第一次試練
挨拶もそこそこ、ニャルコが来たと同時に、無機質な声が聞こえた。
「挑戦人数百名、これより第一試練を始めます。第一試練はパーティー決めです。ランダムで決まった人数で参加者はパーティーを組み、決まり次第扉からでてもらいます。第一試験で失敗することはありません。それでは発表いたします。扉上を見てください」
先ほどまで、残り時間と参加人数が表示されていた部分が消え、ルーレットの様に二~六が縦にまわっている。
だんだんと回転が弱まり、そして、表示された。
「パーティー人数は五人となりました。それでは第一次試練を開始します」
ぶつんと声が消え、御影は考える。参ったなと。
考えうるパーティー人数の中で最悪から二番目の結果だ。
四人までなら、御影と今日子で切り抜けられた。例え途中の試練が団体戦だったとしても二勝すれば、最悪代表戦まで持ち込めた。しかし五人以上になると、組む相手が重要になる。何故なら三勝が必要になるからだ。二人の他にもう一人、破滅の十二人に対抗できるような人物を。
とりあえず。
「組もうぜニャルコ」
「にゃ~、よろしくにゃ~」
ニャルコは安心したように尻尾を振る。
御影達はニャルコと組むことにした。元々、ニャルコをみた時点で三人以上なら組むつもりだった。第一次試練のパーティー決めで二人が選択されるのは少なく、次いで六、大体が三か四が選択され、五人はそこそこ珍しい。後二人。
しかしここからなかなか見つからなかった。
実力者は実力者同士でさっさとパーティーを組み、二つの連合も一人補充してこの場を後にした。三人組か四人組が多く、二人組はなかなかいない。ソロはいるがニャルコや今日子を見ると、断られた。御影自身も勧誘されたが、断った。
「なんにゃー、そんなによわっちく見えるかにゃ~」
「失礼しちゃうっすよ」
二人はもの凄く不機嫌だ。ニャルコは毛を逆撫で、今日子はダウナーモードだ。
ここにいる人数は二十人。門の上に表示されている。第一次試練のクリア人数と、全体の人数。そして既に『脱落者』もでている。
残っているのは、人数が合わず話し合っているものと。
まぁ、仕方ないか。
明らかに冒険者じゃないものだ。
その二人は周りからいないものとして扱われていた。
それもそのはず二人は冒険者じゃない、一般人だ。武器は持っておらず、防具すら着ていない。
「うぇ~ん、どうしょ~ロッボ~」
「泣くなよ、デール、大丈夫だ必ず最後には決まるさ」
そう、年端もいかない子供達だった。ある目的のため紛れ込んだのだ。
みすみすお荷物を抱えて挑む馬鹿はいない。全員が一枠をかけて命懸けで挑んでいる。
たとえ組んだとしても見捨てられるのがおちだった。
「俺の名前は御影友道だ。こっちは白波今日子とニャルコ」
見た所、六歳ぐらいの男の子に、四歳ぐらいの女の子。
「俺はロッポ、こっちは妹のデール。おっちゃんたち強いのか」
ロッポは妹のデールを庇うように立ち、精一杯見栄を張る。
他の冒険者なら悪手だ。生意気な餓鬼だと、最悪ボコボコにされる。
「そんじょそこらの冒険者より強い、それにもう残っているのは俺達だけだ。それよりもなぜこんな所にきた。死ぬ可能性が高いところだと知っているのか、妹も巻き添えにして、それでも兄か」
「ロッポをいじゅめないでぇ~、私がついてきただけだもん。おかぁさんの薬取りに来ただけだもん」
デールがむぅ~としながら、子供らしく御影にくってかかる。赤ちゃんが熊に立ち向かうようなものだが、御影は危害を加えるつもりはなく、子供に敵意を向けられ、どうすればいいか弱っていた。悪意には強いが、子供の純粋な感情には弱い。
「小さい子供を苛めるなんて最低っすね」
「にゃ~かしたにゃ~」
これみをがしに、二人は御影に軽口をたたく。二人の表情は柔らかい。
腹を括ったみたいだ。
良い仲間だ。この状況下でその選択をできるのは貴重だ。なにも言わず、暗に御影が言いやすいようにしてくれた。
「すまんな、ロッポ、デール。かわりに俺がきちんと送り届けてやる。母親の所までな。だから俺らとパーティーを組まないか」
「ほんとぉ、やくしぉくだよ」
「おう、よろしくな」
御影が屈んで差し出した手に、二人の手が重なる。
そして最後のパーティーが、第一次試練場を後にした。
第一次試験突破者:百人 残り人数:九十二人