表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/238

エピローグ

 

「あのっ、僕の名前は深内守といいます!強くないですが精一杯頑張りますので宜しくお願いします」


 守はかちこちに緊張しながら頭を下げる。


 守を見る皆の眼は暖かい。


 ぱちぱちと拍手が鳴り、守は照れた様子でそれに応える。


「風チャンの姉の二階堂雫と申します。この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ございません」


 雫は頭を下げ謝罪する。


 この騒動を知らなかったものも、事件翌日に、御影が説明した。


 事件当日も謝ってもらったが、本格的にクラブ活動を再開する今日、もう一回謝りたいと雫が言ってきたので来てもらった。


「お姉ちゃん」


 あれから、風花と雫は、雫の部屋に泊まり、長い時間話し合った。


 今までの時間を、間にあった壁を取り除くように。


 今は風花と雫の間はまだぎくしゃくしているが、それは時間が解決するだろうと御影は思う。


「御影さん、皆さん、風チャンの事宜しくお願いします」


「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめてください」


「あらあら、風チャンの為ですもの、頭だって、土下座だってします」


「それはやめて」


 風花は、顔から火がでるほど恥ずかしく、雫は土下座の真似をしようと座ろうとしていたところを顔を真っ赤にして制止していた。


 あれから雫のクラブと同盟を結ぶ事になり、週に一回、合同で練習する事になった。


 雫のクラブと同盟することによって、周りの派閥の牽制になるし、クラブの皆と舞先生と話し合って決めた。


 玲奈も上と掛け合ってみるといっていたが、今までいい返事がないとみると厳しそうだ。


 雫はクラブの部長に対し、玲奈は一幹部にすぎない。


 クラブ派の幹部の妹だが、雫のクラブの規模はC級で、玲奈のクラブはS級だ。


 御影は元々期待してはいなかった。


 いや、仮に玲奈が説得に成功しても断っていたであろう。


 大きすぎるクラブには必ず歪みがある。


 玲奈は実直すぎるし、悪意に疎い。


『今は』玲奈のクラブと同盟を結ぶのは早計すぎると判断したので、この結果は御影にとって渡りに船だ。


 玲奈の心象的にもこの結果が最善だ。


 雫のクラブとの同盟が決まった後、風花が嬉しそうにしていたのを御影は覚えている。


 良かったな風花。


 何かに怯え、実力を出せず震えていた風花の姿はもうない。



「よし、今日のクラブを始めるぞ」


「へっへっへっ、まってくだせぇ旦那ぁ~、おれっちの二度目の復帰宣言がまだっすっよ~」


 三下の発言を無視し、準備運動から始める。


 もちろん、クラブの面々なりの温かい歓迎だ。


 三下もそりゃないっすよっと言ってへらへらと笑いながらおちを言う。





 あの日、豪が亡くなった日から二日後、今回亡くなった人達の合同葬式が教会でしめやかに行われた。


 といっても、今回亡くなったのはチーム『夜露死苦』の部長と副部長。お偉いさんはおろか、夜露死苦のチームメンバーは判決が下るまで監禁され、結局は教会の神父と御影達しかいない。


「兄貴ぃ~ごめんよぉ~、裏切って御免」


 三下は棺に縋りついて泣き崩れる。


 事件が終わってから、豪の遺体は、学園の執行部隊がすぐに回収し、舞先生達と合流した時には、もう無かった。


 そして今日が最後の顔見せだ。


 あれからまだ一週間も経っていない。それでも三下はつらい顔を見せず、いつものひょうきんな顔だ。


 豪は都合のいい駒でしかすぎなかった。


 人は少なからず、なにかしらの野心を持っている。


 遊びだったり、勉強だったり、仕事だったり、スポーツだったり。ベクトルが違うだけで本質は一つ・・・・・・欲だ。


 その欲を、増幅させ、自分の思い通りに操った人物がいる。


 そういう意味で、クラブ『夜露死苦』は今回の件で一番の被害者だ。

 

 今回は逃げおおせたかもしれないが、次は必ず暴いてみせる。


 今回の被害者にそう御影は誓った。







 深夜、真っ暗で皆が寝静まった時間、少ない荷物をリュックにまとめ、足音を殺して、誰にもばれないようとある人物が学園から去ろうとしていた。


「何処に行くんだ今日子」


 後ろから御影が声をかける。


「影さんっすか。尋問しにきたっすか。なにも喋らないっすよ。何かするなら舌噛んで死ぬっす」


「もう『終わったこと』だそんな事しないぜ。それよりも餞別だ」


 今日子は警戒しながら、御影から袋を受け取り、中身を確認に目を見開く。


 それは、今回『依頼』に成功していたら、もらえた報酬『星の奇跡』レベル3。しかも成功していたときにもらえた数よりも倍近くある


「どういうつもりっすか」


「色々情報をもらったお礼って言っても信用できないか」


「当たり前っす。何処に命をねらった人間に報酬の倍近く渡す人がいるんすか。早く目的を言うっす」


 初めから今日子を待ち伏せして、依頼しに来たのだと思っている。


 御影の言葉のまま受け取るほど、今日子は優しい世界で生きてはいない。


 常に相手の思惑を読む。


 裏では必須のスキルだ。


 ただより高いものはない。『かり』を作る前にさっさと用件を言ってほしかった。


「俺からの依頼は3つだ。どんな形でもいいから仮面の男に会わせてほしい。もちろん危害は加えない。魔法契約書にサインしてもいい」


「それは、問題ないっす、あの人からも了承をもらってるっす。日程が決まったらこっちから言うっす」


 もし会うことがあったら、伝えるよう言われていた。


 会ったら只ではすまないと今日子は思っている。


 だから本音を言えば会いたくはなかった。


 そんな考えをおくびにも出さず、めんどくさそうに、続き促す。


「二つ目はここから出れる手段がほしい。順調に言っても出れるのは数ヶ月後だ。お前等なら、手段や伝手をもってるだろう」


「性格悪いっすよ影さん」


 だから、御影はこの時を待っていたのだと今日子は分かった。


 今日子は顔がばれてしまったため、この学園から離れるよう言われ、今逃げるところだ。言い訳の仕様もない。


「で、最後は何っすか」


 何か色々と諦めた雰囲気で、今日子は最後の依頼を聞く。


 御影は了承と受け取って内心拳を握る。これで色々とやれる事の幅が広がった。


「最後は・・・・・・」


「やっぱり影さんは鬼畜っす」


 今日子の苦難はまだまだ続くらしい。







 賭で言うと、今回はフィクサー側の一人勝ちだった。依頼金も失敗という形で払わず、目的の大部分を成功させた。


 だけど今回の事で御影に付け入る隙を与えてしまった。


 これから、誰が勝つのかまだ分からない。


 しかし、誰かが破滅するまで、終わらないだろう。




 そして、とうとう『舞先生』の派閥が狙われる、・・・・・・の八月がすぐそこまで迫っていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