Cafe Shelly 探偵物語
オレは探偵、兵藤槇。なんてカッコつけてみてはいるが。探偵という商売は見た目ほどかっこいいモノではない。テレビや小説に出てくる探偵は難事件を次々と解決したり、派手なアクションシーンがあったりするが。この商売を始めてそんな場面には一度も対面したことがない。
探偵家業のほとんどは、浮気調査や信用調査。対象となる人物を目立たず、地味に張り込んで何らかの証拠をつかんだりする。結構根性のいる仕事だ。しかもオレがいる探偵事務所は会社組織となっている。所長は元大手の探偵事務所に所属していた人で、地元に帰ってきてこの事務所を開いたらしい。そのときに仲間と三人でスタートさせたのだが、今ではオレを含めて十人ほどの探偵がいる。オレはその中でも下っ端。警備会社に勤めていたのだが、給料が安くて夜中までやる仕事でほとほと疲れていて。そんなときに元上司から声をかけられたのだ。つまり、元上司もこの探偵事務所にいるってわけ。今ではこいつの使いっ走りとしていろんなことをさせられている。つまり何が言いたいのかというと、探偵なんて憧れてやる仕事じゃないってこと。どこぞの零細企業と実情は変わりない。でも他に仕事がないからなぁ。
「兵藤、仕事だ」
世の中不景気というけれど、なぜかこの家業仕事にはあふれない。それだけ離婚の証拠集めに必死なご婦人方がいるということか。
仕事を持ってきたのはオレの上司になる日高さん。この仕事にやたらと誇りを持っていて、自分にも厳しい。特に精神論をやたらとたたき込まれる。まぁオレにしてみればそんな精神論よりも、尾行のテクニックの方が何倍も役にたつんだけど。
「はいはーい」
「返事は一回!」
いつも繰り返されるこのやりとり。もう飽き飽きだ。
「で、今回のターゲットは?」
「うむ、この男だ」
日高さんから差し出された写真に写っているのは、中年の男。やっぱりまた浮気の調査かな。
「この男の三日間の素行調査だ」
「ってことは、やっぱいつものですか?」
いつもの、というのは浮気調査のこと。だが日高さんの答はちょっと予想をはずれていた。
「とにかく三日間、この男に張り付いておけ。いいな。それとこの調査だが、今回はおまえ一人にやってもらう」
「えっ、一人っすか?」
実は探偵の尾行というのは、一人でやることはほとんどない。普通はチームを組んで行う。これは相手に尾行を悟られないためだ。だから今回の調査にはちょっととまどいを感じた。
「なんだ、一人じゃ心細いのか? それじゃぁ三上にやらせるか」
三上というのは女探偵。うちの事務所は三人組で行動することにしている。オレは上司の日高さんと、そして女探偵の三上でチームを組んでいる。三上はオレよりも後にこの事務所に来た。が、歳はオレよりも上。つまり年上の後輩ってやつになる。正直扱いにくい女だ。その三上に自分の仕事をとられるのもしゃくな話。
「わかりました、やりますよ。で、この男の素性は?」
ちっ、また日高さんにのせられたか。まぁいい、ここで自分の評価を落とすわけにもいかないからな。
「今回のターゲットは喫茶店のマスターだ。喫茶店はここ、カフェ・シェリー。この喫茶店は基本的にほとんど開店しているが、年に三回ほど三日間の連続した休みを取ることにしている。今回はその休みの間の行動を調査してもらいたい」
オレはあらためて男の写真を眺めた。人の良さそうなやつだ。しかし間の抜けたやつではなさそう。オレはさらに調査依頼書に目を通す。
「へぇ、元高校教師か。そして趣味のコーヒーを活かして喫茶店を開店。奥さんと二人でやってんのか」
「こちらがその奥さんだ」
日高さんはもう一枚の写真をオレに見せた。
「ひゅ~っ、なかなかかわいいじゃないですか。って、奥さんえらく若くないですか?」
「あぁ、ダンナとは二十歳以上の差があるらしい」
日高さんは調査依頼書に目を通しながらそう言った。
「こんな若くてべっぴんな奥さんがいるのに、このダンナは浮気ですか? なんて男だ」
「ともかく、この男の三日間の行動をしっかりと張り込んでこい。わかったな」
「はいはい。ところでこの件の依頼主って誰なんですか? やっぱこの奥さん?」
「いいから行ってこい。住所はそこに書いてあるからわかるな。調査は明日からスタートだが、今日は客として一度喫茶店に行ってこい。わかったな」
「はいはい」
日高さんはオレに命令するときには必ず最後に「わかったな」とつけるのがクセだ。そんなしつこく言わなくてもわかってるっていうのに。
しかし誰が依頼主なんだろう。そして何のための調査なんだ? 日高さんはめずらしくそのことをオレには告げていない。普通なら教えてくれるはずだが。まぁいい。どうせオレはしがない雇われ探偵。とにかく上が命令したことをこなすだけ。これがサラリーマン探偵の宿命だ。たまには金田一耕助やコナンくんみたいに、殺人事件でも解決してみたいもんだ。
