第二試練04(由良木花サイド01)
花達のパーティーがいる第二試練会場では、まず話し合いが行われ、いくつかのルールが決まり、魔法契約書が交わされた。
一、公平に一パーティー二部屋、順番はじゃんけんで決め、一回目、二回目と行い、決まった後同時に入る。
二、早く終わっても勝手に部屋に入らない。他パーティーへの暴力、窃盗、殺人、害をなすことは禁止
三、一時間経過してもパーティーが帰ってこなかった場合死亡扱いとし、残った者達で続行する。一度他パーティーが入った部屋は失敗したとしても入れない
四、玉が同数の場合、部屋の数字が大きい者が勝つ。
以上がルールだ。一回目一番だった花達パーティー。相手の出方を見たかったが、決まってしまった者は仕方なく、無難に『Ⅲ』を選択。他のパーティーは『Ⅳ』、『Ⅴ』、『Ⅱ』を選択した。
結果は花達は一人も失うことなくクリアし、Ⅱを選択したパーティーも全員生還、Ⅳを選んだパーティーは一人失い、Ⅴを選んだパーティーは三人失った。
今の状況は
・花パーティー・生存人数五人(三個)
・パーティー一・生存人数五人(二個)
・パーティー二・生存人数四人(四個)
・パーティー三・生存人数二人(五個)
ここまでは、花の予想通りだった。次のじゃんけんで、一番か二番目に勝てれば、余裕でクリアでき、例え最後でも選択次第でどうにでもなる。
花が分析した感じでは、どのパーティーも平均ぐらい、中堅の冒険者で、Ⅵ以上はクリアできないように思えた。花達ならⅥならぎりぎりでいける。
しかしその時の花は分かってなかった。このルールの本質を、中堅冒険者がいかに『汚い』く『真剣』なのかを。
二回目のじゃんけんで花は三番目。順番は
一番:パーティー一
二番:パーティー二
三番:花パーティー
四番:パーティー三
パーティー一は『Ⅵ』を選択。パーティー二は『Ⅷ』を選択した。
やられた、と花は思う。残りは『Ⅰ』と『Ⅶ』。
ルールの時点で気づくべきだった。
初めから三つのパーティーは結託していたのだ。じゃんけんは油断させるためだ。一回目は三パーティーはわざと負け、先に選ばせる。二回目は勝ち、こちらから選ぶ。花達パーティーは両方とも不利な状態を強いられる。花は普通に行っていたが、冒険者達は、手を注視していた。拳の握り、手の開くタイミングなどから花のだすものを予測していた。パーティー三が負けたのは、もう勝ち確定だからだ。
他のパーティー達も、勝つための選択をした。
花は三つ見誤った。一つは先を見過ぎていたことだ。御影や、蓮や破滅の十二人との対決に重きを置きすぎて、第二試練で、どれもいなく、足下を緩めてしまった。
二つ目は見積の甘さ。一回目で無難な選択をしてしまった。一見堅実な選択に見えるが愚作だ。ここは学園ではない、文字通り命の取り合いをしている。それなのに『堅実』とは聞いて呆れる。
花自身、選択した自分を殴りたくなる。遙か格上ならまだしも、差はあまりない。だからこそリスク覚悟でⅥを選ぶべきだった。逆に言えば、Ⅵを選べば、労せず第二試練をクリアできた。仲間を失うのを覚悟の上なら。
三つ目は覚悟の足りなさだ。自分の命はとうに捨てる覚悟をしている。しかし、仲間を切り捨てる覚悟は弱い。一つ目と似たようなことだが、どうしても上との対戦まで、全員で行くことを念頭に考えている。だからⅥやⅣの試練の間は選択しなかった。何故なら天音から聞かされていたからだ。第二試練の部屋の詳細を。Ⅳの部屋は『死神の間』だ。ある意味一番簡単で、実力者達が嫌遠する。御影も注意してⅣの部屋には行かせなかったし、実力者達も破滅の十二人もⅣの部屋には行かなかった。何故なら、『死神の間』は一人を選択し犠牲になることでクリアできるからだ。一回目では誰も選択しないと思っていた。
その結果が、今だ。
情けなさ過ぎて、天音様に顔向けできません。
さらにリスクは高まった。おそらくⅧを選んだパーティーは誰も行かないまま一時間経過させるのだろう。仮に花のパーティーがⅠの部屋を選択しても、同点で最高クリア部屋で負ける。
第二試練をクリアするためにはⅦの部屋をクリアするほかなかった。
「Ⅶの部屋で」
そう言う他なかった。
「すいません、ミスをしてしまいました」
「いえ、私達のせいでもあります。花さんだけのせいではありません」
「まぁ、そう言うこともある」
「ちっ、行くぞ」
Ⅶの部屋は助っ人も含め、全員で行くことになった。