表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/238

由良木花の日記

 

 四月××日。


 今日は始業式、私は三年になった。生徒会書記として、パーティーメンバーとして天音様を支えなければ。



 五月××日


 すべてが順調だ。天音様と生徒会内の派閥争いをしている一に対し数段優位にたっている。ダンジョンもすでにレベル六十台に入っている。本来なら去年レベル七十台を視野に入れていたが、パーティーメンバーを二人失っている。天音様の恋人と親友をダンジョン内ではなくフェイルゲームによって。


 今の所どこも仕掛けてはこない。今年の新入生代表で藤島家長女の玲奈も派閥とクラブに入ってくれた。素直すぎるが、天音様を尊敬しているなかなか見所のある人物で、次代を担う貴重な人材だ。共に天音様を支えていけたら。



 六月××日


 学年始まって以来、初めての事が起きた。編入試験で指揮科を除く全学科で最終試験を突破者したものが同日に現れた。天音様の命令ですぐに調査したが、そろいもそろって曲者揃いだ。


 特に戦闘科の最終試験を突破した御影友道。あの癒杉舞先生の試験を。二年前の入学試験、同じく癒杉先生が教官だったが、私ですら三次試験突破が限界で、最終試験に挑んだのは天音様と五条団だけだったが、突破することができなかった。あの天音様ですら突破できなかった試験を突破した者、しかも経歴が一切分からなかった。危険だ。だから、私たちと同じように0クラス入学に決定した。これで一年ほどは浮かび上がれないだろう。それに契約者はあのフェリスだ、欲を言うなら、退学した方が良かったが、チュートリアルダンジョンをクリアした。悪運の強い奴だ。



 七月××日


 最近良いことがない。


 先月ボブさんを使った作戦も失敗し、玲奈の暴走により学園長派は窮地に陥っている。そして今月のフェイルゲーム。私達は『直接』争わなかったが、教会派と貴族派が敗北を喫し、癒杉先生の陣営が一人勝ち状態。


 私達学園長派も、玲奈の賠償とコインを癒杉先生からもらうために随分不利な契約を飲まされた。


 天音様も、苦慮している。それもこれも全部御影が悪い。頼むから死んでくれ。



 八月××日


 相変わらず悪いことだらけだ。生徒会内でも最近失態続きの天音様に変わり一の陣営が優位に立った。この裏切り者達め、私はなにがあっても天音様について行く。天音様は大丈夫だとおっしゃっていたが心配だ。しかし、先日とうとう天音様達学園長派が癒杉先生を出し抜く事に成功した。ざまぁみろ、天音様の力を思い知ったか。不利な条件を全部破棄し、大量のコインとこちらに有利な条件をもぎ取った。その事で癒杉先生の陣営と完全に敵対してしまい、玲奈も失ったのは痛いが、しばらくなにもできないないだろう。皮肉だが今回は御影のおかげだ。今まで書き殴っていたが一回ぐらいは感謝の気持ちを書こう、五文字だ。「あ・り・が・と・う」



 八月××日


 信じられなかった。信じたくはなかった。天音様が危険視されておられるが、まだ三ヶ月前に入ってきた新入生と実力を軽視していた。


 実力が違いすぎる。『破滅の十二人』幹部が学園に潜入している事に絶句したが、さらに他の幹部を倒した御影は、もはや学園生の枠ではない。各国も競うように自国に取り込もうとしている事だろう。そして、持っている手駒は想像以上。何でこんな強い男がフェリスと契約したのか謎だ。


 それよりも何よりも、とうとう、とうとう、天音様と結ばれた。


 入学したときから、ずっとずっとずっとずっとぅっとずぅっと好きだった。天音様には恋人がいたから秘めていた。


 幸せだ。いつ死んでもいいくらいに。



 八月××日


 おそらく今日が最後の日記になるだろう。今日のフェイルゲームで死ぬ可能性が高い。運が良くても五体満足ではいられないだろう。


 天音様の力になれるのだ、後悔はない。別れは昨日済ませた。一時間後に仲間とともに特殊ダンジョンに向かう。見送りはなしにしてもらった。会ったらきっと泣いてしまうから。


 最後になるが天音様に遺言を書きたい。


『天音様、花はこの三年間本当に幸せでした。恨んでいません、憎んでもいません。この命、天音様のために使えて嬉しく思います。

 愛してします天音様。願わくば、天音様が幸せでありますように』


 花は書き終わり日記を閉じた。最後のページは、涙で滲んでいた。


 気持ちを整え、既に昨日までに整理した部屋を眺め、出て行く。







 そして、残酷で悲惨で狂気で狂喜で狂乱な結末のフェイルゲームが始まろうとしていた。





この話より第五章後半戦がスタートしました。


頑張りますので応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