とりあえずオレはこの男がマスターをやっている喫茶店カフェ・シェリーへと足を運んでみた。調査対象者の前に顔をさらしても大丈夫なのかって? まぁ一過性の客の顔なんて覚えていないのが普通だ。それにオレなりの変装をして行くことにしている。普段のオレはわりとラフな格好。が、今回はスーツに身を包み、黒縁のメガネをかけ、いかにもビジネスマンというスタイル。さらに髪も普段は茶髪なのだが、あえて黒に染めた。これで知っているヤツでもオレだとはわからない。あくまでも外出の途中で休憩に寄った、という格好をきめてみた。
「ここか、よし」
場所を確認してカフェ・シェリーへと入る。めずらしくビルの二階にある喫茶店。扉を開けると、心地よいカウベルの音。それとともに女性の「いらっしゃいませ」の声。おっ、写真で見たマスターの奥さんだ。実物の方が何倍もかわいいな。そしてカウンターの奥から低く渋い声で「いらっしゃいませ」の声。今回のターゲット、マスターだ。
「こちらへどうぞ」
通されたのは窓際の奥のテーブル席。ここは半円型のテーブルがあり、四つの席がある。一つ空けて女性が座って本を読んでいる。いい香りがする。アロマってヤツか。
「コーヒー一つ」
オレは普通に喫茶店で注文するようにウェイトレスをやっている奥さんへ伝えた。すると奥さん、オレにこんなことを。
「こちらのシェリー・ブレンドがお薦めですが、いかがでしょうか?」
通常喫茶店でコーヒーと頼めば、かしこまりましたで終わるのに。確かにメニューを見ると、通常のホットコーヒーというものはない。
「じゃぁそれで」
オレはカバンから普段読みもしない経済新聞を取り出し、読むフリを始めた。この喫茶店、店内は狭い。この時間は隣で本を読んでいる女性以外にカウンターに常連らしき男が二人、マスターと会話をしているだけ。少し聴き耳を立ててみる。
「明日から温泉ですか。マスター、うらやましいなぁ」
「でも、こんなオフシーズンにしか休みをとりませんからね」
「だからいいんですよ。お客がまばらだからこそ、ゆっくりと過ごせるじゃないですか」
なるほど、マスターは明日から温泉なのか。
「マイさんも一緒なんでしょ?」
「いやぁ、今回はマイがセラピーの集中講座を受講するので私一人なんですよ」
やはり浮気に行くのか。オレの勘がそうつぶやいた。
「めずらしいですね。いつも一緒なのに」
だからこそ男には息抜きも必要なんだよ。このマスター、一見するとまじめで温厚そうだ。こういう男こそ、裏では怪しいことをやりたがるもの。
「はい、シェリー・ブレンドです」
奥さんがオレのコーヒーを運んできた。こんなきれいでかわいい奥さんを放っておくなんて、許せない男だな。
オレは運ばれてきたコーヒーを口に付ける。すると一瞬、オレの頭の中にある映像が浮かんだ。昔見た「探偵物語」というドラマの一シーン。松田優作がやっていたやつだ。おどけた中にもハードボイルドさがある。あんな探偵にあこがれてたなぁ。そんなことをふと思い出した。おっと、そんな思い出にふけっている場合じゃない。
しかしオレがコーヒーに口を付けるたびに、頭の中ではあの探偵物語のメインテーマがフラッシュバックしてくる。そしてそのたびに体の奥がうずうずする。今度の仕事、帽子でもかぶってみるかな。
「ごちそうさま」
とりあえず頭の中では明日からのプランを考えてみた。マスターはどうやら車で移動するらしい。行き先は隣の県の有名な温泉地。車での尾行は一人ではばれやすい。そこでオレはある行動を起こすことにした。
「タク、おまえ明日時間取れるか?」
オレは就職浪人をしている甥っ子のタクへ連絡をとった。タクはオレにあこがれている。といってもオレ自身にではない。探偵という仕事にあこがれている、と言った方がいい。誰もが知っている一流大学を卒業したにもかかわらず、公務員試験に通ったにもかかわらず、タクはコンビニでアルバイトをしている。どうしても探偵になりたいらしい。だからというわけではないが、オレは時々タクを助手として使ってる。そのときにオレが学んだ探偵のイロハを仕込んでいる。おかげでタクの母親、オレの一番上の姉からはいつも文句を言われているが。
「はいっ、喜んでいきます!」
タクは二つ返事でOK。そして早速打ち合わせ。駅前のハンバーガー屋で晩飯を食べながら明日のことを話す。作戦はこうだ。タクの家はわりと金持ち。就職浪人とはいえあいつは自分の車を持っている。だから、まずはタクにあのマスターを尾行させる。オレはタクの車の後を自分の車で追う。こうすることで、仮にマスターがタクに尾行されていると感づいてもオレのことは気づかない。また途中でタクを尾行からはずすことで、疑われることなくオレがマスターを尾行できる。
