夜にて05
「おいっ、本当かよぉ」
アルバーンは虚勢を張りながら言うが、尻尾を挟んでいるため、格好悪い。
「はい、可能性は高いと思います」
「私もそうだと思うぞ」
御影の言葉に舞先生が同意を示す。
「自分らなに言ってんのか分かってるん」
「本来死ぬと同意の言葉です。ここは自分のホームじゃありませんから」
サーシャとマルーンが非難の、逃避の言葉を出す。
信じられないのか信じたくないのか、おそらく両者だろう。自分の陣地なら、やりようはあるが、今は全てが心許なく、不安で仕方ない。
「御影君、舞さん。君達二人は、現状を打破する作戦がある。そういうことですね」
こんな状況下でも、純一は冷静に判断する。伊達に長年総理大臣をやっていない。
「ここの障壁内は安全だと思いますので。動かないでください。舞先生は後ろをお願いします」
「了解だぞ」
時間が余り残されていない。既にナイフを持った集団は後数十秒でやってくる。
舞先生を除く他の四人は戦力的に使えないと判断し、言葉より行動で示す。
御影と舞先生は障壁から飛び出す。
獲物は既に持っている。
御影を飛び出した瞬間、すさまじい量の弾幕が御影を襲うが、気で守っているため傷一つつかない。
「傷を付けたかったら、ミサイルでももってこい、餓狼槍」
剣術を槍術にアレンジしたもので、風花がだした餓狼よりも大きさは二倍ほど違う。
餓狼は前方にいる五人を喰らった。
誰が見てもわかるほどの即死だ。
加減はしない、相手は犯罪組織の下っ端、生かす価値もない。
さすがは破滅の十二人といったところか。
仲間が殺されても一子乱れず、襲ってくる。
御影は次に技を繰り出す。
「紅蓮華」
囲むような陣形の敵に、紅蓮の気が乗った槍を振るう。
防御の構えをとった敵達は、何もない事で、一斉に襲いかかる。
「紅蓮の火に焼かれろ」
敵の内部に入った火は体内から燃えさかり消失する。
やはり下っ端か。
紅蓮華は、敵の体内に御影が作り出した紅蓮の華を入れることで、内部から燃やす技で、極力見えないようにしているが、実力者なら、簡単に見られ避けられる。
これが見えなかったという事は、大した実力はないと御影は思った。
最も襲ってきたものの実力は玲奈と同等かそれ以上なのだが。
舞先生もすでにかたずけたみたいで、御影の隣にたっている。
ラウンジにいる人間は避難したか、死んでいるかで、残っているのは、御影達六人と敵の三人だけだ。
奥にいる人間の一人は顎で指示し、二人が前にでた。
どうやら専属部隊の方が相手をするようだった。
御影は仮面を確認する。
ナンバーは『Ⅸ』、どうやら学園にいる人物とは違うみたいだった。
「どうして襲ってきた、誰を狙っている」
御影は質問するが答えない。
変わりに、短刀が飛んできた。
それを御影は避ける。
刺さった部分がどろどろに溶ける。
「腐敗刀か」
何か嫌な予感がして、受けようと思ったが、急遽避けることに変更した。
口元だけだが、仮面の男はニヤリと笑った。
御影に接近し、霧を噴出する。
腐霧だ。これをくらえば、誰でも全身が溶ける。
Ⅸ達の目的は御影ではない。後ろにいる四人だ。
各地に潜り込んでいるものからの情報で、国のトップ四人が集結していると聞き、Ⅸ達がやってきたというわけだ。
癒杉舞も来ていると分かっていたが、Ⅸは勝てる自信があった。
あいつは誰だ。
Ⅸは御影をみる。情報はなかった。学園にいるⅥとは馬が合わず、帰ってきたⅪに聞いたが、いつもの如く無視された。
俺の方が格上なのに失礼するぜ全く、ぶち〇してやろうか。
憂さ晴らしで参加したが、こんな人物がいるとは聞いてなかった。
御影は腐霧をかわし、部下は槍で貫かれ胴体と足がわかれていた。
舞先生の方にいった部下も、首に鞭が巻かれ紫電で焼かれていた。
ほんっと使えねー部下だ。まぁいい、俺さえいれば『必ず』勝てる。