フェリスの危機と侵略者の正体
フェリスはラビを抱きしめぎゅっと目を瞑る。
・・・・・・時代の名残で本能的な行為。
・・・・・・なら楽勝なのに。
悪態を思いながらいつまでたってもこない攻撃に目を開ける。
フェリスの周囲が水色の膜で覆われていた。
これは御影がもしもの時を考え、初心者ダンジョンで気絶していたとき、フェリスの背中に仕込んだ防衛手段。
危険を察知すると、膜が覆い攻撃から守り、使われれば、御影に情報がいくというものだった。
だから、慌てていたのだ・・・・・・その情報はなかったから。
大きいものはばれるから小さい二センチほどの魔法陣を仕込んだ。
防衛強度は物理攻撃はかなり防げる。
カティナが全力でやってもびくともしないくらいに。
しかし、それにリソースを割いたため難点があった。
「・・・・・・殺す」
侵入者は魔法を唱える。
そう、魔法に弱く、カテゴリー二、六級の魔法で障壁は壊れる。
侵入者の一人が唱えているのは、カテゴリー4の重力魔法『グラビティ』、等級は六級で上から押し潰す魔法だ。
ミシミシという障壁が軋む音と共に、五秒ほどで壊れた。
「フェリスちゃん」
「ラビちゃん」
お互いの名前を呼び合い、今度こそ終わりだとばかりにぎゅっと抱きしめ合う。
「何とか間に合ったか、そうやってるとかわいげがあるぜ」
間一髪御影が間に合い、魔法障壁で、重力魔法を防いだ。
「それはそうと、この学園は仮面がはやっているのか」
侵入者の四人の服装は、黒い上下のスーツで、無印の黒仮面を被っていた。
「遅かったの、クソなの、死ねなの。契約者の危機になにやってたの」
水を得た魚のように、フェリスの調子が戻ってきて、御影はげんなりとする。
「色々と、忙しかった。これでも急いできたんだ、文句を言われる筋合いはないし・・・・・・それにまだ危機は終わっていない」
気分を入れ替えるように油断なく侵入者をみて・・・・・・違和感を感じた。
そういうことか。
ようやく今回の全容が朧気ながら分かった気がした。
「正体を見せてもらうぞ」
さっきの女仮面の正体は言われる前から九割方わかっていたが、今回の仮面男は見当もつかない。
御影は指弾を仮面に浴びせる。
避ける間もなく電光石火。
強度がないのか、仮面が縦に割れ、素顔が見える。
四人中三人は知らない顔だった。
残り一人は・・・・・・。
「解いて、真相を話してもらうぜ。七瀬連太郎先輩」
時間は少し遡る。
連太郎は、人気が全くないとある場所で、ある人物を待っていた。
依頼を失敗して、人を待たせるとはいい度胸だ。教会派に抗議してやる。
自分のことは棚に上げて、憤慨する連太郎。
「すいませーん。いやぁ、女の子との待ち合わせには遅れないんだけどねー」
全く悪びれもせず輝義はやってきた。
「貴様は・・・・・・まぁいい、この間の失敗はどう説明する。危ない橋を渡って、大金を渡して依頼した。当然お金は返ってくるんだろうな」
射殺さんばかりに連太郎は睨みつけるが、輝義はどこ吹く風だ。
「あー、教会からの返答はNOー。第一、あんな超人いるとは知らなかったしねー。俺的には目の保養になったからよかったけど、金額もわりにあわないYO」
ふざけやがって。
いらっときた連太郎だったが、今日は追加の『依頼』にきたので、癇癪おこして駄目にするのはナンセンスだと自重する。
「では追加の依頼だ。藤島玲奈と御影友道を殺してくれ。金は言い値で払う」
連太郎がここに来たのは文句を言うためと、御影友道の殺害依頼だ。
「はぁはぁHA、俺はいやだね。殺せる気がしないYO。それよりもかわいこちゃんと遊んだ方ががいいね。おっと、俺も依頼があったんだYO」
そこで、連太郎の意識が途絶える。
「せいぜい、良い夢みてくださいNE。さて、後はかわいこちゃんとの戯れにいきますか」
そんな声が聞こえた気がした。