「てなことだ、わかったな」
「はい、任せておいて下さい。でも…」
「でも、なんだよ?」
「はい、あのマスターが浮気なんてとても思えないんですよねぇ」
「タク、おまえあの喫茶店のマスターのこと知っているのか?」
「えぇ、何度か話したこともありますよ。とても気さくで、奥さん思いで。奥さんは高校教師時代の教え子だって」
「なんだ、教え子に手を出して前の奥さんと離婚したとかじゃねぇのかよ」
「いえ、違いますよ。マスターは再婚だそうですけど、そのときは独り身だったみたいで。それにあのマスターのおかげで救われた人、多いんですよ」
「救われただと? どういうことだよ」
「あの喫茶店のコーヒー、シェリー・ブレンドを飲むと、今自分が欲しがっているものの味がするんですよ。それをきっかけに自分自身に気づいて、そこから人生が変わったっていう人がたくさんいるんです。実はボクが今こうやって就職浪人しながらも探偵を目指しているのは、あのシェリー・ブレンドとマスターがきっかけだったんです」
欲しい物の味がする、だと。そんなバカなと一瞬思った。が、あのときにオレが見た松田優作の探偵物語の映像。あれはまさしくオレがあこがれている世界だ。オレだってタクと同じようにあの世界に魅了されてここにいる。しかし現実とはかけ離れている。
「ともかくだ、マスターの人柄とかは抜きに考えろよ。オレたちはあくまでも探偵だ。依頼された仕事をこなすこと。そのためには私情を抜きにしねぇと」
「わかってますって」
「じゃぁ明日の朝五時に行動開始だ」
タクと別れてから、頭の中は明日から三日間の行動計画でいっぱいになった。といっても、その中でオレは突然起きるハプニングに冷静に、ハードボイルドに対応している架空のドラマが繰り広げられているだけだが。実際にはこんなことは起こりえない。それがわかっていながらもその世界で楽しむ。ちっ、オレもバカなやつだな。
気が付けば時計は朝の四時を指していた。おっと、行かなきゃ。身支度をして車に乗り込み、あのマスターが住むマンション近くの路上でタクと落ち合う。
「ここからスタートしてしまうとばれるからな。大通り沿いにコンビニがある。お前はそこで待機してろ」
「了解!」
そんな会話をしていたら、マンションから人影が。あのマスターだ。こんな朝早くから行動開始かよ。Tシャツに短パン、肩からはタオルをぶらさげている。どうやらジョギングのようだ。しまった。ジョギングの尾行ってのが一番困る。こんな普段着で後を追いかけるわけにもいかない。
「槇さん、これっ」
たじろいでいるオレにタクが出したモノは折りたたみ自転車だった。
「車のトランクにいつも積んでいるんですよ。これだったら自然な形で追いかけられるでしょ」
ナイスアイデアだ。マスターとの距離は十分ある。おそらく気づかれることはない。
「タク、オレがマスターを追いかける。おそらくマスターが走るのはこの堤防沿いだろう。お前は目立たないところで待機して、オレからの連絡を待て」
「了解!」
こうしてマスターの尾行がスタートした。マスターは一心不乱に堤防を走っている。ときどきすれ違うランナーや歩いている人たちとあいさつを交わしていく。特に誰かと会うようなことはなさそうだ。堤防沿いの公園についたとき、マスターはベンチに腰掛けている一人の女性へと近づいていった。うぅむ、ひょっとしてあれが…。
オレは公園を通りすぎて二人の背後へと回る。そして写真撮影。マスターと女性の会話は五分くらいだろうか。残念ながら内容まではわからない。マスターが軽く手を挙げて来た道を帰っていく。同時に女性も反対方向へ。
「タク、マスターがそちらに向かった。オレは別の女性を追う」
タクにそう連絡。女性は堤防下に停めた車へと消えた。やはり女性か。残念ながら自転車では車には追いつけない。が、ナンバーはしっかりと控えておいた。これでどこの誰かは調べが付く。とりあえずタクの待つ場所へと戻りこれからの行動を再確認。タクの話では、オレから連絡を受けてすぐにマスターは戻ってきたそうだ。それから二時間ほどオレたちはマンションの前で張り込み。するとマスターの奥さんが先に出てきた。その後十分ほど遅れてマスターがマンションを出る。
「じゃぁ手はず通りに頼むぞ」
