滄桑之変
こんばんは、ザババです。投稿が遅くなりましたが四話目です。
久しぶりに1から書きましたがめちゃくちゃ大変ですね( ´∀` )知ってましたけど。
でもやっぱり楽しいですね~。さて、今回ほぼ初の戦闘シーンということでまた読みにくいかもしれませんがよろしくお願い致します。
その日の放課後。昼食からの流れで僕と一条さん、蓮の三人で一緒に下校することになった。
「これどういう状況!?昼間は流れに乗って一緒に帰る事になったけど共通点あるのは二人なんだろ!?責任取って話題を提供してくれよ!せっかく三人で帰ってるのに終始無言は意味わからないだろ!」
蓮が僕にしか聞こえない声で捲し立ててくる。それはそうだ。かれこれ学校をでて10分程静寂が続いているし付き合わせたのはこちらなのだから尤もだ。
「そうは言ってもなぁ。僕も一条さんのこと全然知らないんだよな」
そう。よくよく考えてみたら、一週間前偶然出会っただけで、一条さんのこと、好きな食べ物も誕生日も何も知らない。話題の出しようがない…
「はぁ?二人仲良いんじゃないの?」
「いや…一週間前に初めて話したからな…」
「あ、そうか…」
蓮が申し訳なさそうな顔になる。
「い、一条さんはさ!大丈夫なの?折角友達といるのにこの静寂は嫌じゃない?」
咄嗟に一条さんに話を振ってみる。
「どうして?」
「どうしてって…」
「友達ってこういうものなんでしょう?言葉なんかいらない、背中で語るんでしょう?」
頭に?が無限に浮かぶ。
「一条さん、因みにその謎の知識は一体どこのどいつから…?」
「烏丸」
烏丸ァ!とつい心の中で叫んでしまった。
「烏丸って誰?」
叫んでいると、蓮が当然の疑問を投げかけてくる。
「え、え~と、なんて言えば良いかなぁ。バイト…」
苦し紛れにバイト先の先輩と言おうとした瞬間、一条さんのポケットから無機質な携帯電話の着信音が響いた。
「篝です。…はい。了解。すぐ向かいます。」
短い電話。電話が切れると同時に、一条さんの表情が曇る。
「燎くん、仕事。ついてきて。」
口早の説明で理解が追い付かない
「え?え?どうゆうこと?」
「早く」
一条さんが僕の腕を掴んで走り出す。朝とは逆の立場だ。とか考えてる場合ではない。蓮を置いて走り出す。
「…バイトか?」
1人置いて行かれた男がポツリと呟く。
「ちょ、ちょっと待って!一条さん!突然どうしたの!?」
腕を引っ張られながらこのままではたまらないと抵抗しながら聞く。
「“奴”らが現れた。」
「“奴”…?」
「能力者」
ハッとした。一週間前に僕と一条さんを襲ってきたような奴がまた現れたと言うのだ。
「今そいつの所に向かってるの?」
「そう」
「行ってどうするのさ!?」
一週間前の出来事が蘇ってきて一条さんを捲し立てる。かなり動揺しているのが自分でもわかる。だが、それをどうこうすることは出来ない。
「倒す」
動揺を隠せないそんな僕の言葉を、一条さんは一蹴した。
「言ったでしょ。警察や普通の人間には対処できない。だから私達がいる。」
当然といった表情で、落ち着いた様子で、僕に言い放つ。
「そ…そんな危険な事をどうして一条さんがやるんだよ!?他にもいるでしょ!?それこそ、烏丸さんとか、竜胆さんとかの大人に任せるべきだろ!?」
「それが私の“役目”だから」
また、一蹴する。さも当然といった様子で。変わらぬ様子で言い放つ。
「役目…?なんだよそれ…意味分かんないだろ…なんで一条さんがそんなことしなくちゃいけないんだよ…死にかけたんだぞ…」
全く納得できないし理解できない。沸々と怒りが湧いてくるのが分かった。
「時間がないの、先に行くね。ここで待っててもいいよ。終わったら戻ってくるから」
苛立つ僕はお構いなしといった様子で、一条さんは慣れた足取りで先を急ぐ。
数分ぶりの静寂が一帯を包む。
「クソッ!」
苛立っていた。あらゆる事に。さも当然といった様子で、怖がることなんか一つもない様な顔で死地に飛び込む一条さんにも、それを当然の事と思い込ませたまわりの環境にも。そしてなにより、それを止めることも、せめて一緒についていくことすら出来なかった自分に。
「ああもう!どうすればいい!?」
せめて一人にせず、一緒についていくべきだと思っても、ついていけば今度こそ死ぬかもしれない。そう思うと、足が震えて動けなかった。
そうこうしている今も、一条さんは一人で戦っているかもしれない。ボロボロになっているかもしれない。
今度こそ本当に、死んでしまうかもしれない。
「—―ッ!」
思考が止まる。
「あああ!!!」
―慟哭。
恐怖心を抑え殺して、走り出した。
商店街の路地裏に無機質な、金属同士が激しく何度もぶつかり合っているような衝撃音が響き渡っている。
そこではおよそ160cm程の小さな身体で縦横無尽に路地裏を駆け回る少女と、優に2mを超えるほどの大きな身体でドッシリと構える巨漢が轟音を響かせ激しくぶつかり合っていた。
