第三試練03
「ははは、あはははは、傑作だぞ御影」
舞先生がこんなに笑ったのは久しぶりだった。
御影が顔に見合わず、しぃーと言うジェスチャーをしたのも笑いの対象だったが、デールのはいよぉーシルバーは傑作だった。
子供ならではの無邪気さだ。
そして、人というのは醜いものだな。
他の派閥達も苦々しい表情で、御影の部屋の映像を見ている。
そこには、花と蓮以外命乞いをして取り入ろうとしている面々。
そこには派閥とか関係ない。誰だって命はほしいのだ。目の前に人参がぶら下がった馬の様に、群がる蟻のように、地獄に垂らされた一本の糸のように。
普通の人間は忠誠忠誠と言っても上辺だけだ。たやすくぐらつき、生の前には屈服する。お上が敵対しているとか関係ない。
みんな仲良く、我先にと飛びつく。生きるために。
それはしないのは、余程の覚悟があるものか、誰かのために、自分の犠牲をいとわないものか、洗脳されているものか、ただの馬鹿か。
団にはそれが届いているのだろうか。
舞先生は団を見る。
はじめからずっと沈黙していた。表情は無に近く、窺いしれない。
私には関係ないがな。
視線を移し、今日子とニャルコのモニターを険しい表情で見る。
ここが一回目の山場だ。
破滅の十二人と御影のいる部屋は確定だと確信していた。問題は三番目の部屋だ。
パーティー人数が二人だったら関係ない。
そのまま御影と同じ部屋に行ってクリアだ。
問題は五人以上だった場合。
この後の試練のことを考える三人以上は必ず必要だ。
そこが、御影の甘い所であり、英雄思考で、惹きつけてやまない所だ。この部分があるからこそ人はついてくる。
御影と今日子とニャルコで三人部屋に入れば、問題なく戦力を残してクリアできた。ロッポとデールの犠牲の元で。
しかし、御影が選択したのはロッポとデールを生かすため、戦力を分散することだった。
今残り三部屋は拮抗していた。
熟練の実力者ばかりだが、一番難易度が高い部屋二
実力者はいるが、他が足を引っ張っている四、五。
奇しくも難易度は違うが、出てきたモンスターを討伐することだった。
人数は二の部屋は十二人で難易度十二、ランク五十のモンスターをランダムで四十五体、&罠付き。
今日子達は人数六人で難易度六、ランク三十のモンスターをランダム二十四体罠無し。
部屋五は人数四人で難易度四、ランク二十五のモンスターをランダム二十体罠無し。
「にゃー、戦えけにゃー、なんでうちらばっかりにゃー」
「もう二部屋決まってる。つべこべ言わず全力でやるっす」
時間的にやばい。第二試練、同じ部屋にいたパーティーは、役立たず。蓮パーティーの二人は、一体を討伐するのにすごく時間がかかる。
だから今日子たちが半分に分かれて、高速で刈っている。
十分経って、残り三体。
ちょうど左端右端、中央に現れた。
中央に行くには二人とも時間がかかる。
だから。
「「おまえらもやれっ、やらないと死ぬっす(にゃー)」
賭だった。中央のモンスターを今日子やニャルコが倒せば負けると感じていた。だから信じることにした。
役立たずパーティーも蓮パーティーも、叱咤され近くの中央の敵を必死の形相で立ち向かう。
「ニャルコ・ザ・グレート・パンチ」
「デスサイズ」
紙一重の差だった。
三つの部屋を分けたものは、油断と信用だった。
五位は二の部屋。最後の攻撃で、気を抜いてしまった。必死ではなく、いつも通りの戦い方でいつも通りの攻撃。
実力者や上級パーティーは主戦場とするダンジョンのモンスターなのでなおさらそうなった。
慣れというのは恐ろしい、知らずにそういう部分はでてしまった。
そして、二つの勝敗を分けたものは、最後の攻撃だった。実力者達は最後の攻撃、無理をして、全体攻撃で残り三体を倒した。花パーティーの助っ人の力を使わずに。
対して今日子達は散らばって各自三体を倒した。
時間にしてレイコンマ二秒。
文字通り協力戦だった。自パーティーだけでなく他者のパーティーに託したからこそ。
「お疲れさまです。第三試練クリアしました。光っている扉から退出してください」
今日子達は勝てた。
はぁ~と精魂尽き果てたため息をつき、今日子とニャルコはハイタッチを交わす。




