10月
街の通りにある木々が緑から紅色へと変わり、木の葉をゆする秋風は露骨に季節の変化を主張している。
特にやることもなく、なんとなく散歩したくなった俺は、商店街を彷徨っていた。
今朝、ロボットと人間に関するニュースが取り上げられた。
ロボットと人間の結婚が法的に認められるようになったのだ。
ロボットと人間の恋愛というのは少なくはないものの、あまり万人に認められるような存在ではない。
宗教の関係で反対する者もいれば、幼い子に悪影響だと主張する者もいる。
ロボット側でも"人間なんかと恋をするのは無意味で馬鹿げている"と主張しているモノもいた。とはいっても、こういった主張をするのはロボット至上主義共だけだが……。
前々から賛否両論で殺伐としていた問題にも関わらず、今更になって認められたという。少し引っかかる話だが、そんなことはどうでもよかった。
周りの目がどうあれ、俺はシーナと堂々と一緒にいられるきっかけを見つけたような気がしたからだ。
正直、シーナにどう思われているか自信がなかった。
自分と一緒にいるのは引き取られたからであり仕方なくなんじゃないかと、ふとした時に考えてしまうのだ。
しかし、仕方なく一緒にいる相手の製造日を祝うだろうか?いいや、いくらシーナでもそんな面倒な手間はかけないはずだ。と、自分を励ましてもやはりシーナの許可なしに自分の家に住まわせていることが気がかりで仕方なかった。
だから、自分の気持ちを正直に打ち明け、結婚して俺の家でずっと暮らしてはくれないかと尋ねてみるつもりだ。
そう、そうするつもりだったんだ。だが、どうやらその必要はなくなったらしい。
距離135m、12時の方向にシーナがいた。それも、見知らぬ人間の男と一緒に。
彼女は親しげな様子でその男と談笑をしている。
あんな軟らかな表情を、俺は見たことがなかった。
ああ、そうか、そうだった。俺は、自分の事で精一杯で、シーナのことを何一つ知らなかったのだ。
シーナは人間だ。俺と同じように、いいや俺以上に誰かに想いを寄せ、恋焦がれるだろう。
その相手は人間で当たり前なのだ。俺は一体どこで勘違いをして、何を期待していたのだろう?
この沸々と回路が煮えたぎる感情は嫉妬だろうか?
切ない苦痛と悲哀が電子脳を染め上げた刹那、真っ白な虚無感に変わってゆく。
俺は歩む方向を変え、来た道をまた戻ることにした。
なるべく早足で、シーナに惨めな俺の存在を見られないように。
これからどうしようか、シーナをどうするべきだろう。
どうするべきかなんてわかってはいる。だが、俺はシーナとずっと一緒にいたい。手放したくない。
しかし、それでは彼女の自由を妨げてしまう。彼女を苦しめるようなことだけはしたくない。
でも、この1年が終わるまでは……。いいや、長すぎる。せめて、あと一ヶ月だ。あと一ヶ月だけは俺の為に時間をくれ、シーナ。




