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クラス替え試験02~三下対ボア~

 

 髪はリーゼント、額には白の鉢巻きに、服装は上下白の特攻服。


 それは三下の一張羅であり戦闘服であった。


 三下はとある人物の舎弟をやっていて、この学校に来たのも、その人物が入学していたからだ。



 三下はその人に憧れていた。



 三下は武器とか、からっきしだし、拳での喧嘩しか能がない。


 下っ端も下っ端で、その人がリーダーをつとめている族でパシリをさせられ相手との抗争で、最初の方でやられていた。


 しかし、リーダーは常勝無敗、抗争では負けなしで、何十もの学校からスカウトがきていた。


 俺は姿がかっこいいと思った。敵を蹴散らした後の後ろ姿が、硬派だが仲間思いの性格も、普段は照れ屋でサングラスをかけ目元を隠していることも。


 だから、こんなことでしか力になれないから俺は唯一の取り柄であるお調子者でたいこもちをし、リーダーが無口な部分をフォローしていた。


 三年前のあのころは、一番チームが輝いていた。


 しかし、崩壊はすぐそこまで迫っていた。


 忘れもしない二年前の春・・・・・・。







 改めて、三下は対戦相手のボワを見る。


 目指した人物に会うためには上に行くしかない。


 御影友道、四月に入ってきた実力ある人物に取り入ろうと何とか頑張って、ゴマをすっていたが、相手にされず、腐っていた俺にもたらされた最後のチャンス。


 へばりついてでも離れるつもりない。最も、最初の日、俺の短所、サボリ癖とあまりにもつらいことがあると逃げ出す癖が発動してしまったが、何とか残らせてもらったので結果はオーライだ。


 御影や舞先生も言っていて分かっていた事だが、三下には武器を扱う才能がない。それはもう壊滅的に。


 しかし、一つだけ、取り柄があった。


 まだまだ実力は低いが。


「へっへっへっ、おれっちが勝つぜぇー」


 Hクラスには通用すると確信があった。


 コインが地面に落ち、残虐な笑みで、ボワが動き出す。


「舐めとんのか、われっ!」


 射程距離に入ったところで三下は大音量で叫び、メンチをきる。


 一瞬ボワが怯み動きを止まったところに三下は喧嘩キックを放つ。


 腹に受けたボアは吹っ飛び、三下はダンシングヒーローの如く決めポーズで勝利を確信するが、御影はやれやれといった表情で見ている。


 三下には他にも欠点があり間が抜けていて、肝心な時にミスをする。


 現時点での三下は少量の闘気と低レベルな身体強化魔法、魔法で一番適正があった火の初歩的な魔法が、一週間でぎりぎり使えるようになった。


 それらのうち、二つでも使っていたのなら、先ほどのキックで勝っていただろう。


 しかし、三下は魔法を使う事を忘れ、闘気だけしか使ってなかった。


 結果。


「いてぇーじゃねっーか、糞塵の分際で俺様にたてつくなんてよ。再起不能になるまでギタギタにしてやっぜ」


 腹を押さえ、ダメージを負っているものの、ボアは立ち上がり、先ほどまでの余裕は消え、武器を構え、油断なく三下を見据えた。


「エッヘッヘッ、またやっちまったぜぇー。おれっちピンチ」


 思わず三下は御影の方を見るが首を縦に振っていた。


 拳や蹴りが主体な格闘家と武器を扱うものの違いは、リーチの長さだ。ボアは一メートルほどの斧を持っており、間合いは三下よりも長い。


 かわしたり、受け流したり、速度で間合いをつめればいいのだが、今の三下にはその技術がない。


 先手必勝。皆で今日の試験のことで話し合っていた時でも、最初の一手で、三つをフルに使い、全力を出して勝つ作戦だった。


 それが、駄目になった今、三下の勝ち目は薄いと御影は思う。


 しかし、三下の目はまだ死んでなかった。


 そこで、御影は思う。俺たちにも隠している奥の手があるのだろうと。


 実際三下に勝つ手段はあるにはあるのだが、恥ずかしすぎて、葛藤していた。


 そう考えているうちに、ボアが自分の間合いに入り、斧を振り下ろす。


 三下は横っ飛びでそれを何とかかわし、それからも続くボアの攻撃を不格好ながらも、のけぞったり、頭を抱えてしゃがんだり、腹を左右に動かしたりして、何とか避けきっていた。


 あまりのみっともない避け方に観客席から笑い声があがっていたが三下自信は必死だった。


 ボアは当たらない攻撃にイライラしながら何度となく、斧を振るっていたが、しょせんHクラス、練習も禄にせず、実力も低いため、徐々に疲れが見え始め、スピートが落ち、肩で息をいていた。


 この一週間、全体的な実力の上昇は三下が一番低かったが、異常にのびたものが一つだけあった。それは体力だ。


 闘気や魔力が低い為サポーターは着けていないが、種次やプゥより体力だけは数段あり、まだカティナや美夜には適わないが、差を縮めている。


 ボアが疲れているのに対し、三下は全く疲れておらず、呼吸も全く乱れていない。


 ここまでは予定通り?で、ここからだと三下は思っている。


 攻撃はしなければ相手を倒せない。時間切れはないが審判が引き分けと判断すれば、現状維持。つまりクラスの昇格はない。


 スピードは落ちていても、相手より早く攻撃できる自信は三下には無かった。


 ちくしょぉ~。やっぱりやるしかねぇーのかよぉー。


 三下は覚悟を決め、奥の手を使うことにした。


 リーゼントを両手で挟む。


「くらえ、リーゼントバレット」


 今度は闘気と炎を付与した、やけくそ気味の、三下のづらである炎を纏ったリーゼントがボアの顔面にぶちあたり、ボアの顔面が炎で包まれうずくまる。


 審判が直ぐに三下の勝ちを宣言し、炎を消し、闘技場に設置されている救護室に運ばれた。


 勝った、三下は今度こそ勝利のポーズを決めた。


「へっへっへっ、やったぜぇー旦那ー。おれっちHクラス昇格一番乗りだぜぇー」


 寂しくなった頭が恥ずかしいのか、三下はいつも以上にやけにハイテンションだった。


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