水艦の方が居心地が良いと?」
「今は金が紙屑の時代だ。折角太平洋戦争を生き抜いたから金はある。艦長ならきっと、その金で潜水艦隊を作ってくれるかもしれないと考えている。」
「なら、自分も待ちます。」
「山崎軍曹の家は良いのか?」
「親も生きてるかわかりませんし。熊倉少尉と同じですよ。」
「山崎軍曹、あの集団は?」
「山潟、田上、鍋屋、杉本、宮川、渡部何してんだ?」
「みんな行くとこ無いんですよ。」
「そうか、なら一緒に待つか?」
「ありがとうございます!御願いします。」
「とりあえず、腹ペコだな。飯行くぞ!」
「うーす。」
こうして、本山の使徒等は、一刻も早く本山と谷山の二人が解放されるのを、ひたすら待ったのであった。