マスターの車の後を追うタク。その後を追うオレ。行き先はすでにわかっている。道中は特に何事もなく過ぎていく。途中マスターがコンビニに寄ったところでタクをスルーさせた。オレと交代だ。どうやら気づかれることもなく目的の温泉地へと到着。なるほど、この旅館がそうか。何がそうなのかはご想像の通り。おそらく遅れて今朝会った女性がここに到着、ということになるのだろう。マスターがチェックインしたのを見計らって、電話で空き部屋があるかを確認させた。幸いなことにオフシーズンのため空き部屋は確保できた。これで張り込みも楽になるな。しばらく旅館の入り口が見える駐車場で張り込み。もう昼過ぎか。腹減ったな。
「槇さん、どうぞ」
買い出しに行かせたタクが買ってきたのは、クリームパンと三角パックの牛乳。今時三角パックはめずらしいな。
「この先に牧場があって、そこの名物の牛乳らしいっすよ」
タクは自慢げに話しているが、オレは牛乳はあまり好きじゃない。それになんでクリームパンなんだ。温泉の観光地なんだから、もっと気の利いたものを買ってくればいいのに。しかしここで文句を言ってもしょうがない。炎天下の車の中、二時間ほど張り込んでようやく動きが見えた。マスターが出かけるようだ。
「よし、追うぞ」
行きと同じ要領で、タクが先導してマスターを追う。マスターはしばらく車を走らせると、山奥へと続く分かれ道の方へと向かった。このまま追いかけると尾行がばれてしまう。一旦曲がり角を過ぎたところで車を停め、この先に何があるかを地図で確かめた。
「ペンション、か」
「あ、このペンションはコーヒーで有名なところですね。自家焙煎でやっているところですよ。確かマスターの師匠にあたる人がやっているんじゃなかったかな。前にそんなことを聞いたことがあります」
タクの情報が正しければ、マスターは自分の師匠に会いに来ただけということになるか。しかしペンションに乗り込むと尾行がばれてしまう。どうする?
「槇さん、オレが観光客を装って行ってきますよ」
「いや、やはりそれは危険だ。とりあえず近くまでは行こう。そこで誰かと会うようなことがあるのか。そこだけを確認すればいいだろう。ここからペンションまではどのくらいの距離があるんだ?」
「えっと…地図では五百メートルくらいですね」
「ちっ、そのくらいだったら歩いていくしかないか。車に目をつけられるとやばいからな。タクはここで誰か他に来ないか見張ってろ。オレが行ってくる」
そこからオレは歩いてペンションへと向かった。言い出したのはオレだが、どうしてこんな炎天下に山道を歩かなきゃいけないんだ。これがオレの目指した探偵像なのか。イヤ違う。オレはもっとクールでスマートな探偵を目指していたはずだ。どうして理想と現実ってのはこうも違うんだ。世の中思い通りにはいかないものだ。そんなことを頭で考えながらようやくペンションに到着。身を潜めて観察をする。
車は二台。一台はマスター、もう一台はこのペンションのオーナーのものだろう。大きなテラスの窓越しにマスターともう一人の姿が見える。とりあえず写真は撮っておくか。
それからまた二時間ほどが過ぎた。結局このペンションに訪れる者はなし。マスターは自分の車に乗り込んで、その場を後にした。タクに連絡を取らないと。そう思って携帯を見ると圏外。ちっ、しまった。タクが気を利かせてマスターを尾行してくれればいいのだが。オレは来た道を歩いて帰ろうとした。が、どうせならこのペンションのオーナーをあたってみるか。意を決してオレはペンションへと足を踏み入れた。
「すいませーん」
「はいはい、珍しいな、こんな時間にお客さんとは」
「あ、すいません、つかぬ事をうかがいますが。 先ほど男性の方がこちらに来られたと思うのですが」
「おぉ、来てたよ。カフェ・シェリーのマスターの知り合いかい?」
「えぇ、実はマスターがこちらに来ているとうかがって急いで来てみたんですけど」
「おや、来るときにマスターの車とすれ違わなかったかい? 今帰ったばかりだよ」
「えぇっ、それは残念だ」
ちょっと学芸会っぽい演技だったかな。しかし相手は特に違和感を持っていないようだ。
「マスターに何か用だったのかい?」
「あ、大したことじゃないんですが。ところでマスターはなぜこちらに?」
いきなり本質を突く質問を投げかけてみた。
「あぁ、マスターはうちのコーヒー豆を仕入れて店で出しているからな。年に何度かこっちに来てコーヒー談義をするんだよ。どうだい、あんたもウチのコーヒーを飲んでいくか? といっても有料だけどな。わはっはっ」
豪快に笑う人だ。まぁせっかくだからコーヒーくらい飲んでいくか。で、結局タクと合流したのはそれから一時間半後だった。
「わるいわるい、あのペンションのオーナー、よくしゃべる人でね」
タクはオレの期待通り、マスターをしっかりと尾行してくれていた。あの後マスターはまっすぐ宿に帰り、温泉につかっていたとのこと。
「じゃぁオレたちの分はチェックインしたのか?」
