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クラブ勧誘~魔法科編02~


 私はシンリィ、『奇跡の一日』の一人なのじゃ。この綺麗な赤髪に可愛らしい顔立ち、もふもふでプリティな尻尾にふさふさの狐耳にひれ伏すがよい。


 と、冗談はここまでにしておこうかの。


 わっちらは今、演習授業を受けておる。内容は的当てと、なんとまぁ退屈な授業じゃ。


 こんな授業やる意味を見いだせず、ふけてもよかったのじゃが、それをできない理由がある。


 その元凶、前方にいる涼しげな表情をしている青髪の女、水凪水流を睨む。


 同じ奇跡の一日の一人で、シンリィにとって、トップを争うライバルだった。入学して始めの月、最終試験も通り、学科も含めほぼ満点だったため特別にSクラス編入試験を受け、圧勝を納め、Sクラスの人間を蹴落として、当然のようにSクラスに入った。


 Sクラスに入っても当然のように自分がトップになると思っていた。


 しかし実際は、同じく編入試験でSクラスに入った水流がトップで、僅差でシンリィが二位だった。


 Sクラスの人間は、初めから分かっていたのじゃが、憎しみと蔑みでの眼でわっちと水流を見ておる。


 全く、この国の人族至上主義には困ったものじゃ、おかげでクラスでは友達一つ見つけられぬ、寂しくなんてないんじゃからな・・・・・・本当じゃぞ。


 また脱線してしまった。わっちが言いたいのは、水流は大規模魔法を得意として、わっちは繊細なコントロールと技術系の魔法を得意とする。


 つまり、この演習はわっちの得意分野じゃ。


 この演習は確かに魔法を当てればいい演習じゃが、的の色の魔法を使えば得点が上がるのじゃ、水流は一系統の魔法しか使わず、わっちはある系統以外は、ステージ3までなら全て使えるのじゃ。


 っと、そんなこと考えてる間に、ほれ、水流の出番じゃ。


 シンリィは思考を止め、くいいるように、呼ばれた水流を見た。


 次のトップはわっちがもらうぞ。





 水流は名前を呼ばれ、周囲に誰もいない場所から立ち上がり、開始場所まで淡々と歩く。


 途中シンリィの憎たらしい笑みもさらりとかわし、立ち止まる。


 水流は意識して、少し多めに息を吸い、瞳を閉じる。


 周りの雑音は気にならなかった。


 炎女、馬鹿の一つ覚え、欠陥魔法使い等々、陰で散々言われているのは知っていた。幼少期から言われなれているので気にはならなかったが、ハーフということも相まって、友達はできなかった。最も、それが目的ではなかったため、別によかったが。


 もう一人転校生で、同じ境遇のシンリィは水と油のような存在で相容れない。そして何より、私にとって一番の障害だ。私の目的は。


「それでは、演習開始」


 的が出てきた瞬間炎魔法で焼き尽くされる。


 私ができることはただ一つ、燃やし尽くすことだ。


 的を壊せば次々と的が出てくる。


 最初は一つ、次に二つと、全部壊すごとに倍々に増えていく。


 的の色に沿った魔法と、的の中央に当てる事により得点が多くなる。中央付近は赤い円線で表示されており五十センチほどしかない。


 ついで緑、黄、青、白と円線で囲まれ、円の内部は、風魔法なら緑、水魔法なら青、火魔法なら赤と各系統の色で表示される。


 しかし火系魔法しか使えない水流は、的の色関係無しに、なるべく的の中央に当たる様意識して、次々に的を燃やし尽くす。


 シンリィはある一系統をのぞく的の色の魔法を的確にぶつける。しかも約七割ほど的の中央付近に当たる。水流というより火系魔法はコントロールより威力重視の為、一ヶ月前よりよくはなったが、それでも中央付近には四割が良い所で、同じ数では勝ち目がない。だから、演習の時はあえて中央付近を狙うのはやめて、特性を活かして威力重視にいくことにした。


「数多のものを燃やしつくさんフレイムボールズ」


 六級炎魔法フレイムボールズ。八級炎魔法フレイムボールの複数形で、半径十センチ以上の火よりも熱い炎が六個以上維持できれば成功となる。


 水流の魔法は半径三十センチ、十個ほどの灼熱玉が真上に出現し、的一つだけで消えることなく、一つの玉で直線上にあった的を全て燃やす。


 質より量で攻めるのが、現状で水流が導き出した結論。的の数が増えるごとに炎魔法の威力がいかんなく発揮し、終わる頃には、千個以上の的が存在していた。






 むぅ、やりおりのう。


 現状ダントツの一位に躍り出た水流の演習を見て、シンリィは唸る。


 今までと全く違うスタイル。まさかこんな戦法でくるとはシンリィはじめ、他の生徒達は思っていなく、一様に驚いた表情で、演習を終えた水流を見る。


 演習のスタイルを変え、的の中心に拘らず、量で攻めた水流。


 結果的に、このクラスの記録を大幅に更新し、これから演習を行うシンリィはプレッシャーになった。


 しかしわっちは負けんのじゃ、絶対に勝つのじゃ。あれを使うしかないのじゃ。


 自分の番になり、震える体と不安に思う心に活をし、少し息をはき、気合いを入れる。


 始まる頃にはどうにか震えを止まり、開始と同時に青色の的に水系魔法を中央に当てる。


 幸先のいいスタートだ。


 シンリィの頭上には多種多様な魔法球が浮かんでいた。


 御影が行っていた混合魔法と違い、シンリィが行ったのは『ストック』と呼ばれる高等魔法技術で、詠唱を途中で止め、停止状態にし、違う種類の魔法を詠唱する。


 御影の混合魔法は、同時に出したり、合わさった魔法であるのに対し、ストックは、停止状態を解いて一つ一つ出す魔法で、ストックが増えるごとに暴発や消える危険性が大きくなる。


 熟練の魔法使いには必須の技術で、一流になるための壁の一つとされている。


 シンリィはストックした魔法を巧みに操り、同じ色の魔法で的の中央に当てる。


 常時六つストックをして、足りなくなった魔法を補充する。


 魔法自体は水流が使った魔法と同様で、威力は水流より低く、二~三回当たると消える。


 しかし水流は直線だったのに対して、シンリィは、一つ一つ微調整して中央に当てていく。その文水流よりスピードは遅いが、確実に高得点を積み上げていく。


「終わり」


 先生の声でシンリィは膝をつき、荒くなった呼吸を整える。


 額には汗がびっしりとはりついており、一分ほどその場から動けなかった。


 心身共に尽き果てた姿だが、視線はスコアが表示される場所に固定されていた。


 正直勝ったか負けたかは微妙な状態だった。


 ストックはシンリィの奥の手であり、まだまだ練習段階で、水流が凄いスコアを叩き出さなければ使わなかった。


 それほどまでに、シンリィは追いつめられ、そのおかげで限界以上の力が引き出された。練習でもあの数のストックを維持した状態で、一分と保たせられなかった。


 バクバクうるさい心臓の鼓動に叱咤し、見たいようで見たくないスコアが表示され。


 やったのじゃ


 右手で小さくガッツポーズした。


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