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第三章幕間01~玲奈のその後~

「記憶を失った僕によくしてくれてありがとう」


 あの事件から一週間が経過した。


 当初記憶を無くして取り乱していた連太郎もすっかりと落ち着き、旅立ちの日となった。


「すいません私はなにもできなかったです」


 幼なじみの為にこの一週間何とか連太郎が学園に残れるよう玲奈は尽力した。











 ~学園長室~


「何故ですか、連太郎の実力なら一ヶ月もしないうちに、復帰できるはずです。私も連太郎が早く復帰できるよう頑張りますので」


 玲奈の出した計画を却下され、学園長に抗議している。


「確かに、あなたの案は悪くはないでしょう。この案通りやれば、一ヶ月程度で復帰できることでしょう。しかし、あなたも分かっていると思いますが、彼は寮を襲撃した張本人。貴族派から解雇され、家からは帰還命令がでています」


「それは」


 玲奈は言葉に詰まる。操られていた。黒幕は他にいる。仮面の男と輝義が疑わしい。連太郎ははめられてだけだ。


 いくつもの言葉が思い浮かぶ。


 しかし、どれも証拠がなく憶測としか思われない。


 仮面の男は正体不明、輝義も何処かに消えた。そしてなにより。


「五大派閥会議でもう決まったことです。あなたも上を目指すなら覚えておきなさい。綺麗事だけじゃ物事は前には進まない。妥協と駆け引きを早く覚えることです。貴方の素直さは美徳ですが、上は魑魅魍魎ばかりです。大人になり天音の言うことをよく聞いて精進しなさい」


 学園長はもう用はないといわんばかりに視線をきり、仕事を再開する。


 玲奈は帰るしかなかった。


 大人になるって何だろうかと考えながら。




 ~クラブ室~


 S級クラブ『零宮の調べ』、構成人数は百人を越え、各学科のSクラスの上位、つまり各方面のトップクラスが在籍している。


 そのクラブのトップが生徒会長天野川天音だ。


 今日は部長室におり、玲奈の話を聞いている。


「つまるところ、玲奈さん。貴方は御影さんとのクラブと同盟を結び、連太郎さんも学園に残したい、要約するとそういうことですよね」


 玲奈は頷く。しかし、天音は駄目な子供をしかるような表情で一から説明する。


 どうして駄目なのかを。


「一つ一つ説明します。まず連太郎さんの件ですが、学園長も言った事だと思いますが、既に判は押された後です。貴方の幼なじみかもしれませんが他派閥の人間、しかも洗脳魔法をかけられた存在、命を救えただけでも奇跡に近いです。それは分かりますね」


 語りかける様に、授業形式で問いかける


 それは、玲奈も分かっていた。一連の成り行きを聞かされ、連太郎にとって最善の手だったと思う。


 本来洗脳魔法にかかった人物は、軽度なら気絶させるか、強い衝撃を加えると解けるが、重度の場合御影がやった方法の他は殺すしかない。


 御影がやった方法も、本来この学園で十人使えるかどうかの魔法で非常に高難度かつ、特殊魔法だ。


 生きていることに感謝しなければならないが・・・・・・あの手紙を見た後では、どうしても欲が出てきてしまう。


「それは分かります。でも御影さんには、ほかにも救える力があった。だったら何で使わなかったんでしょうか」


 それは事件が終わった後、後日に御影に質問した言葉に近い。


 天音と御影は会ったこともない。しかし答えは同じだった。


「それは、仲間じゃないからですよ。救うなら相手は最良のことをするべきだ。貴女の悪い癖ですよ。御影さんはぎりぎりやれる範囲内で救った。貴女も救われたうちの一人です。契約者を守る行為であったとしてもそれは事実です。なのに、それ以上のことを求める。傲慢ですね。貴女は踊らされて、自身の身も危険に晒した。貴女は自覚を持つべきです、学園長派時期ナンバー二として、貴女も今回狙われていた、なにも教えなかった私達も悪いとは思いますが火中の栗は拾わないようお願いします」


 コノヒトハナニヲイッタノダロウカ。


 これじゃあまるで。


「ああ、学園長は話されてなかったみたいですね。なら私から説明します。今回の件はクラブ派の内部分裂と御影さんの契約者フェリスさんの排除の計画は私達学園長派も掴んでました。今回は傍観者として、一切関与しないことを学園長と話し合って決めました。細かな作戦内容や貴方まで狙われるとは知りませんでした」


「知っていたのですか」


 知っていてなにもしなかったのか。玲奈には信じられなかった。


「上に立つものは時には何かを切り捨てなければなりません。それが親しき間柄だったとしても。その判断をできるようになりなさい。そのために貴女はここに来たのではないのですか」


 私がここに来たのは。


 天音がまだ説明していたが頭に入ってこなかった。











「そんなことないです。記憶は失ってどうしようもない僕に親切にしてくれました。周りの人間、両親だといってくれた人達にさえも白い目を向けられ、自暴自棄になって荒れていた僕にも、親身になって、見捨てたりせず、暖かい眼差しで支えてくれました。僕は貴女に救われました。それに何か胸のつかえが取れたような、心がすっきりとしています。ここから出るのは、怖いですが、貴女のように、人に誇れる人間になりたいです。何か悩んでいるみたいですけど、貴女は今の貴女のまま進んだらいいと思います」


 そういって、連太郎は学園を後にした。


 ありがとう連太郎。そしてさようなら。


 目元を拭い、玲奈は決心する。


 茨の道でも否定されても構わない。子供でもいい。私は私だと胸を張っていえる人になろうと。


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