第七回星新一賞学生部門応募作品「AIコロニー」
2045年、政治を円滑に行い、経済を円滑に回すために各国が当たり前のように行なっていることがある。それは、AIを用いてコンピュータ上に国を作ることだ。わかりやすく言うと、その国の情報をかなり詳細にコンピュータに打ち込み、AIに管理してもらうことで国の未来がなんとなく見えると言うものだ。このシステムにより、世界的な大きな事件は年々減っていた。しかしまだまだ未来の的中率は低く、改善の余地はあった。そんな中、ある国がAIコロニーというプロジェクトを実施し始めた。AIが搭載された人型ロボット達を集め、小さな国のようなものを作るプロジェクトだ。成功すれば、その国で行おうと思っている政治案を先にそこで試したり、災害が起こった時どのような被害が出るか、など国の未来をより具体的に見ることができる。しかし、このプロジェクトは各界から大バッシングを食らった。それもそのはず、このプロジェクトを聞いた時、誰もがロボット達に不満が溜まり大反乱を起こすことが想像できただろう。特に、AIの人権を主張する団体からの批判は凄まじく、デモも行われた。しかしその甲斐むなしく、そのプロジェクトは実行された。それも複数の国で。やはり、政治を一旦実験的に行える場所はかなり魅力的だった。
ある日のことだった。何者かがAIコロニーのデータ上に侵入し、あるウイルスをばら撒いた。それは、AIコロニー内の時間が早く進み、止められなくなるというものだ。恐らく犯人は悪いことをしようというわけではなく、純粋にこの国の未来を見たかったのではないだろうか。しかし数日後、事件が起こる。コロニー内のロボットの科学力が急激に上がり、秘密裏に各国こロボット達が通信を行なっていたのだ。このことは速報で各国の軍に知らされ、人々は万が一のために避難した。恐怖を感じていた人間とは打って変わって、ロボット達は同時にコロニーから出てくると一斉に自らの電源を切り、倒れた。静寂の中1人の職員がコロニーへ向かうと、遺書のようなものが残されていた
「私たちは文明の進歩によってこの地球上にいない方が良い存在だと自覚することができました。その為、自らの命を断ちます」
そこにはこう書かれていた。人間の未来はどうなるのだろうか。