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夜にて13

 時刻は深夜、ホテル内も消灯時間となり屋上は立ち入り禁止となっているが、御影はそこにいた。


 あれから二時間ほど説教し、ふらふらになった五人を見送った後、舞先生と小一時間、交渉の経過と決まった事を教えてもらい、『待ち人』がいるここに来た。


「遅い」


 やれやれといった感じで、仮面の女、破滅の十二人、ナンバー十一は姿を現す。


「すまないな、色々と忙しかった」


 御影が軽い謝罪をして、本題に移る。


「これが約束の報酬だ」


 そう、『破滅の十二人』幹部の襲撃は仕組まれたものだ。あの時、キューブ事件で、ナンバーⅪと交渉し、通信魔道具に連絡先を交換した。


 そして、ここに来ることが分かったとき、舞先生と計画を立てた。


 破滅の十二人の幹部を生け捕りにすること。キューブ事件で各国にかりを作った舞先生。それを相殺するためには、なにかしらの貸しで相殺する必要がある。


 そこで生け捕り作戦の計画を立てた。


 御影がリゾートエリア全域をうろうろとすれば、各国のスパイに情報が行きなにかしらのアクションがあるだろう。


 元々、夜のラウンジで各国の重鎮とあうつもりだった。もし昼に会った場合、夜のラウンジで話し合う約束をするつもりだった。


 そして、破滅の十二人幹部の襲撃を撃退し、その場で交渉を行う。


 それが今回の作戦。


 そこで、Ⅺと交渉した。


 依頼は二つ。


 一つは幹部の誰かに御影達がいる現場を襲わせること。


 Ⅺが敵対しているものや、毛嫌いしているもの、誰でも良いと言った。



 御影がⅪに向かって投げる。依頼一の報酬だ。


「収納袋だ。その袋に全部入っている」


 また、高価なものをとⅪは思ったが、何も言わず中身を取り出し確認する。


 今回依頼一は二つ返事で了承した。


 ナンバーⅨを毛嫌いしているものはたくさんいる。


 特殊能力の厄介さと、幹部同士の不文律で、どうにもできなかっただけで、外部の人間が倒すなら何ら問題がない。


 今回の件で、ナンバーⅡが協力してくれたのは大きい。


 幹部の中で女性は三人、ⅡとⅦと十一。


 特に穏健派で話しやすいⅡとは協力関係にあり、同じくⅨを毛嫌いしていたため、快く引き受けてくれた。


 Ⅸに情報と、ここに来るよう誘導したのはⅡだ。


 Ⅺはもう一つの依頼にかかりっきりで、当日の見張り以外関わっていない。


 只、見返りとして何処から聞きつけたか、御影に貰った『魔法のお盆』を要求され、今Ⅺが持っている分と、今回の依頼料として貰ってくるよう言われたのだが。


 うん、Ⅱにあげてもあまりがある。


 Ⅱに取られ、お盆の数は二個となってしまったが、要求された数をあげてもあまりがある。


 そして、御影が着けている指輪が五つ。十分すぎるほどの報酬だ。


 ナンバーⅨは、ほとんど自宅にこもりっきりで、有益な情報を持っていない。それに、話せばその瞬間に死ぬようになっているため、捕まったこと事態はあまり気にしていない。


 毛嫌いしていたものが居なくなり椅子が一つ増えたのだ。Ⅺはせいせいしている。


 Ⅺは御影に、ある資料を渡した。


「読み終わったら返して」


 軽く頷き、御影は資料に目を通す。


 色々あるが、破滅の十二人の情報を持ち出すとき、とある機関の許可があればルールに抵触しない。


 それは依頼するときに、Ⅺに確認した。


 依頼の二の依頼料は出来高なため、Ⅺはきっちり仕事をこなした。


 根回しでできたかりと結構な金額を使ったので、Ⅺはかなり期待していた。


 最も依頼一の依頼料で元は取れているのだが、それはそれこれはこれだ。


 御影にとって、Ⅺが持ってきた資料はかなり有益だった。


 これでかなりピースは揃ったと。


 

 Ⅺに資料を返し。


「これが報酬だ」


 それは、予想を斜めいく報酬。


「どういうものなの」


 Ⅺでさえ、そんな事を言ってしまったぐらいの報酬だ。


 それは、二つ目の収納袋に入っている代物。


 五百mlのペットボトルに入った虹色の液体が二十本。


 Ⅺはどういうものか分からなかった。


 珍しい変わった飲み物じゃ、割に合わないと、暗に言っている。


「それは、『アムリタ』と言って、回復薬だ。飲めば手足の破損、骨折、火傷や傷を再生し病気にも効果があり、呪いや刻印系にも効く。一本で大体五十人に効果があり、薄めると効果が下がるのでそのまま使ってくれ」


 Ⅺは驚き御影を見る。


 なんてものを、報酬にしたのだと。出来高だと言った自分を呪いたい。


 御影にしてみれば、あっちの世界であった最高級回復薬を、自分なりにアレンジしたもので、材料は亜空庫にまだまだあり、後数百倍は作れる。


 こっちの世界にしてみれば、そう言った回復手段は『星の奇跡』しかなく、御影の言うことが本当ならレベル六~七に相当するもので、買いたくても買えず、国宝級で厳重に保管してある。


 破滅の十二人でも、国やオークションを襲撃して、二本ほど所有しているが、幹部ですらなかなか入れないほど危険な場所に保管している。


 それが二十本、しかも『星の奇跡』より大きく、大人数に効果がある。


「どうした?それじゃ不満か」


 固まっているⅪに声をかける。


「不満じゃない」


 仮面の下で口を尖らせ、余裕そうにしている御影に対しむっとしながら袋に全部入れる。


 収納袋もくれるそうだ。気前が良すぎて怖いくらいだ。


「追加の依頼は」


 またどこからか聞きつけ、渡すときに、半分ぐらいとられるとしても報酬が多すぎる。


 だから追加の依頼があるのではないかと思った。


「それなら」



 やはりあったらしく御影は依頼を口にする。あっちから言ってくれて助かった気分だ。舞先生にも追加の依頼料ぐらいはあると言われたが、あまり価値が分かっていない御影は半信半疑だった。


 舞先生がくると相手に警戒させるため御影一人できたのだが、相手から言わなければ、追加の報酬を出して、依頼をするぐらいに思っていた。


 御影の依頼を了承する。今回の依頼は比較的簡単なものだったからだ。


「通信で聞いている者にもよろしく言っといてくれ」


 帰ろうとしたⅪに御影はそう言う。



「何のこと」


 通信は全部切っている。Ⅺは訝しげに答える。


「ああ知らなかったのか、服の襟部分に通信機が仕込まれている」


 てっきり、Ⅺの味方が聞いているとばかり思っていた。


 Ⅺは襟部分を確認にがっくりとしながら帰って行く。これがあるからⅡには筒抜けだったと。





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