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模擬戦~シンリィ対守~


「ほらっ、わっちが凄いからって逃げてばかりじゃだめじゃぞ」


 巧みに魔法を使い守を追い込んでいくシンリィ。あれから詠唱スピードが上がり、簡単なものなら無詠唱で魔法を使えるようになった。


 無詠唱が使えるようになったから、ストックで魔法を維持しなくても、ノータイムで、異なる魔法を同時に使えて、効率的にも格段にあがった。


 無詠唱はストックより高度な技術で、魔法の究極系ともいわれる。


 発動形態として、難易度は通常、詠唱短縮、詠唱破棄、無詠唱の順になる。


 今ではカテゴリー二の魔法なら五つ同時に扱えることができた。


 一方守は一番遅くきた新入部員で、今日が初めての模擬戦。元の実力から鑑みても、それこそシンリィや水流が初めて種次と戦ったときのように完敗するように見えた。


 しかし、守もこつこつと努力してきた。


 努力の量ではシンリィ以上だ。


 今までは、努力の方向性を見失っていた。どうすればいいかとわからず、ただ闇雲に。


 テイマーは希少で先生方も教え方分からず、魔法科の最低クラスにいたため放置されていた。


 しかし、御影と出会えたことで、みるみるうちにテイマーとしての才能が開花されている。


 ここ一週間ののびしろでいえば守がトップだ。


 元来の真面目な性格に、ほっといたら何時間でも反復練習を行う姿勢だ、それは当然ともいえる。


 そして何より自分の魔法であるテイム魔法を、使役したモンスター達を愛していた。


 魔法はイメージと精神力が大切だ。自分の魔法を信じられないものに勝利の二文字はない。


 なにより、守の眼が負けないぞと訴える。


「シーちゃんソニックダッシュでシンリーさんに攻撃、スラ子とスラ太郎は『ウィルロック』を作って僕を守って」


 モンスターにも一人一人に個性があり、人間でいう魔法や技みたいなものも使える。


 ワイルドウサギのシーちゃんは疾風の如くシンリィに突進し、スライム二匹は折り重なりように粘膜を展開し、守を魔法から守る。


 本来なら、いくら弱い魔法とはいえスライム程度なら簡単に倒せる。


 しかし、スライム達はシンリィの複数魔法に対しびくともせず防ぐ。


 まるで、城壁にでも当たったかの如く。


「タイフーン・ジ・クロニクル」


 このぐらい防ぐことは折り込み済みだ。


 同じ魔法使いなので、練習もよく見ていた。


 だから、さっきのは挨拶代わりだ。


 シンリィが成長したのはそれだけでなく、魔法に指向性をもたせ、今はなった風の六級魔法『タイフーン』の強化版で威力は五級相当。従来よりも、台風の円を大きくし、回転も速くしている。


 魔法とは均一的なものでと思っていたシンリィからすれば眼から鱗だった。


 それから、シンリィは飛躍的に実力が上昇し、暇さえあれば魔法のアレンジを考えている。


 シーちゃんは、後方に飛び退避し、台風の向こう側から連続してくる風の刃を避ける。


「まだまだいくのじゃ」


 タイフーンを維持しながら、シンリィは仕上げにはいる。


「全てよ凍れコキュートス」


 氷系広範囲氷結魔法『コキュートス』


 第三級に認定される、シンリィの新たな魔法。


 対象の範囲を瞬時に凍らせる。


 魂をも凍らせるぐらいの冷気からそうつけられた魔法。


 無論シンリィはたとえ守を凍らせても、命を奪わず解除できるため使ったのだが、舞先生や御影が居ないときは禁止されていた魔法。


「しまったのじゃ」


 そう後悔しても遅い、魔法は既に発動した後。


 手を顔に当て、おそるおそる、手の間から状況を見る。


「どうなっているのじゃ」


 確かに魔法は発動したはずだ。魔力もごっそり持ってかれたし、失敗したなんて事はない。


「・・・・・・やりすぎ、アホ狐」


 炎魔法で相殺した水流が、呆れた視線をシンリィに向ける。


「なんじゃと、炎馬鹿」


 悪かったとはシンリィも思っているが、水流から言われると、何でもついかっとなってしまい、いつも通りくってかかる。


 審判役の風花がおそるおそる止めに入る。


「あの、この試合は守君の勝利です」


「わっちの反則負けかの」


 シンリィは、負けたこと事態は納得していた。禁止されていた魔法を使ったのだ、それは当然だ。


「・・・・・・反則狐」


「・・・・・・何じゃと」


 また口論が再燃しそうになるので、口早に答える。


「いえ、違います」


 風花が指した方向を水流とシンリィが見る。


 シンリィの真下に、守が新たに仲間にして召還したモンスター。トゲトゲネズミの『ウーちゃん』の姿があった。


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