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夜にて03


 びしっとしたスーツで、どこにでもいる紳士的な白髪の老人の様に見えるが目の奥が鋭い。


「桜花国総理大臣の水田純一です、噂はかねがね聞いているよ。近い内に会いたかった」


「御影友道です。宜しくお願いします」


 それだけ言って御影は握手を交わす。


 純一は前の三人の様とは違い、何もしてこなかった。それがかえって不気味だ。


 もしも国のトップとあった時の対処の仕方を御影は舞先生に学んだ。その中で一番気をつけなければならない相手として、桜花国の総理大臣の純一の名ををあげた。


 一見無害そうに見えるが、辛抱強く、相手の話を聞いているようで、最後には純一の思い通りになっている場合が多い。


 押しが弱いようで、じわじわと押してくる。交渉事では粘り腰で、舞先生も何度となく負けていると聞く。


 総理大臣の在籍日数は既に十年を越え、政治家になってから三十年は経っている。先の三人よりも長く、経験も豊かだ。


 下手なことを言えば簡単に絡め取られる。


 だから、御影の言葉は少なげだ。


「緊張しなくてもいいですよ。ここは公式の場ではない。もう少し楽にいこう」


 そう言って、純一は御影の肩を軽く叩く。


「今夜はVIPルームを予約しました。宜しければ皆さんもご一緒にいかがでしょうか」


 ちらりと舞先生の方を見ると頷いていた。


 どうやら拒否権はないらしい。


「喜んでいかせていただきます」








 翼は退散できて良かったと思った。


 途中で各国の重鎮達と擦れ違った。


 あのままいれば、魑魅魍魎達との酒宴だ。正直ごめん被りたい。


 まぁこっちもこっちで、むず痒いのだが。


 翼達はホテルの屋上にいた。


 夜は星が綺麗で、デートスポットとしても有名だ。


 二人組、雫と風花に拉致られたあと、屋上に行き、雫は『ごゆっくり』と姿を消し、今は風花と一対一だ。


 あ~聞いたんだろうな。


 翼の素直な想いを口にしたが、本人が聞いているほど恥ずかしいものはない。


 でも、ほっとしているのも事実だ。


 期待を持たせるよりかは、すぱっと諦めてもらった方がいい。


 二人はベンチに座って星を見ていた。


 どこか緊張した空気だ。風花は何か言わないとと思っているが、何も言葉が浮かんでこない。


 こんな感覚は初めてだった。


 風花は極度の人見知りだった。


 学園に入ってからある程度改善されたが、今も初対面の人と話すと緊張して上手く話せない。


 それは御影の時や、0クラスメンバーの初対面の時でも同じだ。


 翼との初対面の時、風花が感じた事は『近所のお兄ちゃん』だった。


 最初は敵同士だったのに不思議な感覚。


 最初から遠慮なく言葉が出せ、全力でぶつかっていけた。命のかかった戦闘だったので、それは当たり前かもしれいが、味方になってからも兄貴分的存在で、一緒に成長できて、嬉しかった。


 御影は遙か上の孤高の様な存在で、そういう対象に思ったことは一度もない。師匠として尊敬しているが、他の人たちも教えているため、付きっきりというのは少なく、翼が来てからは、翼に教わる時間の方が長い。同じ刀使い同士、二人三脚で頑張ってきた。


 何時からだろうか。気持ちの変化を自覚したのは。


 その答えは分からないと風花は思う。気付けばそうなっていた。恋愛なんてそんなものだ。友達の事をある瞬間から好きになったり、先生、上司、師匠、同僚、の事をある日を境に好きになったりと人の感情はいつも突然だ。


 だから何時かなんて分からないが、今の感情はいえる。


「聞いていたと思うが、すまねぇな。おまえの気持ちに答えることはできない」


 翼の方が一まわりほど年上だ。だから、翼からきりだした。年上としてのせめてもの誠意だ。


 それを黙って風花は聞く。そして言葉を選ぶように口を開いた。


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