終戦したと言う事
1945年9月2日。第二次世界大戦は終わった。勘違いしている日本人は多いが、8月15日は正式な終戦の日ではない。日本軍が組織的な戦闘をやめたのは9月2日である。日本国全権代表外相重光葵を筆頭に米国海軍戦艦ミズーリ上で速やかに行われた。
終戦の知らせは太平洋にいた伊400号の本山五十八大佐にも届いていた。
「艦長、日本は勝ったんですよね?」
「新型爆弾も大した事無かったんですよね?」
「みんな、聞いてくれ。日本は負けた。広島長崎は原子爆弾を被弾し、被害は甚大だった。らしい。日本は連合国に対して有条件降伏をしたとの事だ。」
「マジかよ…。」
「日本は負けたのか…。」
「大本営や海軍軍令部からの司令は特に無いが、皆も本土の家族が心配だろ?これから伊400号は日本に帰投する。目標は横須賀。針路5-5-2北北東方面。メインタンク注水ブロー。全速前進。」
「残りエネルギー約50%です。」
「横須賀までの距離約2000㎞、楽勝だな。」
「万が一敵艦に遭遇した場合はどうしますか?」
「自衛権と交戦権は行使する。なぁに。海軍のお偉いさんには、死ぬより生きる方を選びました。とでも言っておけば良い。ただ、無駄なエネルギーは使いたくはない。長期戦は避けたい。あ、そうそう。浮上する際には機雷に気を付けてね。日本近海はぐるりと米国海軍の敷いた機雷で封鎖されている。」
「実際に本土に復員する際、米潜水艦に沈められたケースもありますからね。気を付けましょう。無論、米潜水艦は戦争が終わっている事を知っている。」
「汚ねぇ。」
「大日本帝国は消滅した。だが、外地には沢山の潜水艦がまだ任務についてる。そこまでは海軍軍令部も分かっているだろう。そんな事よりも、これから先は、米国の復讐がどうなるかに備えなければならない。」
そして大ケガをしたウィリアム・ハルゼー提督も並々ならぬ決意で前線に戻っていた。
「キャプテン本山、伊400号はワシが沈める。」
戦争が終わっている事は体面に過ぎなかった。そんな事はハルゼー提督には関係無かった。決戦の日は近付いていた。