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第二試練06(由良木花サイド03)


 私が入学したのは、二年前の春。


 私の性格は引っ込み思案で、ここに入学するのは不安で不安で仕方なかった。


 私は次女で上に長男と長女がいる。


 二人ともこの学園に入学し、帰らぬ人となった。


 二人の遺品が帰ってきたとき、両親は冷たい表情で処分していた。


『弱い者はいらない』、『弱者は罪だ』。二人の口癖だった。


 本当は、親友が入学する学校に行きたかった。でも、それは許されなかった。


 何とかSクラスの魔法科に入学した。でも門を潜ると足が震える。この先やっていけるのだろうかと。立っていられなくなる。


「大丈夫ですか」


 そんなとき私は出会った。由良木花さんに。


 花さんは一見クールで冷たい印象だったが、面倒見が良く優しい。


 そんな花さんに引っ張られる形で、パーティーに入り、クラブに入り、派閥に入った。


 不安が楽しみに変わり、絶望が希望に変わった。


 引っ込み思案も少しは治ったと思う。相変わらず初対面の人や、天音さんの前に立つと緊張してしまう。


 当然つらく厳しいときもあったが、充実した毎日を送っていた。



 しかし、花さんの心を徐々に蝕んでいた。力になりたいと思っていても、私じゃついて行くのが精一杯でどうすることもできなかった。


 そして決定的になったのは生徒会に花さんが入った時。


 それ以降、花さんは笑わなくなった。そして私達を置いて先へ先へと。花さんの周りから離れていく人が多かったが、私は着いていった。こんな私を助けてくれた恩返しをするために。


 卒業まで残り半年。長いようで短かった学園生活ももうすぐ終わる。


 学園の卒業条件はすでにクリアし、クラスが落ちなければ卒業できる。


 両親も私に対して優しくなり、卒業を条件に三つ下の妹弟の入学先を子とも達が決めることを認めさせた。


『フェイルゲーム』には関わらなかった。なのに。


 今回のフェイルゲームは死亡する確率が圧倒的に高い。花さんは決まっていたが、後一人がなかなか決まらない。みんな怖じ気付いている。やっと決まっていた人物も、破滅の十二人のホテル襲撃事件があった次の日、心を壊した。


 はっきり言って、無理無茶無謀、命をどぶに捨てるような行為。蟻が象に勝つぐらいあり得ない。


 次のフェイルゲーム、絶対に御影のチームには勝てない。


 私は花さんを説得した。『死ぬようなものだから、でるのを辞めてほしい』と。


 しかし、聞き入れてもらえなかった。『天音様のために死ぬのなら本望です』と。


 短い人生だ。兄も姉もこんな気持ちだったのだろうか。妹と弟も私を慕っていた。


 ごめんね駄目なお姉ちゃんで。


 次に両親の顔が思い浮かぶ。


 私は見ていた。私たちが寝ているとき、二人が泣いているのを。


 両親も苦しんでいた。学園の中で聞いた話だが、貴族の条件として、子供を最低一人桜花学園に入学し卒業させることが条件だった。貴族の末端である私達家族にもそれはあてはまる。


 ごめんなさい期待に応えられなくて。


 それでも私は。



 クラブ長室、天音さんの元にいき。


「花さんと共に次のフェイルゲーム私も参加します」


 志願した。


 第二試練、ああやっぱりと私は思う。天音さんが私に対し言った指令は二つ。

『何としてでも花さんを守ること』、そしてもし第二試練でⅦの部屋に入ったとき、『グランデシャークの囮になること』だった。


 花さんは半々と言ったがあれは嘘だ。花さんは天音さんの言うことを信じているだけで実際は犠牲なしでは一割にも満たない。


 最後尾、私はエリアには行った後、私は微弱は光を魔法で放ちながら、横に移動する。


 身構えていたが、後ろから衝撃が来て私は意識を失った。






 声が聞こえる。そして気付く。あぁ、私喰われたんだと。


 左肩から先の感覚がない。もうすぐ命の火が消える。


 聞こえる。花さんの声が。目が掠れて見えない。


 でもよかった。無事だったんだ。


「さき、おまち」


「私も後から行きます。待っていてください」










 犠牲になった、私を慕ってくれた女の子の瞳を手で優しく閉じる。


 私もここで死ぬだろう。しかし私にはまだやらなければならないことがあった。


「行きましょう」


 待っててくださいね。あの世で楽しく過ごしましょう、あの頃のように。







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