第五試練11
遅れてすいません。何とか5月中にこの章を終わらせたいなと考えております。
派閥もバラバラ、しかし、天音の誘惑魔法によって、統一した目的の元、動いている。
それは。
扉から入ってきたのは、二十人ほど。
しかし。
「「縦の型二、双牙」」
翼と風花の繰り出した剣狼が先頭を吹っ飛ばす。
「「バースト・ウェーブ」」
続いて出てきた敵を、水流とシンリィの複合魔法で弾丸になったみたいに吹っ飛ばされる。
御影使える複合魔法。見せてもらったが、二人はまだ『単独』では使えない。
しかし二人で得意魔法なら使えた。
それが炎水複合魔法『バーストウェーブ』。炎魔法の爆発力と水の範囲を兼ね備えた魔法。この学園始まって以来の複合魔法だった。
残った数人は各個撃破する。
圧倒的な力で、天音の刺客をねじ伏せた。
しかし本質は別にあった。
「何なの、すごすぎなの、金の匂いがするの」
そう、天音の狙いはフェリスに見せる事。
フェリスは金にがめつく、仲間は少なく、敵は多く、信頼より金をとる事は、情報から天音が導き出した結論だ。
御影はフェリスを守るため、『より安全な』所に移動させるのは、天音も分かっていた。
御影はフェリスと終年契約をしているため、この学園に残るために、フェリスの生死は非常に重要となってくる。
御影不在の今、『破滅の十二人』が攻めてくるかもしれない状況下で、一番安全な所はどこかと言えば、答えは仲間の所だ。
おそらく玲奈や雫もそこにいるだろうと天音は予想している。『誰が狙われるか分からない』今、信頼できる人達で集まった方が安全だ。
だから、天音はけしかけた。次の月の布石のために。
いかにフェリスに対し、このクラブが『金のなる木』であるかを思わせるために。
その作戦は半分成功していた。フェリスは即座に頭の中で計算する。
天音の予測が違った点が一つある。それは、極度の上昇志向だ。
それと同時にフェリスは、一と同じ、自身が当主となって、五代派閥にはいるための算段もしていた。
フェリスの計画では後二年ほどかかると思っていたが、舞先生からメダルはふんだくり、今日の光景を見て。
これは、チャンスが巡ってきたの。
敵を圧倒する御影の仲間達の活躍を目にしながらフェリスはそんなことを考えていた。
とうとうおれ一人になっちまった。
中級冒険者は一人ごちる。
まだ依頼を達成していない。あんなにいた冒険者も今では、戦えるのは自分一人だ。
他の会場にいるかもしれないが、それは希望的観測だ。
残りの二パーティーを見る。
勝てない。それぐらい男と圧倒的開きがある。
ここまで来たのも奇跡に近い。
両者とも次の戦いを考えているのか、こちらを見ていない。
眼中にないかのように。
負けるのは仕方ない。しかし男にはどうしてもやらなければならないことがあった。だから。
「あちらの人を指名する」
選んだのは御影パーティー。託せるのはそれしかないと判断した。
お題は『フリー戦闘』。どうやらダンジョンの意志も興味は次に移ったみたいだ。
男にとってこれは好都合だった。
御影と二人競技場の中に入る。
御影は開始と同時に決めるみたいで、男は待ったをかける。
「すまない、まずは話を聞いてくれ」
御影は訝しながらも、動きを止めた。
とりあえず、すぐに決着をつけられることはなさそうなのでほっとする。
「俺は冒険者だ。他の奴らは亡くなっちまったが、ここにいる大抵の人数はそうさ。ある依頼の元動いていた」
その言葉を聞いて、御影は納得する。聞いていた人数と余りに違っていたからだ。
御影は無言で続きを足す。
男は唾を飲み込む。依頼が達成されないと死ぬに死ねない。知らない人ばかりだったが、同じ冒険者。思いは託されていると男は思っている。だから願う。依頼失敗の汚点を残すより、誰かに託した方がいいと。
意志を持って、男は話し始める。
すべてを聞き終わり、御影の中で一連の流れがわかった。まるでピースの揃ったパズルみたいに。
なるほど、そういうことかと。
「分かった。その依頼、必ず達成する」
「ありがとう」
男は頭を下げ、あるものを御影に渡し、消えていった。
「第五次試練終了です」
ダンジョンの声が終了の合図を告げた。