新入部員の特訓
「今日はここまでだ」
「「・・・・・・」」
御影の終わりの合図にシンリィと水流は答えられず、地面に突っ伏し、物言わぬ屍状態だった。
「あの大丈夫でしょうか。御影さんも、初日からやりすぎです」
風花が、半ば諦めたかのように、眉をしかめ抗議しながら二人を介抱する。
「やったのは初歩の初歩だ特訓にすらはいらん、もう少し骨があると思っていたが、先が思いやられる」
御影は溜息をこぼす。エリートとはこうも甘ちゃんばっかりなのかと。
カティナや美夜、プゥや種次は死に物狂いで必死についてきた。
異世界式で、気絶は日常茶飯事、披露骨折はしょっちゅう。血反吐や胃液を吐き、どんなにつらくて苦しくてもそれでもなぎこと言わなかった・・・・・・三下以外は。
同じ新入りでもでじ子の方が骨があった。
今は遅延魔法をきった状態の鍛冶部屋で寝かしている。
先ほど見てきた光景を思い浮かべ、少し冷ややかな表情を浮かべた。
今だせる全力をぶつけるでじ。
でじ子は鉄剣づくりに取りかかった。御影のアドバイスもあり、なれない鍛冶場でもてきぱきとこなしていたが、突如としてそれは訪れた。
すごくだるいでじ、ハンマーが重いでじ。
整形している時、でじ子は違和感を覚えた。
「ここの道具は魔力をかなり喰う、そろそろ限界か」
一流の道具にはそれなりの理由があり、ここの道具は、魔力をかなり使う。
御影はこともなげに使って、連続して何本も作ることもあるが上級鍛冶士でも一本作るのがやっとだ。
ドワーフは魔力量が多いが、まだ魔力量が少ないでじ子にはきつい。
御影はでじ子は剣を作れるとは思っておらず、今回はならしで、魔力量から行程の半分程いけばいい方だと思っている。
魔力が欠乏すると脱水症状と似たようになる。
体が怠くなり、手足に力が入らなくなる。
これが初期段階、今のでじ子だ。
「大丈夫でじ、絶対に造るでじ」
どうにか整形が終わり、小槌で細かいところの調整と御影だったら魔力付与もここの行程で行う。
でじ子の腕の血管が浮きでぴきぴきと痙攣している。
物をもてる状態ではなくなり、思考も働かなくなる。これが魔力欠乏中級状態。
でじ子はこの状態になりつつあり、もはや鍛冶をつづけられない。
そろそろ御影は止めようとしたが、でじ子の小さな背中がそれを否定する。
手が駄目なら口でするでじ。
「絶対に諦めないでじ、認めてもらうでじ」
歯が欠けたでじ。でも離さないでじ
何も考えられないでじ。
何処にいるかも分からないでじ。
でも・・・・・・でじ。
朦朧とする意識の中あるのは一つの事柄のみ。
これまで何千回してきたことだ。
魔力が足りないのなら魂を燃やすでじ。
そこからはでじ子自身ほとんど覚えてなかったが、後に御影はこう表現した。
一つの心理に到達したと。
「たいしたもんだ。でじ子、ゆっくり休め」
御影は優しげな表情で、でじ子のぼろぼろの手と、欠けた歯等を回復させ、魔力を与えた後、ゆっくり寝かせ毛布を掛ける。
傍らには、完成した一本の剣があった。
情けないのじゃ。
シンリィは、自分の根性の無さにショックを隠しきれない。
目に涙を浮かべ御影との特訓を思い返した。
「まずはどの位魔法を使える」
「聞いて驚くのじゃ。わっちはカテゴリー3の魔法を使えるのじゃ」
「炎系以外使えない」
シンリィは得意げに、水流は淡々と答える。
「そうか、とりあえずまずは魔力放出からだ。俺が良いというまで放出し続けろ」
魔力放出は魔力を使う上で基礎中の基礎だ。水流もシンリィも息を吸うかの如く使える。
今更こんな事してどうするつもりなのじゃ。
怪訝に思ったシンリィだったが、とりあえず放出する。
こんなもん簡単なのじゃ。
横目を向けると、若干放出量は多いが、水流当然できていて、早く終わってほしそうだった。
先ほどの模擬戦と比べ、あまりの簡単さに拍子抜けるが、問題はここからだった。
訓練での魔力放出は一定にするのが基本でいかにして長くその状態を保つのが重要だ。
十分経過し、まだ余裕の状態だ。
三十分経過し、額に汗が流れる。
四十五分経過し放出する魔力が揺らぎ出す。
五十分経過し。
「くっ」
先に水流が放出をやめ、片膝をつく。
これ以上は危険じゃ。そう判断したシンリィは一時間経過した後『自分の判断』で放出をやめた。
ここまでやれば十分やったと思うのじゃが。期待した目で御影を見るが、信じられないほど厳しい目だった。
「俺は、いいと言うまで放出しろと言った。自分で判断するな。もう一回やれ」
「待ってほしいのじゃ、わっちの魔力がまだ回復してないのじゃ」
「同感」
その言葉に、御影はより一層眉間に皺を寄せる。
「ほう、だったら何か、ダンジョンでも魔力が少なくなったから何もせず死ぬのか。お前等の価値観などどうでもいい。血肉を絞る出すぐらい限界までやれ、心配するな死にはしない」
結局、御影の期待に応えられないままそれから二十分後、魔力欠乏初期段階であっけなく二人とも膝を屈した。
「よし、次はみんなの」
気を取り直して御影は声をかけようとしたとき、知らない気を感じ、練習場の隠蔽してあるものを全て切り、視線を出入り口に向ける。
三分後、出入り口の扉が開いた。