「ちょこまかとよォ!うぜえ!!」
自身の伸長の二倍ほどもあるおよそ剣とも呼べぬ鉄の塊を勢いよく振り回す巨漢。
「……」
それを、軽やかな身のこなしで軽々避けてはこちらは自身の体躯の半分にも満たない小さなナイフの様なもので巨漢の身体に傷を刻んでいく。
「—―チッ!小蝿がよォ!効かネんだよ!!」
ハッタリではない。
事実、一方的に傷をつけているのは少女の方だがこの体格差。少女の武器では決め手に欠ける。
「ストックが足りない……」
少女が呟く。
「しゃらくせえなあ!使うなとか言われてるが関係ねぇ!潰れて死にな!」
巨漢が叫ぶ。
「破岩砕掌!」
巨漢が建物に手を触れる。すると、今まで二人を覆うようにそそり立っていた壁に亀裂が入り建物が次々と崩壊する。
「―クッ!」
小柄な少女は、自身と同等かそれ以上の大きさの次々に落下してくる瓦礫を捌くので限界だった。
自身から注意が逸れたのを巨漢は見逃さなかった—―
「ぐっ・・・!」
—―間一髪。漢の大きな腕が少女の細首を捕らえかけた瞬間、咄嗟に小さな腕でなんとか守りその細首を直接絞められる事態は免れた、それでもあまり喜べる状況ではない事に変わりはない。
「反応したかよ!だが無駄だ!その腕も首も纏めてへし折ってやるよぉ!ハハハハァ!!」
「…っ」
巨漢のけたたましい笑い声と、少女の細い身体が押し潰されメキメキという音が路地裏に響き渡る。
—―腕の感覚が無くなってくる。
腕は既に耐えれる程の力が出なくなり、次第に首が絞まり始める。
巨漢は首を手をかけている腕に更に力を込める。
少女は自分の意識が徐々に遠のいていくのを感じる。
最早意識は一分と持たないだろう。
少女は死を覚悟した――
次の瞬間、路地裏に響いていた巨漢の笑い声と少女の身体があげる悲鳴の二つの音に更にもう一つの慟哭が混ざる。
「その手を、離せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
突如現れた少年は、何処にあったかバールのようなものを両腕で大きく振りかざしながら少女の首に手をかける巨漢目掛けて猛進する。
「り…う、く…ん…?」
少女が力を振り絞り声にならない声で少年の名前らしき言葉を発する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
少年が憤怒に塗れた雄叫びをあげながら、今の怒りに比例するように高く高く振りかざした両腕を巨漢の顔面目掛けて振り下ろす。
―刹那。
グチャという正に肉を肉叩きで叩いたようなお世辞にも綺麗とは言えない音が路地裏に響き渡った。
巨漢は倒れこみ、その衝撃で掴んでいた少女は腕からすっぽ抜けてしまい瓦礫の山に叩きつけられてしまった。
「ガハッ……こんのガキィ!!!」
殴られ倒れこんだ巨漢は、すぐさま標的を突如現れた少年へと切り替える。
しかし、先程拘束から放り出され少女の遠のいていた意識は瓦礫の山に叩きつけられた痛みと衝撃によってハッキリと取り戻されていた。少女は、自身から注意が逸れたことを見逃さなかった。
少女の周りには叩きつけられた時に出たと思われる大量の赫い液体で海が出来ていたが彼女はそんなことお構いなしといった様子で、何処かから現れた紅蓮色の大鎌を構え即座に巨漢の首に手をかける。
「これだけあれば充分。」
そうただ一言だけ言い残すと、
「待っ、やめ…」
先程までの威勢が嘘のように無くなった巨漢の命乞いを最後まで聞くことなく、敵の首を落とした。
路地裏を静寂が包む。少年にとっては体感で何時間も経ったかのように思えるが実際は十分程度だろう。
「無事で良かった…一条さん。ごめん、僕…」
一刻も早く謝ろう。一条さんの前で取り乱したこと、一条さんを一人にさせてしまったこと、来るのが遅くなってしまったこと。そう思い僕は口を開く。
「燎…くん、き、くれ…あ…が…と――」
突然一条さんが倒れる。何かを言いかけて。
「一条さん!?」
すぐに駆け寄り、倒れないよう一条さんの身体を抱き留める。
一条さんの身体を抱き留めた僕の掌には、一条さんから零れだしているであろう鉄臭く生温い液体がベッタリと貼り付いていた。
改めまして、ザババです。
まずは完読お疲れさまでした。そして、ありがとうございました!
前書きに書いた通り、戦闘シーンがほぼ初だったのでめちゃくちゃ悩みながら書きましたがその分めちゃくちゃ楽しかったですね~。それと、今話の終わり方が個人的にはちょっと凝って作ったつもりなので如何だったかなぁと気になりますね。そんなこんなで、次回第5話はまた半日常シーンといった感じなのでまたバトルは暫くお預けの予定です。あらゆる部分が見切り発車ですのでご了承ください。また感想などありましたらコメントしてくださると幸いです。では、また次の話で。




