米国本土攻撃
潜水空母とは、名ばかりでは無かった。晴風型3機の着艦訓練は順調に行われ、伊400号の潜水訓練も実戦で使えるレベルに達していた。
「なぁ、モト?遂に俺達も実戦デビューか?」
「おい、気が早いぞタニ。」
「練度も乗組員の士気も高い。大本営としても、この伊400号を使わない手は無いだろう?違うか?」
「帝国海軍の一員として勝手な行動は許されない。」
すると、本山は一枚の電報を谷山に見せた。
「こ、これは?米国本土攻撃だと!?」
「消耗する日本海軍にこの作戦が出来るのは、この潜水艦だけだ。」
「晴風はどうするんだ?とても米国本土までは航続距離は持たないぞ?」
「それに潜水もせず米国本土攻撃は、どう考えても無茶な作戦だろ?」
「晴風は不時着させる。」
「正気か?」
「伊400号の様な巨大な潜水艦は、直ぐに敵のレーダーにキャッチされるだろう。だが、晴風を離艦させたならば、話しは違う。伊400号の潜水距離を考えれば、現状日本海軍が保有するどの潜水艦よりも、深く潜れる。敵ソナーに探知されず米国本土へ達するのは、可能であろう。」
「伊400号の潜水艦としてのスペックは確かに高いが…。」
外地での戦いはハイリスクである。そんな事は誰の目から見ても明らかであった。
「この極秘作戦は日本海軍ひいては日本軍全体の戦況に関わる重要な任務だ。」
「艦長!晴風を見捨てて、捨て石には出来ません。」
「誰がそんな事を言った?」
「いっその事晴風は日本に置いておくべきでは?」
「そうするか?松山飛行隊長?」
「作戦遂行上それが懸命かと思われます。」
「米国本土攻撃。これが今作戦の目標だ。晴風は日本に置いておく。」
「死にに行く様な無謀な作戦だぞ?下りたい奴は今のうちだ。」
本山は極秘作戦遂行の難しい舵取りを任された。