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激突!!御影対暗殺者


「爆裂地」


 ボブじいさんが、地面に斧を指していたのには理由がある。


 説得はするが、戦闘になるのを見越して、正攻法では勝てないと分かっているのでボブじいさんは事前に準備していた。


 地脈に自分の闘気を流し、御影の半径3メートル、深さ10メートルにどどめ、斧を引き抜くと同時に地面が崩れるようセットしていた。


 数秒でも隙ができれば、次の仕掛けに移ろうとボブじいさんは思っていたが。


「分かっていましたよ、ボブじいいさん」


 何もなかったの如く、まるで地面があるように御影は立っていた。


 極力悟られないよう、闘気を分からぬよう隠蔽していたが、御影は来る前から分かっていてあえてその場所に立っていたのだ。


 風魔法の応用で、まるで普通に地面があるかの如く歩き、御影はボブじいさんの次の出方を伺う。


「この化け物めが」


 初っぱなからあてが外れボブじいさんは悪態をつく。


 全く同様が見られない御影を見て、対人の戦闘経験も自分よりも豊富だと悟る。


 はっきりいって異常だ。


 これまで、依頼され、数え切れないほど殺した。サイフォンは天国にいると思うが、きっと自分は地獄に堕ちるだろうと思う。


 それほどボブじいさんの手は血で染まっていた。


 二十歳の御影が、ボブじいさんにそう思わせる。


 そのこと事態が自分でも考えられなかったが、これだけは分かった。


 きっと自分よりも修羅場をくぐり抜けてきただろうと。戦闘能力はあると思っていたが、よもや魔法も桁違いとわの。


 多分空中に浮いているのは風魔法で一番最初に覚えるウインドの応用だろうと、ボブじいさんはあたりをつける。


 ウインド自体は文字通り簡単な魔法だ。風をおこすだけの魔法で、昔はウインドは風の魔法の基礎となるため、じっくり熟練度を増してから次に移ることが多く、近年派手な魔法を好む学生が多いため、初級魔法を軽視し、ウインドの魔法ができたら、熟練度を高めることなく次にいく者も少なくない。


 同じ級の中でも威力は違う。その魔法の熟練度と威力によって。


 御影のウインドは、乱れもなく、まるで息をする様に、自分の手足の如く、自然に魔法を使っており、かなりの熟練度だとボブじいさんは判断する。


 戦闘科はもとより、魔法科でも、そこまでウインドを修練している者をいないだろうと思う。


 この時点で、魔法も相当の使い手だとボブじいさんは判断する。


 戦闘能力も一級品、魔法も凄腕。頭も切れる、まるで、どこぞの英雄か勇者のようじゃな。


 だからと言って、ボブじいさんは死ぬまで諦めるつもりはなかった。


 サイフォン見守っていてくれ。


 かっとボブじいさんは目を見開き、黄金と緑を融合したような気を纏う。


「生命力を代償とした気・・・・・・」


 嫌なものを思い出したかのように御影は顔をしかめる。


 御影はその気を知っていた。


 生命の気。生命力を代償として、五倍ほど全能力はあがるが、五十倍速で寿命が縮む諸刃の気。


 そこまで覚悟があるとは、それよりもその気を知っているとは、この世界にもあると、御影は考えてなかった。


 驚いた様にボブじいさんは御影を見る。


「知っておるかの。一応禁忌に分類されているのじゃが・・・・・・そして、儂かお主か勝つのは、どちらかが死ぬときじゃ!!!!!!!」


 そしてボブじいさんはサイフォンの形見の『狂戦士の兜』を修理したものを被る。


 勝負は一瞬だった。ボブじいさんはわけも分からずなにが起こったのか悟る。


 自分は負けたのだと。


「巨人の一撃」


 生命の気を纏っての、魂の籠もった、もっとも得意とする技、巨大な岩石ほどの大きさで、生命の気を纏った巨大化した斧が、御影を襲った。


「一閃四肢」


 残像だけで、そこに御影はおらず、音が聞こえたときは、地面にふらりと横たわった。


「やっぱり強いのうお主は」


 大の字になりボブじいさんは自らの敗北を認めた。


 致命傷ではないが、鎧のつなぎ目、両手足を一瞬のうちに突き刺され、もはや動くこともできない


「必要だったから強くなっただけですよ。何か言い残すことはありませんか」


 勝者がいれば敗者がいる。問答無用が多い中、遺言を聞いてくる御影の優しさに目を閉じる。


「この学園の闇は深い。お主は儂の様にそれにのまれるでないぞ。それからあやつらを頼む。あやつらも深い闇を抱えておる。特に・・・・・・」


「分かってます。後のことは任せてください。『仲間』である限り守ります」


「この小屋と共に死にたい。頼めるか」


「先にいって待っててください。俺が行くのも地獄ですから」


 そういって御影は、ボブじいさんを小屋の中に横たわらせ、小屋の屋根の上に、飲み込むような巨大な炎を出現させ。


「フレアインパクト」


「やっと解放させるのじゃ。この学園からも呪縛からも飼い犬の様な生き方からも・・・・・・サイフォン、愛してる。生まれ変わったらまた会おうぞ・・・・・・儂は最後の最後で思い出したのじゃ」


 最期のサイフォンの言葉をボブじいさんは思いだし、安らかな表情でそっと目を閉じた。




「私もボブの事好きだったよ。・・・・・・だから、あなたは私の事なんて忘れて・・・・・・この小屋に囚われないで、ぶっきらぼうだけど・・・優しいあなたのままでいてよ・・・・・・」



 プレハブ小屋はボブじいさんと共に跡形もなく消滅した。


 皆の中に思いでだけを残して。



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