第二試練08(新垣蓮サイド02)
どうする、どうすればいい。
他のメンバーは不安そうに蓮を見ていた。
クリア時間を逆算すればそろそろ行かなければならない。
残り二パーティーを見ると、動く気配はない。
まるで、蓮達が行くと予想しているかのように。
ⅦかⅧか。
そして蓮は選択した。
蓮は第Ⅷ部屋に行くことを選択した。
仲間の命を優先するより、自身の命を優先したのだ。
最も、できる限りはするつもりだ。
全員に聖防御魔法『セイントシールド』をかけ、付与魔法も重ねがけした。
これでシャドーウルフに対抗できるはずだ。
死臭がする。暗くてよく見えないが、やはり全滅しているらしい。
この部屋は、光は見えない。使った瞬間、キャンセルされる。
聖魔法の光も見えず、御影のように見えるわけではない。
それでも、学園に通う上位実力者。シャドーウルフの気配を正確に察知していた。
数は六体。前にきたパーティーがここまで減らした。
これならいけそうですね。
「相手の攻撃は必ずセイントシールドが防ぎます。落ち着いていってください」
蓮は安心させるようにいう。
メンバー達はゆっくりとセフティエリアから移動し、シャドーウルフに立ち向かう。
牽制するようにシャドーウルフはひっかくが、セイントシールドで問題なく防いでいる。
闇特化なので同じランクのウルフよりも少し足が遅く、一匹一匹を確実にしとめていく。
残り十五分、かなりぎりぎりだ。
「速く罠を見つけろ」
取り繕っている暇はない。蓮が大声で叫び、各人が散らばる。
見つけること事態は簡単だ。
武器をふるい、ピアノ線にあたり、手応えのあったものが罠群だ。
残り十分。
「こっちだ!」
仲間の一人が罠を見つける。
声がした方向に蓮達は向かう。
残り八分。
蓮はタメに入る。その間、他のメンバーはピアノ線の排除にかかる。
少しでも確率を上げるためだ。蓮の魔法でクリアできない場合は、ここで死ぬ。
残り六分。蓮は体中の魔力を吸い上げる。そうしないと、魔法の発動すらしないからだ。
平時でも発動確率は半々。でも、この魔法じゃなければ、クリアできないと、攻略を考えた上で出した
蓮の結論だ。
クラブ派にも学園長派にも、舞先生派以外、蟲毒の攻略情報ノートが存在する。先達が作った命の記録。
五代派閥の代表達が情報を提供し書き写したり、クリアした人物が書いたりと様々だ。
所々に涙後や血痕がある。そのノートは血と汗と涙でできている戦いの記憶。
そこから連日会議を開いて、蓮度を高めた。
別に蓮はクラブ派で出てもよかった。しかし団が女狐の天音にいいように操られているのが気に入らなかった。
団が変わったのは七月。団は気さくな男で、誰でもわけへだてなく接し、少なくとも決めつけ一方的に、一方の味方になるような人ではなかった。
しかし人が変わったかのように、天音の言いなりになり、蓮や花が何を言っても、聞く耳を持たなかった。
目を覚まさせるために、あえて隼人の味方についた。団の目を覚まさせるためだ。
しかし、覚ますどころか、蓮を追いやった。まるでもはやいらない人間だと言わんばかりに。
蓮と団は、学科は違えど親友でありライバルだった。お互いが切磋琢磨しあい、序列一位を目指していた。
しかし、連から見たら、今の団は牙が折れ抜け殻のようだった。
噂には聞いたことがある。天音に呼ばれた相手は魂を抜かれ、天音の下僕になると。
そうして団はクラブ派トップとなり、蓮は派閥を脱退した。
天音の思惑通りに。
蓮は、ここが死に場所だと思っている。
はなから勝てるとは思っていない。キューブ事件の時、直接対決していないが、御影とⅪの戦闘は見ている。最も拘束されていたが。
次元が違うと思った。比べるのもおこがましく、圧倒的に負けると。
そして、フェイルゲームでは敵同士だ。
諦めてはいないが、覚悟だけはしていた。
ここに来たのはただ一つ。
まだだ、もっとだ。
時間は四分を切った。
第二試練なんかでは死ねない。
残り三分。
俺の生き様を見せ。
残り二分。
団の目を覚まさせることだ。
残り一分
「オラクル・ホーリー・レイィィィィィ!」
魔力が規定まで貯まり、蓮は叫ぶ。団に届くように。自分の勇士を。
突き出した杖から、聖なる光線が音を感じるまもなくボタンを突き抜ける。
「時間となりました第二試練を終了します」
第二試練突破人数三十八人:(九チーム)
最速順
破滅の十二人(五人):クリア時間:十分
実力者パーティー(五人):クリア時間:一時間
上級パーティー一(五人):クリア時間:一時間
花パーティー(四人):クリア時間:二時間十分
中堅パーティー一(二人):クリア時間二時間十分
御影パーティー(五人):クリア時間三時間
中堅パーティー二(二人):クリア時間三時間
上級パーティー二(五人):クリア時間三時間
蓮パーティー(五人):クリア人数三時間