夜にて02
にこやかに翼を見送った三人は、さてとと、警戒する。
翼が拒否しなかった理由、御影がキューピット目的だけでなく、護衛の意味合いもあった。最も、占める割合の大多数は『面白い』からだが。
舞先生と御影が座らないのを不思議に思った岬だったが、少し遅れて気づく。
何かが変だと。
一見普通な感じだ。
このラウンジは人気で予約しないとなかなか入れず、今もテーブルやカウンターも一杯だった。
しかし警戒する気配を感じる。
誰かじゃない全員からだ。
お客も給人もシェフも。
まるで警察の張り込み捜査みたいに。
翼達はすんなりと帰って行った。
ということは、この『三人』のうち誰かが出て行ったらまずいのだ。
「人気者だな、御影」
「俺だとは限りませんよ、舞先生」
御影と舞先生はお互い譲り合っている。
何にしても厄介事はあるということだ。
やってやれないとばかりに、御影と舞先生は座り、強い酒を注文する。
岬は『巻き込まれたのは私なんですけどね、このあほ影』、と思いつつちびちびと飲んでいた。
それは当然やってきた。
「おっ、舞じゃんかよぉ~、同じホテルに泊まっているのか、そうだよなぁ~、ここはホテルに泊まっているから入れないからな~。こっちで一緒に飲もうぜ」
白々しく絡んできた男。歳は三十半ばの猫族の美男子。
どことなくニャルコに似ていた。
どうやら足止めをくらっていたのは舞先生のようだった。
ホール全体がほっとする空気になる。
「みての通り、あいにく、仲間と飲んでいる。お呼びじゃないぞ」
舞先生は、眉をしかめ、嫌そうな表情で拒否する。
「あっ、この獣森国国王の『アルバーン』の誘いよりも大切なことかよ」
初めて視線が御影にいく。
二つの視線が交差する。
アルバーンは直感する。こいつは強いと。そして例の人物だと。
「あっ、おめぇが御影か」
「そうだが」
「ニャルコのやろぉーが世話になったなぁ~。特別に結婚を許してやるぜぇ~。感謝しろ、俺がここまでいうのは珍しい」
もう決まったと言わんばかりに、アルバーンは話を進める。
「すまないが、その気はない」
「ほう、私がいる場で引き抜きとは感心できないぞ」
「そうそう、抜け駆けは禁止やで」
「そうですよ、協定で決めたはずです」
来たのはアルバーンだけではなかった。
二人の美女が乱入してきた。アルバーンは舌打ちする。
一人は金髪のストレートに、狐目、スタイルは抜群でグラビア体系、もう一人は黑髪のストレート、かぐや姫の如く神神しく、おしとやか系の最高峰。
「うちは四王連合商会長のサーシャちゅーもんや、君が御影はんやな、噂に違わず良い体してんなぁ~、お持ち帰りしたいわぁ~」
「だめですよサーシャさん、機理国大統領のマルーンと申します。御影さんを是非お招きしたく存じますが、舞さんが睨みを利かせていますので、今回は顔見せに来ました。それぐらいの権利はありますよね舞さん」
あんに、この間のトップ会談の事を言っていた。
そう言われては、舞先生も拒否することができない。
「この間のキューブ事件で協力してくれた者達だ」
舞先生が御影に耳打ちする。
二人とも最低限の礼儀は兼ね備えている。
「御影友道です。この度は自分を救ってくれる協力をしていただきありがとうございます」
御影は頭を下げる。
「かったいわぁ~、そこは握手屋で握手」
「そうですね、その方がいいです」
「けっ、男と握手なんざやりたくねーんだけどな」
手を出す三人に御影は握手する。
サーシャは豊満な胸を押しつけ、『魅惑の摩眼』を使ってきたが、御影には効かず、マルーンは接触からの解析の摩道具を使ったが、故障したかのように動作しなく、アルバーンは力勝負を挑んだが、やんわりと同程度の力を加えられた。
三人は驚く、顔にはでてないが内心で。ファーストコンタクトは御影の勝利で終わった。
舞先生も、三人が何か仕掛けてくるとは分かったが、気にしてなかった。御影なら何とかするだろうと。
「私の国の学生にちょっかいを出すのはいけませんね」
そして最後の大物がやってきた。