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初クラブ練習02


 一方一時間ほど走っている五人は、結構差が開いていた。最初は団子状態だった。美夜とカティナは、慣れないうちは集団の後方にいたが、何周かするとすぐに追い抜き、一時間もすれば何十周と差が開いた。まだまだ余裕があるカティナと疲れているが意地だけで追走する美夜、大分開いて、プゥと三下で、さらに差が開いて種次だ。


 プゥは耳が垂れウサギみたいに垂れてヘロヘロ、三下はだらだら、種次は倒れる寸前だ。


 しかしまだ終わりの合図がない。


「もう・・・・・・駄目なのだよ」


 とうとう種時が倒れ、そう時間はかからずプゥと三下も倒れた。


 三人は息を絶え絶えで呼吸するのもやっとだ。


「どうしたもう終わりか眼鏡」


「・・・俺の名前は・・・目垣だぁ・・・少し休ませて・・・ほしいの・・・だよ」


「それだけ言えりゃ上出来だ。三下とプゥも同じか」


「へっへっへっへ、もう限界だぜ旦那ぁ~」


「つ(疲れて死にそう)」


 種次の言葉にのっかるように三下とプゥは賛同する。


「なに甘いこと言っているんだ。死にそうといって、気絶したのか、骨が折れそうといって折れたことはあるのか、かのものの後ろに火を『ホーミング・リファイア』」


「あっちち」


 三人の後ろに火が出現し、あまりの熱さに、三人は走り出す。


「ほら、まだ力が残っているだろ。言い忘れたが、立ち止まったら体が燃えるぜ」


「こ(この鬼ぃ~)」


 プゥの言葉が皆の気持ちを代弁していた。


「大丈夫だ、体が燃えても、骨が折れても、気絶しても治してやるから」


 さてと・・・。


 トップ集団の二人に御影は目を向ける。幾分か余裕そうなカティナについて行くのもやっとな美夜。手を抜いているとはいわないが、温すぎると。



「ずいぶん余裕だなカティナ、美夜。もう少し重くするぞ。五倍重縛」


「くっ、きっついな」


「ここで加重はきつい」


 トップ集団も突然の加重で遅くなるが、そんなことを許す御影ではなく、プゥ達と同じ追尾型の火の魔法を放つ。


「なかなか鬼畜な事をするな」


 走っている人に檄を与えた後、元の場所に戻った御影に、舞先生は悪い笑みを浮かべる。


「あれぐらい普通だと思いますよ。まだまだ序の口にすぎないですからね」


「で、御影は何倍か教えて欲しいぞ」


 舞先生は、御影のサポーターを指差す。


 適わないなという表情で御影は答える。


「五十倍ですよ。舞先生も着けますか」


 片目をつぶり、不器用なウインクで新たなサポーターを取り出す。


「ああ、倍数は同じでいい。宜しく頼むぞ御影」


 サポーターをつけた舞先生にお望み通り御影は同じ加重をかける。


 舞先生は少し顔をしかめたが、くっつくことはなく平然としてした。


「さすがですね」


「おまえもだぞ」


「やっぱり私には理解できないよ」


 じっくりやる方法、プランターの草をのびる様に魔法をかけている風花は、呆れた表情と疲れた声で、狂人二人を見ていた。



 それから三十分後、ようやく御影が終了の合図をし、気を失った三人と崩れ落ちるように地面に突っ伏した美夜と片膝をつくカティナ。


「全く軟弱だぞ」


「初日ですし、一週間以内に最低でも三時間は走れるようにしますよ」


「皆さん大丈夫ですか。本当に、鬼畜すぎて同情します」


 全員を一緒の場所に運び、御影は疲労回復の範囲魔法放つ。


 そして、三人を起こし、こちらに注目させる。


「ひとまず、これで準備運動は終わりだ。まず実力をみたいから模擬戦を・・・・・・」


「やってられっかよぉ~、俺は帰るぜぇ~、あばよぉ~」


 三下は捨てぜりふを言い残し走り去った。


 三下はこばん鮫の様に御影にすり寄ってここまで来たが、こんなにもきついとは思っておらず、早々に逃げ出した。


「僕は、もう少し頑張ってみるのだよ」


「わ(私もがんばるよ~)」


「同感、ここで辞めたら意味はない」


「私は師匠に何処までもついて行くよ」


「ありがとな、まぁちょうどいいか、模擬戦はプゥと美夜、カティナと種次でやってもらう。ただし、サポーターはつけたままだ。それじゃ最初はプゥと美夜からだ」


「じ(上等、負けないからね)」


「私も負けない」


 目を合わせ火花を散らす。


 所定の位置に立ち、面白そうだと審判をかってでた舞先生の合図を待つ。


 プゥは短剣を、美夜は双剣の模擬剣をそれぞれ構える。


「始め」


 最初に動いたのは意外にもプゥだった。


 かなり早い速度で、美夜に接近して、しゃがみ込み、美夜の足を払いにいく。


 侮っていたわけではないが、予想以上の動きに美夜は少し目を見開いたが、バックステップで避け


、起きあがられる前にプゥの顔面に蹴突く。


 しかしプゥは横ステップでかわし、起きあがる。


「身軽」


「そ、み(そっちこそ、凄い身のこなしだよ)」


「そう。今度はこっちからいく」


 そこからは、まさに独壇場だった。


 舞を見ているかのように、優雅にそして苛烈に、駒のようにくるくると圧倒的な手数とともに美夜はプゥに迫る。


 プゥは攻める隙がなく、防戦一方の状態。


 俊敏性がありアクロバット等の軽業が得意だが、相手が悪く、ハンデがあってもなお、技のきれ、読みは美夜の方が圧倒的に上。


 プゥは避けきれず顔は腫れ、体中に何十も打撲で痣ができているが、プゥはまだ諦めていない。


「次で決める。剣舞六連」


 次の技のタメの空白時間。


 ここ!


 プゥはこの瞬間をねらっていた。


「う(ウーストライク)」


 足に全力の特化身体強化魔法と気を全力で込め、閃光のように美夜の喉をめがけ突く。


 やった・・・・・・と。プゥの眼からみてもとった・・・・・・と。


「残念。それは残像。さようなら」


 高速で振り下ろし、凪ぎ、振り上げの六撃。


「が」


 プゥの体が宙に舞い、気を失った。


「第一試合は美夜の勝利」

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