「はい、じゃないと中まではつけられないですから」
タクはさすがインテリだけあって頭がよく回るヤツだ。
「あとは誰かマスターに会いに来る人がいるかどうか、だな。タク、お前だったらどうやって見張る?」
「そうですねぇ、この部屋からは直接マスターの部屋は見ることができませんしね。かといってロビーにいつまでも長居はできませんし。こういう場合はどうすればいいんですか?」
急遽探偵教室の開催。そこでオレはカバンからあるものを取り出した。
「こいつを使うんだよ」
「槇さん、それってもしかして…」
「そう、盗聴器だ。こいつは小型だけどかなり高性能でね。窓の外に設置しておけば部屋の中の会話は十分聞こえる」
「ってことは、これをマスターの部屋の窓に?」
「その通り。ってことでタク、行ってこい」
「えぇっ、ボクがっすか?」
タクはしぶしぶ出かけていった。この旅館は平屋づくりだから危険なことはない。タクが盗聴器を設置している間、オレはたばこを一服。それにしてもマスターは何をしにこの温泉に来ているのだ。単なる静養だけか? そもそもなぜオレはあのマスターを追わなければいけないのだ。この調査の依頼主とは一体誰なんだ。あのマスターとは一体何者なのだ? 頭の中がグルグルしてきた。
「槇さん、設置してきましたよ。幸いマスターは二度目の温泉に入っていたところみたいで」
「じゃぁオレたちは部屋で待機をするか」
移動して早速盗聴器の受信機をONにする。
「こいつはデジタル盗聴器でね、アナログの無線機とかで受信しても変な音にしか聞こえないんだ。この専用の受信機じゃないと聞こえないんだよ」
「なるほどぉ。でも盗聴ってやばいんじゃないですか? 違法な行為ですよね」
「ばぁか、ビクビクすんじゃねぇよ」
そう言っているうちにマスターの声が聞こえてきた。どうやら誰かと電話をしているようだ。かすかな声に聴き耳を立ててみる。
「…うん、じゃぁ明日の昼頃に。一緒に昼ご飯を食べに行こう。夜も大丈夫なんだろう? じゃぁ午後はゆっくりとできるな。楽しみに待ってる」
「おい、聞いたか。やっぱり誰かとここで会う約束をしているんだ」
オレの勘は正しかったな。誰か、というのは言わなくてもわかるだろう。
「えぇっ、あのマスターがぁ。なんか幻滅ですよぉ」
「ばぁか、人間ってのはこんなふうに裏表があるものなんだよ。まぁこれでこちらも仕事がやりやすくなったな。明日の昼間では目立った動きはしないだろう。とりあえず交代でマスターの動きを見張ることにして。せっかくだからオレは風呂に入ってくるわ。タク、よろしく頼むぞ」
オレはしっかりと浴衣に着替えて意気揚々と温泉へ向かった。たまには命の洗濯もしなきゃな。しかしマスターの相手って誰なんだろう。やはり今朝ジョギングの時に会っていたあの女性か? そんなことを頭で考えていたら、ガラガラと温泉の引き戸を開けて入ってきた人物が。湯煙の向こうにぼやっと見えたのは、なんとあのマスターであった。
おい、タクの情報じゃマスターはさっき風呂に入ったんじゃなかったのかよ。なるべくマスターと視線を合わさないようにゆっくりと洗い場へ移動。するとマスターの方から
「こんにちは。ご旅行ですか?」
と声をかけられてしまった。ここで答えないのも不自然だ。
「えぇ」
とあいづちだけ打って、さっさとこの場から立ち去ろうとした。が、マスターはさらにこんな言葉を。
「この季節に珍しいですね。どちらからおいでになったのですか?」
ここは適当に答えておこう。
「お、大阪の方からです」
「結構遠くからおいでなんですね。大阪からのわりには関西弁って感じじゃないですね」
しまった、大阪はまずかったかな。
「地元がこっちなもので」
「なるほどぉ」
うぅむ、なんだかこっちが探られているような気がする。そ、そうだ。それを逆手にとればいいんだ。
「あなたはどちらからですか?」
今度は質問返し。
「私は隣の県からなんです。年に何度かこうやって静養に来るんですよ」
「そうですか。今回はお一人で?」
「えぇ、来たのは一人なんですけど。こっちで知り合いと合流する予定で」
知り合いと合流、ときたか。ちょいとカマをかけてみるか。
「奥さんはご一緒じゃないんですか?」
「いやぁ、独り身ですから」
マスター、明らかにウソをついている。やはり後ろめたいものがあるのだろうか。
「では私はお先に」
そう言ってオレは風呂を出てすぐに部屋へ戻った。
「バカ野郎、温泉でマスターと顔を合わせちまったじゃねぇかっ!」
部屋に戻るなりオレはすぐにタクを怒鳴りつけた。
「そ、そんなぁ。おかしいなぁ、確かにさっきマスターが温泉に行ったのを確認したんだけど…マスター、そんなに温泉好きなんですかね?」
