夜にて06
御影はⅨを見る。
仮面からはみ出るような肉、体もでっぷりと太っている。
贅肉だらけで、戦闘に適した体ではない。
なのに御影の観が、肌が強者だと言っていた。
「ぐふふ、よくも仲間を多をしてくれたななな。おまえらにようはないんだな。げへへっ、大人しくサーシャちゃんとマルーンちゃんを渡してくれたら見逃してやるんだな」
腹を揺らしながら、俺が偉いと言わんばかりに要求する。
「渡す気はない」
警戒しながら、御影は言う。
Ⅸもそういうと思っていた。
このでぶっとした体になってから、侮られることの方が多い。
元々は特殊系第一級魔術師で、鍛えてはないが、中肉で太ってはなかった。
しかし、『特殊能力』を授かってから状況は一変する。
献饌をやめ、食っては寝てと堕落した生活をおくる。趣味は『美女漁り』。たまに仕事や噂を聞きつけては部下を使って、捕まえ悪さをしている。
だから、この部隊は人気はなく、特に女性幹部から毛嫌いされている。
実際、Ⅸは勝負を挑まれることが多い。しかし、挑戦者達を屠ってきた。
Ⅸは特殊能力に絶対の自信を持っていた。
神から授けられた奇跡の力だと。
「ぎゅふふ、だったら死ぬんだなぁぁ」
Ⅸは特殊能力を解放する。
『腐敗の魔眼』。Ⅸが見た光景全てが腐敗する。
これがあるから、Ⅸの地位にいる。
ぎゅふふ、死んだなぁ~。
テーブルや椅子が腐り落ちていく。Ⅸは勝利を確信し、舌なめづりをする。
ぐふふ、どうしてやろうかなぁ。
このままでは、二人の美女を見れないとⅨは魔眼をきる。
「どうした。まだこないのか」
「ばっばっばかな」
平然としている御影にⅨは腰を抜かしそうになる。
死んだはずだった。魔眼の力は絶対なのだ。なのになぜ生きている。
たらればをあげたらきりがないが、もしⅪやⅥに御影の情報を聞いてたなら、ここに来なかったであろう。
Ⅸは幹部を始め、魔眼を対処できる人間との戦闘を避けてきた。
もう一つはたいじょう過ぎて、ここ十年の世間の情勢を知らなさすぎた。
「私達に魔眼は効かんぞ」
舞先生が同じ『テーブル』にいる事を。
そのつけがいま回ってきた。
くそっくそっ、こんなの聞いてないぞ。
Ⅸははっとする。そしてようやく気付く。
自分は嵌められたのだと。
くしょくしょ、この俺様をはめやがってぇ~~。どっどうにかしてこの場を乗り切らないと。
既にマルーンとサーシャは諦めた。
Ⅸの頭は逃げる事しか考えていない。
こんな事もあろうかと、別働隊を放った。もうそろそろ何か連絡があるはずだ。
「あ~大将、『破滅の十二人』の構成員らしき男達が襲ってきたから、風花達と一緒に返り討ちにしてやったぜっ~、ってこいつが幹部か、あまり強そうには見えねっ~な」
翼と風花、今日子、プゥ、シンリィ、デジ子、水流に雫の姿もあった。
Ⅸの誤算は二つだ。
別働隊に直属舞台を入れなかったこと。
本命に注力しすぎて、下っ端の下っ端達しかいなかった。
本来ならシンリィや水流の実力なら勝てる相手ではなく、デジ子は非戦闘員なので足手まとい。一緒にいた今日子が即座に倒したが、直属部隊がいたなら、今日子も手が足りず危なかった。
それは翼も同じで、相手が弱かったため、風花を気にかけながらも問題なく対処できた。
そして、御影達の実力を見誤った点だ。
もはや、Ⅸは袋小路状態で逃げ場はない。
もういいぶぅ~~~、どいつもこいちゅもこけにしやがってぇぇぇ~~。
全部くちゃらせてやる。
「死ねぇぇぇぇ」
Ⅸは解放しようとするが、視界が無くなった。
遅れてぼろりと何かが転がる。
それはⅨの目だった。
「ぎゃぁぁぁぁ~~俺の目がぎゃぎゃぎゃ~」
あまりの痛さにⅨはのたうち回る。それは久しく感じなかった痛み。
戦闘の観すら無くなった、Ⅸの末路。
「堕落した人間の結末だ。死ぬまで反省するんだな」