第五試練06
とうとうこの時がきた。
心はすでに決まっている。
団の精神を揺さぶるにはどうすればいいのか。
まず初めに除外したのは中堅パーティー。勝てるかもしれないが、揺さぶれないだろう。
次に御影のパーティー。これは中堅パーティーとは逆で、あっという間に負ける気がする。それに御影には残ってほしかった。
次に花のパーティー。花とは実力が拮抗している。勝つ確率は六割といったところだ。花には憎しみの感情はない。只哀れに思う。天音にいいように扱われている。もしかしたら団と同じく誘惑y魔法にかかっているかもしれない。それに元仲間達に引導を渡すのは蓮の役目ではなく、それをすると団の心は回復どころか悪影響に思う。
だから。
「貴女を指名します」
破滅の十二人ナンバーⅨ候補の女を指名する。
指名された女はサディスティクな表情で蓮を見た。
「第十三試合は部位破壊戦闘です。ランダム選択された部位を両者に破壊してもらいます。ほかの部分の攻撃は禁止します。どちらかがその部位を破壊されたら、違う部位に変更になります。志望するかギブアップするか、気絶すると負けになります。受けますか、辞退しますか」
「もちろん受ける。じゃりが逃げるなよ」
そそくさと女が先に試合場に移動する。
蓮は元仲間と、御影を呼んだ。
御影は疑念など感じず、蓮の元へ向かう。
今際の最後の言葉だ。義理はないが望みがあるなら叶えようと思っていた。
最初はクラブ派の面々からだ。
「お前達には本当に迷惑をかけたと思っています。すいません」
漣は深々と頭を下げる。
「謝らないでください。本当のことが分かってすっきっりしています」
「そうですよ。思い残すことは何もないです。団さんを正気に戻してください」
本当はいいたいこともあるのだろに、漣にいらぬ心配をかけないように笑顔を向ける。
「ありがとう」
少し顔を下げ、蓮の声が掠れていた。そして気を取り直すかのように、懐から封筒を取り出し、御影に眼を向ける。
「御影、貴方に頼める義理はないのですが。僕の最後の願いとして聞いていただけないでしょうか」
「ああ、可能な限り叶える」
「もし団が正気に戻っていたら、これを渡してください」
御影は蓮から手紙が入った封筒を受け取る。
「確かに受け取った、正気に戻っていたら『必ず』渡す」
「ありがとう。では行ってきます」
その後ろ姿は、御影は異世界で見慣れたものだ。
この世界で、早々に見られるとは思ってなかった。
覚悟を宿し、死地にいく人物の目だ。
生き様を目に焼き付けるため近くで見ようと仲間に声をかけようとしたとき、連のパーティーが前を立ち塞がった。
そして許しをこう罪人のように頭を垂れ土下座する。
「なぁ頼む、俺を仲間に加えてくれ。死にたくねぇ~」
「いいや俺だ、あの餓鬼二人より力になる」
「俺だ。御影様、俺を選んでくれぇ」
「俺が一番序列が高い。御影、俺を選べ」
反吐がでる気分だ。だから一瞬で御影は気絶させる。
「お前らも来い。今から見られるのは、お前等より強いものの戦いだ」
「おっちゃ、わたしゅ行くぅ~」
「俺も前で見る」
ちびっ子二人は扉前の最前列まで行く。
「にゃーより強いなんて聞き捨てならないにゃー」
「影さんも知っていると思うっすが、今の実力は蓮さんより強いっすよ」
ニャルコと今日子は心外だと言わんばかりに反論する。
「そうではない。精神力と覚悟の違いだ。単純に武力だけで優劣がつくわけではない。でわ聞くが、何故先ほど辞退した。今日子、腹が破れるぐらい詰め込めば行けたはずだ。人の腹は五キロ程度では何もおこらん。その後出せばいい、恥も外聞も考えなければな。ニャルコはもっと簡単だ。我慢すれば行けたはずだ。それは俺ならクリアできると精神的に甘えがあったからだ。その時点で蓮に負けている。この戦いを見ればそれが分かる」
それだけ言って御影は黙る。
「ジャリが逃げなかったことだけは褒めてやろう」
「全身全霊を持って貴女を倒します」
「第一部位は左腕です。五秒後開始します」
第五試練で一番の壮絶で凄惨で、後の偉人達に影響を与えた戦いが始まりを告げた。