「まぁいい。でも大きな収穫だ。マスター、オレに独身だってウソをつきやがった。こいつは明日後ろめたいことをすることの現れだ。明日は証拠をバッチリつかむぞ」
こうして一日目が過ぎた。二日目の午前中は特に何事もなく過ぎていく。マスターはずっと部屋の中。テレビの音も聞こえない。一体何をして過ごしているのだろうか? タクが言うには、おそらく読書だろうということ。マスターの読書好きはかなり有名らしい。そうしていると昼前になってマスターの携帯が鳴った。
「着いたか。じゃぁロビーに行くから」
盗聴器からマスターの声がそう聞こえた。
「タク、先回りだ。ロビーはお前に任せる。オレはその間にマスターの部屋へ忍び込んでみる」
「そんなことして大丈夫ですか?」
「いいから、早く行けっ!」
タクは急いでロビーへ。オレはマスターの部屋の近くで待機。案の定、マスターはロビーに人を迎えに行くだけなので鍵を閉めずに出て行った。周りに人がいないのを見計らって、急いで部屋へ忍び込む。テーブルの上には本が数冊散らばっている。どうやらタクの言うとおり、マスターは読書にふけっていたようだ。オレは昨日仕掛けた窓の外の盗聴器を部屋の中に仕掛け直す。するとタクから電話。
「マスターがそっちに戻ります。女性と一緒です」
やっぱりそうか。オレは急いで部屋を出た。そして角で待機。決定的な写真を撮るためだ。来たっ。超小型のビデオカメラだけをのぞかせて、マスターが女性と部屋に入る瞬間をとらえた。もうこれで言い逃れはできないぞ。あとは盗聴器でお楽しみの場面でも聴くとするか。部屋に戻るとタクもすでに戻ってきていた。
「さぁ、あとはお決まりのコースだな。男っていうのはこんなもんだよ」
オレのセリフにタクはちょっと不満そう。
「でも…あのマスターがこんなことするなんて、まだ信じられないです」
「ばぁか。探偵ってのは人の知らない事実を知ってしまう悲しい職業なんだよ」
それから盗聴器の声に耳を澄ませる。とりあえず昼食に出るようだ。このあたりは温泉街でラブホテルはない。外出したまま別の場所で、ということはまず考えられない。おそらく部屋に帰ってからのお楽しみといったところなのだろう。オレはマスターに顔を知られてしまったので、昼食の尾行はタクにまかせた。その間、今回の調査について再度考えてみる。
狙いは一体何なのだ? 浮気調査ならばいつもは日高さんからこと細かく指示が飛ぶ。しかし今回は三日間マスターに張り付いておけ、という命令だけ。依頼人の素性も明かされていない。何か裏がありそうだ。ひょっとしたらオレは大きな間違いを犯しているのではないだろうか。マスターの女性関係を暴く調査ではなく、もっと大きな犯罪が隠れている、とか。本当のことをオレに伝えると、オレが勝手に変な動きをとるかもしれない。だから日高さんはそれをオレに伝えていない。何かの証拠をつかむこと。それが目的なのだろうか。ひょっとしたら今マスターが会っているあの女性がカギなのか? そういえば女性の素性がまだわからない。そうだ、さっきとったビデオ、これを見てみよう。パソコンを開きビデオを再生。
「あっ、この女!」
パソコンの動画に映っていたのは、昨日の朝マスターがジョギングで会っていた女性だ。やはりそうだったか。あのとき、今日の打ち合わせをしていたに違いない。単なる逢い引きの打ち合わせだったのか、それとももっと奥に何かが潜んでいるのか。それはこの後マスター達が部屋に帰ってきたときにわかるはずだ。そうしているとタクから連絡が。食事が終わって移動するらしい。タクに続けて尾行を命じ、オレはマスターの帰りを待った。マスター達はそのまま部屋に戻ってきて、なんともない会話を続けている。
「槇さん、どうですか?」
「うぅむ、今のところ大した話しはしていない。でもなんだか難しい話しをしているな。うつ病がどうだとか、心の世界がどうだとか、オレにはさっぱりだ」
「あ、マスターはカウンセラーの資格も持っていますからね。ひょっとしたら女性はマスターに心の相談をしているんじゃないですか?」
タクにそう言われればそのような気がする。オレには今まで縁のなかった世界だけに、話の内容がちんぷんかんぷんなのだ。その日はずっと盗聴を続けたが、似たような話ばかり。ひょっとしてお楽しみは夜なのか? そう思っていたが、予想は大きくはずれた。
その日の夜、マスターと女性は一緒の部屋で食事はしたが、その後は何も起こらず。一晩中交代で盗聴器に耳を傾けていたが、結局なんの変化もないまま朝を迎えた。
「お世話になりました」
