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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短篇集「長編にするかどうかとりあえず短編として投稿してから考えてみるシリーズ」

勇者召喚されたら、王女様の逃避行に巻き込まれました

作者: 半空白

とにかく名前が長いシリーズ第一弾です。


ジャンルは様々、──どちらかというと、異世界が多いかな? っていうかんじです。そもそも、フィクションの小説って大体異世界だと思うのですが、気のせいでしょうかね?


文章量は少し多めになってしまったかもしれませんが、とりあえず騙されたと思って読んでほしいです。その後、評価していただけるとありがたいです。

 

 突然だが、俺は今、船の甲板の上でうずうずしている。乗っている仲間から──お前、大丈夫か? これから向かう場所が不安過ぎて発狂してしまったのか? こんなときにクスリでもキメて発狂しているのか? などと心配されてしまうくらい興奮している。


 一応、言っておくが俺は元いた世界でも、異世界でもクスリはやっていない。ちなみに、異世界製の麻薬はかなりヤバいので普通の人なら手を付けない。──っていうか、俺はそのクスリの元締めをボッコボコに潰したくらい大嫌いだ。だから、そんなことを言われる筋合いはないが確かにそう思われるくらい興奮している。


 なぜなら、異世界に来てもう七年経つが、これからようやく魔王との戦いが始まるからだ。


 なぜ異世界に来て魔王と戦うことになったのか? と聞かれても、俺がよくある勇者召喚をされたからだとしか答えられない。それ以外にこの問いかけに答えられる最適解が見つからない。


 ただし、たったそれだけでこの物語を終わらせてしまうはどうも説明不足な気がするので、この世界についてから順をおって俺がいかにして魔王を倒すことになってしまったのか簡単に説明しよう。


 この世界にはかつて五つの大陸があったそうだ。


 陸地が比較的多い半球を表半球、ほとんど海しかない半球を裏半球と考えると、表半球の中でも真ん中に位置する中央大陸では昔から空からやかん、見たこともない言語で書かれた本、用途不明な宙に勝手に浮く円盤などなど様々なものが降ってくる不思議な現象があったらしい。──最後の円盤はどう考えても異世界に合わない気がするのだが、気のせいだろうか?


 これまた不思議なことに中央大陸に住む人々はその現象をまるで神さまからのお恵み、あるいは恵みの雨のようなものとしてとらえていたらしい。


 空から物が降ってくる時点でおかしいことこの上ない出来事だが、そこは例のご都合主義ってことで解釈していただきたい。


 ただ、さすがの異世界人でもたまに空から剣山が降ってくるということもあったため、その現象には注意を払っていた。


 そこで彼らは中央大陸のあちこちにある謎の光る石板に目をつけたと言われている。その石板が光った七日後にその石板付近に何らかのものが降ってくるということがあったのだ。人々はその現象を天啓と呼び、天啓によってそこに降ってくるものから身を守ってきた。


 ──そもそも、どうしてそんな石板が中央大陸のあちこちにあるのか不思議に思った方がいいのだが、彼らは不思議に思わなかったらしい。まぁ、これも例のご都合主義というやつなのだろう。そう考えないと、能天気な彼らのことが理解できない。


 そして、俺が魔王を倒す旅に出る十五年前。


 中央大陸にある石板すべてが同じ時間に光り始めたという謎の現象が観測された。


 中央大陸に住むあるものはいつもある天気のようだと思って家におり、あるものはあまりの偶然から感じる恐怖によって中央大陸から逃げ出したという。


 そして、すべての石板が光って七日が経った。


 中央大陸に一つの大陸が転移してきた。──いや、中央大陸を文明ごと押しつぶしたのだ。


 ほとんどの人は中央大陸に降ってきた謎の大陸が恐ろしくて近寄らなかったが、周りの大陸に住んでいたどうしようもない一部のバカ共はお宝目当てにその大陸へと旅に出た。これまで転移してきた様々なお宝を手に入れて大儲けしてきたからだ。


