クレイジーサブマリンボーイ
1945年12月ようやく、伊400号潜水艦は無事横須賀港に着いた。だが、上陸先に待っていたのは、潜水艦隊司令官でも連合艦隊司令長官でもなかった。MPと言う米国兵士達の臨検が、疲れ果てた伊400号潜水艦クルーを待ち受けていた。
MPと言うのは、ミリタリーポリスの略称で、米国の日本統治の為に送り込まれた敵兵であった。
「総員に告ぐ。無駄な抵抗はせず黙ってMPの指示に従え。これはもしかすると、最後の命令になるかもしれない。」
「良いのか?モト?」
「MPの存在は知っておろう?在日米軍のトップ、ダグラス・マッカーサー元帥直属の部隊だ。下手な事をすれば命の保証はない。」
「おい、そこのジャップ、早く上陸しろ。あ、そうそう。谷山少佐と本山大佐は巣鴨プリズンに行く事になっている。こっちに来い。」
(巣鴨プリズンか…。また何故そんな所に。どうやら行くのは俺達だけじゃなく、士官クラスのクルーまで。)
「おい、聞いても良いか?」
「ワット?日本語なら翻訳兵を通してくれ。」
「why do you go SUGAMOprizne with me ?」
「ほう、いっぱしの英語は使えるようだな。よし、何故伊400号潜水艦の乗組員が、ほぼ全て巣鴨プリズンに収容された訳を教えてやる。」
「日本海軍の中で、最も米国に危害を与えた潜水艦だからだ。潜水空母と呼ばれているみたいだが、それは名ばかりで、搭載しているはずの3機の晴風は特攻に使った様だな。それに米国西海岸の砲撃も確認済みだ。最もこれは軍事機密だがな。」
「さぁて、おしゃべりはここまでだ。トラックに乗れ。安心しろ、大多数の乗組員は無罪放免だ。余計な事を言わなければな。まぁ、幹部クラスはそうはいかんだろうがな。」
「アイオワに特攻した3機の晴風は大破した。第5艦隊司令官のハルゼー提督も大ケガをした。相当お怒りだぞ?ん?誰だ?ウォっ!?」
「山田中佐生きておられたのですか??」
「命が惜しくてな、敵戦艦アイオワに体当たりする目の前で不時着し、米国海軍の捕虜になっていたんすよ。それより、早くこちらに。」
「お、おう。」
ちなみに山田中佐は米軍側の人間である。あいにく巣鴨プリズンはキャパオーバーである。
まぁ、それを下っ羽聞いても埒が空かない。
「で、誰の差し金だ。」
「米国海軍第5艦隊司令官ウィリアム・ハルゼー提督だ。」
「激戦を繰り広げた相手に会えるなんてうれしいじゃないか。」
「言っておくが提督は恐いぜ?」
3人は懲罰房と呼ばれている特別室に入れられた。A級戦犯扱いで、伊400号潜水艦は米軍に接収された。敗者は勝者に従う。当たり前の事であった。日本人は馬鹿だ。空襲を受け原子爆弾をくらっても、まだ戦意を失わない。実にクレイジーだ。
「クリス大尉、巣鴨プリズンに着きました。」
「おう。さぁて、話して貰うよ。あの化け物submarineの全てを。」