Hクラス寮での戦い02
「もう終わりか、手応えがなかったぞ。まぁいい、後は貴様一人だぞ」
舞先生の周りには感電して気絶している死屍累々の数々。
残りは副部長のみとなった。
しかし、副部長は余裕を崩してない。
「仕方ない」
副部長は最終手段を実行する。
ポケットに入っているスイッチを押す。
「あまり派手にしたくなかったが、この寮は五秒後に爆破する」
これが、豪達が考えた最終手段。十人ほどの別動部隊が寮の裏に爆薬を設置し、副部長の起動スイッチで爆破する。
爆弾は協力者が用意したもので、十中八区成功すると思ってはいたが、失敗した時の保険で、御影と二階堂家にダメージを与えるため、亡きものにしようという計画だ。
この計画は、損害が大きすぎる点と、実行し誰かに見られればもう学園に入られなく罰をうける点と、一つ目の計画が失敗に終わったら破滅する点だ。
舞先生が目の前にいる今、副部長は退学と大量殺人罪で戦闘奴隷か・・・・・・送りになる事を覚悟していた。
豪さん。
副部長が優先したのは豪の命令だった。
自分の能力は自分が一番よく分かっている。
二年でAクラスに入ったが、Sクラスの壁は分厚い。
このままキープして、三年間終わるのだろう。
Sクラスとの入れ替え戦で完膚なきまでにうちのめされ副部長はそう思った。
それから入れ替え戦ができる上位に入っても辞退し、平凡な時期が続いた。
そんな時、声をかけてきてくれたのが豪だった。
「おい、俺と一緒に天下を取らないか」
豪の眼はぎらぎらと野心に燃えていて、溢れ出る自信に漲っていた。
その場は断ったが、ことある事に誘われ、気づけば所属していたクラブを辞め、豪のクラブに入り、諦めていたSクラスに入ることができた。
これもすべて豪さんのおかげだ、でも自分は何一つ返していない。
そして昨日、倶楽部の面々が帰り、豪さんと二人っきりになった。
「○○○○はああいったが、もしその場面になっても、やらなくていい、俺ら二人で天下を取る。分かったな」
やっと恩返しする場面がきた。
しかし五秒たっても爆破する気配はない。
「見上げた忠誠心だぞ。私一人だったら成功しただろうな」
「全く、人使いが荒いのだよ。三下、命拾いしたな」
「わ、さ、よ(私たちが阻止したよ~、三下さん戻ってきて良かったよー)」
「三下さん、最後はこっちに戻ってきてくれると信じていました」
御影はあるかもしれない可能性を皆に話し、種次主動で罠を張り、かかった所を三人で倒した。
「へっへっへっ、皆さん知ってたんっすかぁ~。やだなぁ~みずくさいっすよぉ~」
心底最後の最後に、御影側の味方になった事を喜びながら、いつものへらへら顔で、寮裏からでできた三人の方に向かう。
もう終わりと思っていた四人。
舞先生がおり、相手は一人。
もう勝負は決まったと見てもおかしくはない。
完全に気を抜いていた。しかし、そういう時こそ危険なのだ。
すいません豪さん。
副部長はコートを脱ぎ、本当の最終手段。
豪さんにも話してないことで○○○○から提案し自分自身で決断して承諾した。
体中に巻き付けた魔素と爆薬を融合させた、先の五倍の威力を持つ爆弾。
豪さん今までありがとうございます。
三下が頭を抱え、プゥが硬直している風花の手を引き、種次が完全に想定外の事態に思考がショートし呆然と突っ立ったままで。副部長は自爆スイッチを押した。
その轟音は豪の耳にも届いていた。
ナーデルやってくれたか。
豪は拳をぐっと握る。
音のする方を見ると、火柱が立っていた。
豪は最終手段を実行したのだと悟った。
実は、豪はナーデルが、最終手段として自爆する事を知っていた。
知っていたのに、黙って行かせた。
地獄で待っていてくれナーデル。
三下と違い、ナーデルは豪の右腕だ。信頼していたし、だから大切な作戦のリーダーにした。
ナーデルなら命を懸けてやってくれると信じていた。
こうなれば道連れだ。
既に協力者は忽然と消えていた。
もはや、破滅の道しかないが、少しでも道連れにするため、豪は動き出した。