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岬の依頼と御影のピンチ

 

「なに死にきたんですか、この金なしひもお君」


「随分な挨拶だな岬」


 御影は今、事務科の個室で岬と会っていた。


 理由はフェリスとの約束だ。


「明日事務科の実験体として、放課後事務課に行くの。これは命令なの、拒否は許されないの。報酬は可哀想だから五百円あげるの」


 そして次の日放課後、事務課に来て受付に話すと、個室に案内され、そこにいたのは舞先生の派閥の人間、事務科主任虹野岬だった。


「なに、生意気にも呼び捨てにしているんですか、生まれてきたことを百億回後悔した後、すいません岬様、もう呼び捨てなどしませんと一兆回連呼した後、周れ右して一京回生まれ直せ」


 岬は意地の悪い笑みを浮かべる。


「呼んだのはそっちだろ」


 そう、フェリスの依頼は事務科の新しいシステムの実験台。


 それだけなら嫌々だったが、テスターにはある特権があった。


「金欠男の癖に生意気な、本来なら低クラスの弱影なんかお呼びもかからなかったんですが、この心優しい岬様が推薦して、わざわざフェリスさんに交渉を持ちかけた私の努力を誉めてもいいですよ」


「絶対わざとやっただろ」


 学園からの依頼は直接依頼と契約者を通しての依頼があり、直接依頼は、冒険者に直接頼むため中間マージンがなく、金額を低く押さえられるため、依頼主、依頼を受ける側双方に人気があるが、受ける側の契約主によってキャンセルになったり、断られることがある。


 対して契約主を通しての依頼、別名『強制依頼』は、金額が高くなる。


 それは契約主のマージン分と、その契約主が契約している者の拘束料等々、ふっかけられる場合も多く、契約成立までの日にちも長くなる。しかし、契約が成立すれば、契約主が契約している者は絶対に断れない。しかも成功報酬は契約主次第。


 良い契約主なら相応にもらえるが、フェリスみたいのだと・・・・・・。


「そっそんな、私を疑うなんて、マイナス二百%思ってないのに」


 よよよとあからさまに嘘泣きする。


 はぁー。


 御影は依頼を受けずに帰りたくなったが、なんとか気を持ち直して、依頼説明までこじつける。


「一回しかいわないからよく聞きやがれこんちきしょう、今回の依頼は、ランダム形式のダンジョン探索です。今回新たに開発したダンジョン転移魔法陣は乗った人の力量をはかり、最適なダンジョンに転移します。今回は一~五十の設定しました。分かったらはやく逝けこのくそ虫が」


「はいはい、分かりましたよ」


 手をひらひら向け、扉に手をかける。


「ほんとにいくのですか、今回は特別に太陽より懐が深い岬様がキャンセルも受け付けますよ」


「おっ、珍しいな、心配してくれるのか」


「さっさといけこのバカ影」


 御影がいなくなった後、岬の顔色は優れなかった。


 それはまるで、取り返しのつかないようなことをして後悔しているような表情だった。


 御影は指定の魔法陣の上に乗り、ついた先が知のダンジョンだった。








 そしてプロローグに戻る。


 二時間で分かったことは四つ。


 ○部屋はひし形、扉は四つある。


 ○扉は上下左右にあり、移動は埋め込まれている梯子を使う。


 ○扉の前にいくと問題が出現し取っ手がない、かわりに丸いボダンがあり、それを押すと、答えなければならず、間違えると罰がある。


 ○問題は一時間ごとにきりかわり、今のところ分かる問題はない。


 試しに一度挑戦したが、間違えて槍の雨が降ってきた。


 参ったな全然分からん。


 例をあげると


 Q1:現在生存が確認されている国の数と名前を答えよ


 Q2:レベル九十以上のダンジョンの数と名前を答えよ


 Q3:このダンジョンの部屋数を答えよ


 Q4:太陽の直径を答えよ


 これが第一回目の扉の問題。図書館で本を借りたり、舞先生にこの世界の基礎を教えてもらったりと大分この世界の事を分かったつもりだったが、どうやら全然分かってなかった。


 御影は国の数やダンジョンの数は知っていたが、その名前まではいくつかしか知らなかった。


 弱ったな。


 寝転がり、無機質な灰色の景色を眺める。



 御影がこの世界にきて最大のピンチが訪れていた。

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