決戦前夜
昇格試験前日
~教会~
教会の懺悔室で、とある二人が向き合っていた。
「失態ですよ輝義」
「あ~すいませんね~美人には詰めが甘いんですよ。もちろん・・・・・・様にもね」
懺悔する方は輝義で、教会側は・・・・・・。
飄々として掴み所がない輝義を冷めた表情で見つめる女性。
「まあいいでしょう。大した依頼ではなかったですし、学園長派はいずれ吸収されるみ」
女性にとって今回の依頼はたいしたものではなかった。現生徒会長がいなくなれば、学園長派は衰退する。
それは変えようのない事実。
可能性の芽を摘む為、先日の依頼は丁度よく、あいてる中で一番成功率が高い輝義に任せたのだ。
報告を受け、本来なら成功していたの依頼。あんな事を言っていても輝義の腕は確かだ。ねんにはねんをいれていた事が伺えた。
だから、おとがめはない。
なぜならイレギュラーの存在がそれを覆したからだ。
失敗した後のもみ消しに少々手こずらされたので、嫌みを言うためと、下の者に示しがつかないので呼び出したのだ。
「御影友道・・・・・・邪魔ですね」
本当に邪魔だ。どこの派閥にも属していない経歴不明の人物。
派閥関係なしに引っかき回す暴風。
たまたま前回は学園長派が被害をこおむったが、その矢が自分たちにこないとも限らない。
自分達の派閥にこれば他派閥に大きなアドバンテージを得られるが・・・・・・。
「まぁ~、いくら・・・・・・様の頼みでも俺はごめんですよ、奴と対峙するのは」
女性は驚き目を見開く。
いつもはどんな依頼でも二つ返事で了承していた輝義が難色を示したのだ。
そういう意味で、相当厄介な輩だと女性は思う。
「癒杉先生のお気に入りですし、今事を構えるのは得策ではありません。それよりも次の依頼です。今回は失敗は許されませんよ」
「はいよ~。分かりましたよ。麗しの君」
「虫唾が走るので即刻去りなさい」
話が終わりひらひらと手を振り輝義は去った。
「さて、後は」
~A級クラブ夜露死苦クラブハウス~
今日集会があり、クラブの人間全員が集まっていた。
ヤンキー集団にも関わらず、規則正しく整列していた。
そのもの達の前に豪と三下がいた。
「いいかお前等、勝負は明日だ。」
「「「おおおおぉぉぉーーーー」」」
豪の声に呼応するかのように口々に叫ぶ。
「明日・・・・・・、全てが変わる、上手くいけば序列に入り、クラブ派の上位に立つ。お前等覚悟はいいか」
「「「「おぉぉぉぉぉ」」」
豪の声に再び周りは熱狂する。
豪を慕ってついてきたもの達ばかりだ。今回の豪の計画で成功すれば一気に飛躍する。
失敗すればなにもかも失うが、豪がやるといっているのだ、なによりこんなお祭りに参加できるのだ。血の気の多い面々は既にたぎっていた。
「明日・・・ぶっ潰すぞ」
熱狂が収まらない。元々喧嘩っぱやい面々は殴り合いをしていた。
「兄貴ぃ~、本当に大丈夫っすか」
三下にとって不安しかなかった。確かに片方は成功するだろうと三下自身も思っていた。
しかし後の二つは成功する確率は低いと思っている。
御影がいれば話は別だが、それほど無謀な計画の様に三下は見えた。
本来、二ヶ月ほど後に行うはずだった計画だ。それこそ入念に準備し、根回しを行った後。
しかし豪は一週間前突然決行するといったのだ。
当然三下は止めたが、聞く耳をもってくれなかった。
「心配するな。今回は協力者もいる」
その協力者が心配だと三下は思っているが口には出せなかった。
御影旦那ぁ~凄いことになりましたっすよ。
本音を言うなら御影に話して、協力が仰ぎたかった。
しかし・・・・・・だから絶対に言えない。
元クラブの面々に申し訳なく思いながらも、喧嘩祭りを眺めていた。
~とある会議室~
「明日の情報をもってきました兄さん」
種次は得られた情報を纏め、兄で生徒会副会長の一に渡した。
「くっくっっくわっはぁはぁ、いい感じで駒が回っているようだな。さぁ踊れ、俺達の未来のために、俺の理解がいっている。五代派閥の内、二つの派閥が戦力を落とし、近い内、序列十五席の半数以上が空く。弟よ、上手く立ち回り利貢献するのだ、今回も御影が中心になる。お前の出来一つで大きく変わる」
「はい兄さん。できる限り頑張ります」
種次の返答に満足したのか足を組み眼鏡のブリッジを押す。
「俺も裏で動く、そして今回も得するのは俺達だ」
「はい、わかりました」
通信を切りユズリアは空を見上げる。
星がででいて綺麗な夜空だ。明日血で染まるとは思えないほどに。
「色々大変だね御影君。明日どういう選択をするのか楽しみだよ」
心底楽しそうにユズリアは笑う。
夜が明け暗躍の一日が始まる。
誰が成功し、誰が失敗し、誰が死に誰が去るか、今は誰も知らなかった。