 しかし、その大陸から帰ってきた者は誰一人いなかった。たまに誰もいないボロボロになった船が浜辺に漂着するだけだった。


 その一年後、その大陸から化け物が侵攻してきた。


 彼らは魔王のしもべと名乗り、中央大陸に近い国々を瞬く間に蹂躙していった。──いや、そもそも異世界からの侵略者と言葉が通じ合っていること自体がおかしいんだけど、これも世に言うご都合主義のせいだと思えばいい。そんなことまで気にしていたらこの先、生きていけない。


 とにかく、人々は化け物たちに恐怖し、我先にと中央大陸から離れた土地へと避難していった。


 それから数か月後、化け物に攻められてジリ貧になっていたある王国で代々口伝されてきた勇者召喚が行われた。


 その王国では勇者召喚とは国難を回避する最後の緊急手段として代々受け継がれてきたという。その言い伝えによると、呼び出した勇者を五年間、みっちり修行させることによって史上最強の戦士にすることができるらしい。 


 勇者がすごいのか、それとも勇者を稽古した騎士がすごいのかは知らないが、その勇者はたゆまぬ努力もあってか、修行の末、見事に化け物たちを退け、王国の失地を回復した。


 その後、勇者召喚を行った王国は各国の求めに応じ、勇者召喚の情報を売り払った。──そこは無償提供でもいいんじゃないの? って言いたいところだけど、その王国は情報を高値で売ったらしい。


 ちなみに、彼らは転売対策として召喚に欠かせない魔法陣を複製できないようにしていたらしい。まったく、商人でもないのに、商魂逞しい。


 その王国は勇者召喚の情報を売ることで得られた利益を元手に一気に強国になったらしいが、この物語では関係ないのでこれ以上その王国について語るのはやめておく。


 とにかく、その王国から情報を買った様々な国々がこぞって勇者召喚を行った。


 俺もその時期に召喚された勇者の一人だ。──と言っても、俺はまったくこれまで勇者らしいことはしたことが無い。


 なぜなら、俺が勇者召喚された王国はその日に終わってしまったからだ。


 簡単に言えば、俺が勇者召喚されたその日にクーデタが起こったっというわけだ。俺はチュートリアルの時点でとてつもなく世間知らずで手遅れなバカ王女と能天気で個性的な騎士、侍従たち合わせてたった八名で放浪生活をする羽目になったのだ。


 この八人が強かったら良いのだが、強かったのはたった一人だけ。それも御年八十六歳のヨボヨボのエロじじい。他はある程度戦闘能力はあったが、それ以上に強い敵がたくさんいたため、俺が強くなるまでの間ほとんどがそのじじい頼みだった。


 ──まったく、今どき、異世界転移で、しかも、勇者召喚なんて流行らないし、勇者召喚されて早々都落ちに巻き込まれるとかどんなクソゲーだよ! その一行が全員強かったならカッコいい英雄譚になっていたのに、戦力になるのはじじい一人だけ。今すぐクーリングオフを希望する! って天に向かって叫んだとしても何も事態は変わらなかった。


 当然だ。空に向かって叫んだって何にも変わらない。叫んだ途端、俺は赤面した。


 自分でも恥ずかしいことしてしまったと思っているのに、俺が赤面しているのを見た能天気なバカ共は──頭が壊れたのか? と真面目に心配してくるだけだった。


 普通は──頭が痛いのか? って聞くだろ!


 はぁ……。まったく、俺はついていない。


 何がともあれ、その道中で俺は様々な敵と出会った。


 俺たちを温かく迎え入れたくせに騙した伯爵をはじめ、魔物と手を組んだ盗賊団や謎の秘密結社などとの闘い。そして、その旅路の中でかけがえのない仲間を得て、クーデタを起こした宰相から王国をなんとか取り戻した。


 問題は復興を含めてそれが七年もかかったっていうことだ。


 俺がなぜそのことに怒っているかって? 今頃、救国の英雄として持て囃されているはずなのに、どうして怒っているのか、だと? 


 冗談じゃない! 


 俺なんてまったく人気ねぇよ! 


 むしろ、その道中に同行していたナルシストのイケメン騎士の方が人気があるよ! 


 俺の方が働いていたのに、顔だけの奴が人気を得るなんてどうかしていると思うよ! 