この日、マスターは朝の十時にはチェックアウト。オレたちも続けてチェックアウトをしてふたたびマスターの尾行を行った。女性の存在が気になりはするが、今回の調査はあくまでもマスターが対象だ。それに女性の車のナンバーはわかっているのでそこからの身元調査は可能。マスターはどこかに寄ることもなくマンションに帰宅。その後は夜まで家を出ることはなかった。
「結局何もなしか。つまらない調査だったな。タク、お疲れ様。ほれ、バイト代だ」
オレはふところから福沢諭吉を三枚ほど取り出してタクに手渡した。タクも心得ており、しっかり領収書を発行してくれる。これで必要経費として請求はできるな。
この日の夜、自宅でワープロをたたきながら調査報告書を作成。しかし気になるのはあの女性だ。結局何者なのだろうか? マスターといいことをしにきたわけではない。かといってただの相談者にしては親密な関係だし。そんなことを考えていたら、いつの間にか眠り込んでいるオレがいた。
翌朝目が覚めたのは一本の電話だった。
「ったく、誰だよ…」
「おい、兵藤、起きてるか? 三日間の報告を聴くから、今から言う場所に十時に来い」
ったく、日高さんかよ。相変わらず一方的な命令口調なんだからよぉ。
「で、どこに行けばいいんっすか?」
オレはまだ半分眠っている頭をポリポリ掻きながらそう返事をした。
「場所は喫茶店、カフェ・シェリーだ。場所は知っているだろう。いいか、十時だぞ、わかったな」
日高さんはそう言って電話を切った。おい、ちょっと待てよ。カフェ・シェリーのマスターの行動調査報告をカフェ・シェリーでやれってのか? そりゃいくらなんでもむちゃくちゃだ。折り返し日高さんにその旨を伝えようとしたがやめた。あの人がオレの言うことを聞いてくれるわけがない。それに日高さんだって今回の調査の内容は知っているはずだ。それを知ってあの店を選んだっていうんだから、何か理由があるはずだ。とにかく報告書を最後まで書かなきゃ。あの女性の素性については調査中でいいだろう。あわててワープロをすませ、身支度をして家を出た。それにしても今回の調査は謎だらけだ。そもそも依頼主は誰なんだ? 頭の中はそのことでいっぱいだった。
そしてオレはカフェ・シェリーの前に立っていた。十時といえば喫茶店が開店する時間だ。オレは意を決してドアを開く。
カラン、コロン、カラン
心地よいカウベルの音とともに響く
「いらっしゃいませ」
の声。そのとき、オレは度肝を抜かれた。店の真ん中にある三人掛けのテーブル。そこに座っていたのはもちろん日高さん。そして横にマスターの奥さんが立っている。さらにもう一人そこに座っている女性。なんと、温泉宿でマスターと一緒にいたあの女性ではないか。
「どうぞ、こちらに」
マスターはオレを日高さんのいる席へと促す。
「ひ、日高さん、これ、どういうことですか?」
あっけにとられているオレに、日高さんは厳格な口調でこう言った。
「兵藤、まずは報告書を見せてみろ」
報告書って、マスターも例の女性も、そして奥さんもいるのに。オレはとまどいながらも報告書をバッグから取り出して日高さんに手渡した。日高さんはそれをざっと斜め読み。そして次に信じられない行動に移った。
「マスター、どうぞ」
なんと、オレの報告書をマスターに手渡したではないか。カウンター越しに報告書を受け取るマスター。そしてじっくりと目を通す。オレはその光景を呆然と見ている。
「なぁるほど、私の行動ってこんな風に見られていたんですね。あ、兵藤さんですよね。温泉ではどうも」
「あ、あなた、私が尾行していたことを知っていたんですか?」
マスターの言葉にオレはまだ混乱している。
「えぇ、でも温泉でご一緒したときにはあなたが探偵さんだとは知りませんでしたけどね。あ、紹介しておきます。こちら、私の妹です」
な、なんと。オレがマスターの女ではないかとにらんでいた女性は、マスターの妹だというではないか。でも会話の中でそんなそぶりは一度も見せなかったし。
「日高さん、これは一体どういうことですか?」
混乱しているオレに日高さんはギロリとにらみをきかせてこう言った。
「今回の調査の依頼人はマスターだ。いや、正確に言えばマスターに協力してもらったと言った方がいいだろう。兵藤、お前今回の調査は何のためにやったと思う?」
何のためって。マスターが自分自身の行動を調査するなんて。そんなことをする意味がわからない。
「ではお前はこの調査をどんな調査だと思って行動したんだ? そしてこのレポートは何を想定して書いたんだ?」
「えっ、それは…」
関係者の目の前で自分の考えを発言することにためらってしまった。
「お前は素行調査といえば、すぐに浮気調査と決めつけてかかる。そういうクセがあるだろう」
日高さんにズバリ言われて反論できなかった。
