第三章幕間02~五大派閥会議とフェイルゲーム~
~五大派閥会議~
「それでは皆さんお集まりいただけたみたいですね」
事件から二日後。座っている五人はこないだと同じメンツ。違うのは立っている面々。学園長派は玲奈が居なく、天音のみ、教会派と貴族派も一人づつ減っている。
教会派の女司祭と貴族派の男は忌々しそうに舞先生を睨んでいるが、当人はどこふく風だ。
今回の進行役は執行部隊、別名中立組織の長で、年齢は六十、執事風の服に白髪で、顔の深い皺が威厳をかもちだしている。
「今年度第三回フェイルゲームの結果を発表したいと思います。その前に今回の概要を説明いたします。今回は、攻撃側が教会派様と貴族派様、防衛側が・・・・・・様派と学園長派様。攻撃側の今回の勝利条件は」
執事は封をされた封筒から手紙を取り出す。
攻撃側は勝利条件を自由に決められるが、執行部から許可が下りないと、その条件は認められない。
防衛側は、日時と時間と目的だけ知らされ、攻撃側の勝利条件を防衛しなければならない。
「指揮科一年D組のフェリス・D・クリスティナと指揮科、戦闘科一年S組藤島玲奈の殺害。今回両者とも生存のため防衛側の完全勝利です」
評価は五段階あり、完全勝利、勝利、引き分け、負け、完全敗北。
執行部隊が経過と結果から、評価を担当し、今回は攻撃側が一つも目標を達成しなかったこと、複数の戦闘の結果を鑑みて、そう判断した。
「攻撃側から防衛側へチップを二枚移動します」
座っている各人物の前にはメダルが置かれている。
貴族派十枚
教会派十三枚
クラブ派十二枚
学園長派六枚
・・・・・・派二十五枚
今回貴族派と教会派は二枚失い八枚と十一枚、学園長派と・・・・・・派は二枚増え八枚と二十七枚。
チップは権力の象徴で、多いほど派閥の発言の重さが増し、学園で使える予算が増え、戦力の増強が可能となり、派閥の人数、傘下枠の上限が増え、他の派閥よりも優位に立つ。
そして0枚になると・・・・・・五大派閥から転落する。
チップの数は三年間持ち越しされ、派閥が一つ入れ替わるか、三年経つとリセットされる。前回攻撃側はクラブ派と貴族派、防衛・・・・・・派と教会派で、攻撃側が出した勝利条件はフェリスの殺害とゼロクラス小屋の破壊。
結果は攻撃側の敗北。攻撃側は一枚チップを失い、学園長派は玲奈のペナルティで二枚失った。
教会派は元より貴族派は殺気立っていた。
二ヶ月で勝敗により三枚も失ったのだ。しかも最下位の学園長派に並ばれた。
本来攻撃側は、計画を決められ、先手をとれるから有利だ。
しかし貴族側は二連敗して窮地に立たされている。
しかも・・・・・・。
「それではペナルティにうつらさせていただきます。一年D組の寮の破壊で貴族派と教会派に二枚ペナルティ、魔法科二年S組七瀬連太郎に対する洗脳魔法使用で教会派に二枚ペナルティ貴族派に一枚ペナルティ、クラブ派は内部の分裂による内紛で、夜露死苦の壊滅及び二名の死亡、クラブ派に二枚のペナルティ。続いて褒賞に移ります。二階堂雫、並びに七瀬連太郎の生還で・・・・・・派に四枚与えます」
勝敗の後の賞罰が一番堪える。
今回派手に動いたため代償も大きい。
勝った方はペナルティを与えられないのは公然の事実。
前回も、今回も御影がいろいろとやらかしたが、舞先生の派閥には一切ペナルティは与えられない、勝者の特権だ。
分かっていたが貴族派のトップは歯が砕けるぐらい噛みしめる。
これで貴族派は五枚、崖っぷちにたたされた。
それは教会派も同じで十枚を切った。
教会本部には一年で五代派閥のトップにたつと約束した。このままでは、五代派閥から降格し本部内の地位も危うい。
「続いて第四回攻撃側は選択権一位・・・・・・派」
「辞退させていただくぞ」
舐めてますわね。
女司祭は呪い殺さんばかりに音叉をぶつける。
前回も辞退して今回もだ。メダルの枚数も断然トップ。舞先生が猫なら他の派閥は鼠だ。
本来なら私がその地位に座っていたはずですのに。
「選択権二位クラブ派」
「今回は遠慮させてもらう」
この腰抜けが。
貴族派の男が心の中で汚く罵る。本来トップを目指すなら攻撃側を選択すべきだ。
それなのに、辞退したって事は、腰抜けか、何か理由があるからだ。
事実クラブ派は、ゲームに出れる状態ではないほど内部でごたごたがある。
だから今回は見送った
その情報は他の派閥は知っていた。
なら・・・・・・。
貴族派の男は女司祭に目配せする。
そういうことですわね。
女司祭も頷きニヤリと笑う。
攻撃側は最高二枠だ。
二人の視線を浴びて学園長は
「辞退させていただきます」
そういう他なかった。
「それでは攻撃側は貴族派と教会派に決まりました。それでは攻撃側は防御側を選択してください」
攻撃側は防御側を選択できる。攻撃側が二つなら防御側も二つ。
「「クラブ派と学園長派で(すわ)」」
今回はトップの派閥を狙わず狙えるところを喰らおう。
「防御側はクラブ派と学園長に決まりました。これより一週間以内に攻撃側は勝利条件を提出してください。最後に・・・・・・」
貴族派と教会派の他、その場の全員が舞先生を見る。
意地の悪い笑みで舞先生は応えた。