海にて17~最高級エリア08~
時刻は夕方六時。
疑似夕日が沈みかける頃合い。
ボルや守も合流し、三下も目が覚め、全員でコテージでBBQの準備をしている。
三下が起きた時には全員既に着替えており、三下は悔しがっていて、ボルと守を捕まえ根ほり葉ほり聞いていた。
女性陣も興味があるみたいで、それに加わっていた。
守とボルはしどろもどろになりながら、赤くなりぼそぼそと答えていたのが印象的だった。
それを後目に御影と舞先生はコテージを離れ、海岸の方に向かう。
きれいな夕日に照らされた海岸は、まさに黄金のように輝いていて、映画に出てくるワンシーンのようだった。
二人ともサンダルに薄手のパーカーで海岸沿いを歩く。
風が心地よい。気温は三十度ほどだが、御影にとってはちょうど良い温度だ。
二人は無言だが気まずい空気はない。二人とも大人だ。精神的にも肉体的にも。
やがて目的地に着く。
「綺麗ですね」
太陽でできた膜の様だ。その一帯だけオーロラの様に空が揺らめき、天が祝福しているみたいだ。
「ここは私のお気に入りスポットだぞ」
舞先生は得意げな笑みで立ち止まる。
御影もしばらく空を見上げる。
「今日『何人』に見張られていた」
舞先生がそう質問する。
やっぱり気づいていたかと御影は思う。
天音達みたいに、実力行使に来たわけじゃないが、視線はいつも感じていた。それも複数だ。
更衣室の時から既に見られていた。
それもあって、御影は一般エリアから見て回り、全員の無事を確認したのだ。
視線も敵意を含んでおらず、偵察の意味合いが強かった。
「おそらく、大まかに分けて六グループ、百人以上って所ですかね。有名になったものです」
そう言って、御影は乾いた笑い声で、笑えないジョークを飛ばす。
キューブの事件で、日本各国に御影の実力の一端を知ることとなった。
今は調査段階だが、おそらく何らかのアクションはこの先あるところだろう。
リゾートダンジョンには、多数のスパイがひしめきあっている。有名な冒険者に各国の重鎮も来ることがあるからだ。
その仲間入りをはたした御影は頭が重くなる。
遅かれ早かれそうなるとは思っていたがもう少し、遅い段階でなってほしかったと。
「有名人はつらいぞ」
そう言って舞先生はからからと笑う。そうなってしまったのも、御影が全面的に悪いので何ともいえない表情だ。
その顔を見て笑いのつぼにはまったのか、舞先生の笑いが止まらず、御影はしかめっ面だ。
再び沈黙が訪れる。
「大丈夫か」
それは舞先生からもたらされた言葉。
どうとでも意味がとらえらるが、御影は舞先生がなにを言いたいか分かっていた。
「大丈夫ですよ。俺は『誰』にも負けるつもりはありませんし、たとえ誰が相手でも殺る時は殺ります。俺は『死なない』ですしね。舞先生、おそらく破滅の十二人はフェイルゲームか、その裏側に必ず行動を起こすと思います。フェイルゲーム内にいたら、俺が叩き潰しますが、もしもの時は、よろしくお願いします」
御影の懸念は、フェイルゲームに参加しているとき、仲間達やフェリスが襲われないか。
今回のフェイルゲームは、ダンジョンで行われるため参加すれば助けに行くことができない。
破滅の十二人がフェイルゲームに乱入するか、仲間達を狙うか、はたまた両方か。
動向が読めない。
本当にいるのか疑わしいぐらいに情報が入ってこない。裏クラブの人材を鍛え、舞先生も交えて話し合い作戦を立ててはいるが絶対ではない。
「安心して任せるがいいぞ。なんたってお前達の先生だからな」
お茶目な視線を御影に向ける。
「そうですね」
その視線の意味を理解し、仕方ない『奴ら』だなと、二人は消える。
「ど、こ(どこ言ったの~)」
「消失」
「今いいところだったのじゃー、何処でぶちゅーとするのじゃー」
「にゃー、メロメロドラマだったにゃー、見つけるにゃー」
「何かいややな予感ががが」
ちびっ子五人組は、ヤシの木の所で身を隠し、ミーハー根性で、見守っていた。
しかし五人の目から御影と舞先生は消えた。
そして、今日子はおそるおそる後ろを振り返る。
「ほぉ~、覗き見とは、いい度胸しているぞ」
「だ・れ・が、『ぶちゅー』とするのかな。教えてくれ」
怖い笑みの御影と舞先生がいた。
ちびっ子五人組は退散しようとしたが、動けない。
「す、も(すいません~。もうしないから許して~)」
「謝罪」
「すまないのじゃー」
「すまないにゃー」
「すすすみませんん」
五人は謝るが。
誰かが言った。でぱがめには、罰が必要だと。
「「覚悟はいいな」」
「お手やらかにお願いします」
三十分ほど少女たちの悲鳴が木霊していた