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かき混ざってまとまらない?

「じゃあ、また、……ね」

「うん、……じゃあ、ね」


 部活も一通り終わって、昇降口のとこでぎこちないあいさつを交わす。なんか、もどかしい。背は同じくらいなのに、うつむいちゃって、目なんて合わせられない。

 『恋人同士』なんて、あくまでふりだったはずなのに。いつも通り過ごせばよかっただけなのに。もう、そうじゃいられなくなってる。明日のお昼休みまで、待てるかな。今だって、ドキドキが収まってないのに。


「……ねぇ」

「ん、……どうかした?」


 はやる気持ちが、呼び止めちゃってて。聞こえなくてもよかったのに。だって、ここから先を続ける言葉、上手く出てこない。でも、『何でもない』ってそのままにしたくない。言葉を絞り出そうとしたら、心臓まで飛び出ちゃいそう。


「あのさ、……明日って、いつものとこでいいんだよね?」

「う、うん、……そのつもり」

「そうだよね、二人きりになれるし」

「……たぶん、そのほうがいいと思うから」


 うまく顔なんて見れないまま、探り合う言葉が続いてく。二人だけじゃないと話したくないことだからって言葉の裏を、どうしてこんなに期待しちゃってるんだろう。胸の奥、ズキズキしちゃって、痛いくらい。もしかして、これが、……恋だったり、するのかな。何も変わってないはずだったのに、その可能性に気づいちゃったら、もう気づく前には戻れない。


「じゃあさ、……」

「な、……何?」


 戸惑ったような夏樹ちゃんの声。うまく出てきてくれない言葉が、まだ、胸の中でつっかえちゃってる。肺の中、空っぽになっちゃってるみたい。『わたしもその時、話したいことがあるんだ』なんて、普段だったら、言うのなんて難しくないのに。


「ごめん、……やっぱり、何でもない」

「……そう?……」


 なんでもなくないの、すぐ分かっちゃいそう。声だって震えちゃったままだし、ほっぺが熱すぎて、しもやけでもないのに痛い。ちゃんと見れないけど、夏樹ちゃんのほっぺも真っ赤みたい。何かを言いたげな吐息が、そのまま通り過ぎていく。


「じゃ、じゃあ、また明日ね」

「そ、そだね、またね」


 ぎくしゃくしたやり取りが、そのまま流れてく。このまま終わりたくないのに、続け方なんてわからない。このままで明日に行きたくないのに、呼び止めたところで何もできない。

 ぱたぱたと速足で帰っちゃう夏樹ちゃんを、ただ見送るだけ。ため息ばかりがこぼれてく。……はぁ。結局、まだ、まとまらないまま。明日までこんなままじゃ、きっとおかしくなっちゃう。

 

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