「それがお前の先入観を生むんだ。探偵たるもの、そんなことではいかん。冷静にものごとを判断するためにも、広い視点で相手を見ないと。事実、今回の調査でお前は大きなものを見失っているぞ」
「えっ、大きなもの?」
言われてもまったく心当たりがない。オレはタクと一緒にずっとマスターを見張っていたはずなのだが。考えるオレに、マスターがカウンターの下から包みを取り出して見せた。
「これは?」
オレはそれがなんなのかわからない。マスターは包みを開けた。するとコーヒーのいい香りが辺りに広がった。
「これは私が訪問したペンションのオーナーから仕入れたコーヒー豆です。兵藤さんのこの報告書にはそのことがまったく書かれていませんでしたよね」
確かにこいつは見落としていた。
「でも、まさかそんなことが行われているなんて思わなかったから…」
オレの言い訳に日高さんは鋭くこう指摘した。
「兵藤、お前の追っているターゲットが何か大きな組織犯罪に関わって、その裏取引の現場を見落としていたとしたらどうするんだ?」
日高さんの言葉に、オレは何も言えなかった。
「まぁまぁ、でも今回のことで兵藤さんも探偵としての自分の欠点に気づいたんじゃないでしょうか。気を取り直してコーヒーでもいかがですか?」
マスターは優しくそんな言葉をかけてくれた。
「兵藤、お前が本当になりたい探偵ってやつを聞かせてもらうぞ」
オレがなりたい探偵、か。まだ頭が整理できていないが、とりあえずコーヒーでも飲むか。
「はい、どうぞ」
運ばれてきたコーヒーを口に含む。するとあの映像が頭の中に浮かんできた。松田優作の探偵物語の一シーン。前回この店で味わったあの感覚だ。しかし前と違うのは、巧妙な罠にかかることなく冷静な判断をしている自分がそこにいた。
「兵藤、何が見えた?」
「えっ、見えたって?」
「だから、そのコーヒーを飲んで何が見えたのかって言っているんだ」
「そ、そうですね…」
日高さんがあまりにも迫ってくるので、オレは正直に見えたものを語った。
「そうか、ならば合格だな」
「合格って、なんなんっすか?」
「今お前が飲んだシェリー・ブレンド、こいつは自分が欲しがっているものを見せてくれる効果がある。今語ったのがお前の本当になりたい探偵像、というわけだ」
タクからは聞いていたが、これがシェリー・ブレンドの魔法ってやつか。まさかとは思っていたが、あの厳格な日高さんが言うくらいだから本当なのだろう。
「兵藤、今回はお前の探偵としての姿勢、これを試させてもらった。実はな、今回の調査はすべてお前のために仕組んだものだったんだ。マスターにはあらかじめ協力を依頼していた。妹さんを使ったのも、お前がどんな判断をするのかを見たかったのだ。結果は見事におまえの悪いところがはっきりした」
「ってことは、オレは…」
ちょっと不安になった。ひょっとしてクビになる、とか?
「バカモン。私はさっき合格と言っただろう。お前は自分で自分の悪いところ、先入観で人を見てしまうというクセが自覚できたはずだ。その欠点を直せばもっとシビアな調査をお前に任せることができる。兵藤、お前にはそれができると私は判断したんだ」
「ってことは、オレはまだこのまま探偵を続けていいんっすね」
「いえ、このままじゃいけませんよね」
マスターがにっこりと笑って私にそう言った。
「そうですね、先入観ってのを排除しなきゃいけねぇんだった。日高さん、マスター、ありがとうございます」
オレは素直に二人に礼を言った。
「よし、これであの件もまかせられるな」
「あの件ってなんなんっすか?」
日高さんの言う「あの件」というのがとても気になる。
「兵藤、おまえがやってみたかった依頼がきている。これは極秘だが…」
日高さんはオレにファイルを手渡した。そこには大きく「極秘」と書かれてある。その内容は、とある企業の取引調査。現場に行って不正取引の証拠をつかむこと。かなりハードボイルドの匂いがする。
「ようやくこういった仕事をお前に任せられそうだ」
「こういった仕事って、うちの探偵事務所ってこんな依頼もあったんっすか?」
「あぁ、今までは所長と私でやっていたんだが。所長もそろそろ現場から足を引きたいということでな」
って、所長や日高さんはオレの知らないところでこんな仕事をしていたのか。
「やります、ぜひやらせてください。よぉし、やってやるぞぉ」
オレのあこがれていた世界にようやく足を踏み入れた。そんな感じがじわじわと沸いてきた。自分の悪い点もしっかりと自覚した。
探偵兵藤槇、これからが本当のスタートだ。頭の中ではすでに「探偵物語」の音楽が何度も繰り返されている。これだ、この世界を目指していたんだよ。
さぁて、事件がオレを待っているぞ!
<探偵物語 完>