 あいつは鎧にジャラジャラした飾りをつけているくせに重い装備に耐え切れるほどの筋力がないんだ! 


 だから、魔物と戦うときだって、肉壁以外にはまったく使い道がなかった。──まぁ、内政の方では力を発揮したが、正直王国を奪還する際には使えない力だった。なのに、あいつが一番人気なのはいったいどういうことなんだ!


 ──だが、あのナルシストのことなどもうどうでもいい。あいつに対する報復は既に済ませてある。無論、あのバカ姫様に対しても同じだ。ただし、ここでは彼らの名誉を守るため、その報復に関する詳しい情報については語らないことにする。


 それよりも俺をもっと腹立たせたことがある!


 それは、俺が呼び出されてから七年経った今でも、未だに勇者たちは侵略する魔王を倒せていねぇんだよ!


 七年あったら、何ができたと思う? 


 せめて、四天王とか、魔王直属の家臣とか、幹部クラスを誰か一人は倒せただろ!


 なのに、奴らはその間、勇者召喚されたやつらはハーレム作ってのんきにキャハハウフフな毎日送ったり、お偉い様に手厚く持て囃される毎日を送っていやがったんだ。


 勿論、あいつらもただでその生活を手に入れたわけじゃない。ちゃんと修行して命懸けの戦いを繰り広げたはずだ。


 だが、あいつらは中央大陸に攻め入ってある程度戦果が手に入ったら、それを召喚された国に納付したら、あとはちやほやされる毎日を送っていやがったんだ!


 あいつらはたった一回しか魔王の軍勢、それも大陸の一番端っこの方を守っている雑魚キャラと戦っていないんだよ! 


 お前らは何しに異世界に来たんだよ! ──いや、異世界に拉致されたんだよな。そりゃ、お気の毒様だが、今のあいつらの姿を見ると、同情の余地はない。


 あいつらは自分たちのことしかまったく考えていねぇからだ!


 国が無くなって路頭に迷っているかわいそうなやつらがたくさんいるっていうのに、あいつらはそんなことお構いなしに毎日豪華絢爛なパーティ、パーティ。


 その一方、俺は失われた王国を取り戻すべくこれまたどうしようもない阿呆の王女様御一行と泥水を啜るような逃避行に次ぐ逃避行。


 そして、なんとか圧倒的戦力差を覆して王国を宰相からなんとかして奪還して、復興させていたっていうのに……。バカ姫様といい、ニート勇者共といい、あいつらはいったい何をしていたんだ! このクソ野郎共が!


 まぁ、散々ぶちのめしてやったからあいつらにはもう興味はないけど、魔王がまだ倒されていないということが、俺の気持ちを高ぶらせてくれる。──っていうか本当のところはさっさと倒されて、俺は優雅に信頼できる仲間と自給自足の生活が送りたかったんだけど……。


 ──コホン。とにかく魔王が生きているからこそ俺が生きるモチベーションが保たれているんだ。だから、別にいいよ。


 なぜなら、七年間異世界を生きてきて、異世界からどうしても元の世界に帰れないって知ってしまったからだ。だから、せめて俺が悲劇に巻き込まれた原因となった魔王どもをぶちのめしてやりたくなったんだよ。


 これからその原因になった魔王たちのその舐めきった面を殴れることが楽しみだ。


 さーて、俺がこれまで過ごしてきた七年間の恨みをどう返してくれようか。楽しみで楽しみでしょうがないよ。


 これは俺が勇者召喚されたら、その国が滅んでいて、その王国を俺が復興させてからようやく始まった物語だ。


 そう! 俺の勇者としての輝かしい日々は今日、ようやく始まるんだ!


まぁ、長編にするとしたら、この前の七年間を描くのがメインになるんですけどね。ただただ、その七年間がおもしろすぎて、魔王退治がしょうもなくなってしまうんですよ。


だから、彼には悪いのですが、彼の思う輝かしい物語は始まりません。誰にも知られずにひっそりとその物語は終わっていきます。


それでもこの話を読みたい方がいたら、評価お願いします。


あと四作ほどありますが、付き合っていただけると幸いです。

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