海にて14~最高級エリア05~
現れたのは舞先生。
気配から学園長派や、クラブ派のメンバーが集まっていて、そこに美夜の気配があり、駆けつけた。
このタイミングでの登場は偶然ではなく狙ってやったものだ。
着いた段階では言い争いの最中だった。
気配を消し御影から教わった隠蔽魔法で隠れ、言い逃れのできない証拠がでるまで待機していた。
そして、『証拠』ができこうして姿を現した。
御影も察知していたが、舞先生がその場にいると分かったため、任せた形だ。
「よくもうちのクラブメンバーをやってくれたな。この落とし前、どうしてくれるぞ」
美夜を撫で。
「よくやってくれたぞ。後はまかせろ」
天音達と対峙する。
この場で治すことはできない。美夜は安心したように、保っていた意識を失った。
今回の功労者は間違いなく美夜だ。美夜の口の堅さと、屈しない心が相手側の実力行使という実を結んだ。
御影は言っていた。危なくなったら遠慮せず言ってもいいと。しかし美夜は言わなかった。御影の不利に繋がると思ったからだ。
ことここにいたっては、それが舞先生の有利な状況に繋がった。
そしてチャンスから一転不利に陥った天音サイド。
天音達は驚く。誰一人として、舞先生が何時きたのすらも分からなかった。
天音は頭の中で考える。
思考はフル回転だ。
監視カメラは押さえています、人も出払ってますし、ここにいるのは信頼できるメンバーのみ、証拠はないはずですが。
そこら変は抜かりはなかった。短時間で、それだけ手配した。恐るべき行動力と決断力だ。
伊達に生徒会長をやってない。
しかし、今回は舞先生が一枚上手だった。
「ここにばっちり証拠が映っているぞ」
人の悪い笑みを浮かべながら舞先生が見せたのは、魔法カメラ。
天音は舌打ちしたいのを堪える。
一部始終を撮られていたという事だ。
失態だ。頭を鈍器で殴られた気分。気付かなかったのは天音の落ち度だ。
団は気配を察知するのが得意ではなく、花は美夜を相手取っていたため、天音が気付くべきだった。
隠蔽魔法のことは天音も知っている。表には伝わっていない裏の魔法、禁術に指定され、舞先生は使えなかったと記憶していた。
誰が教えたかは天音は分かっている。というか、消去法で言えば一人しかいない。
本当に忌々しいですね、御影友道。
どこからか現れた転入生。御影が来る前は、生徒会長として盤石だった。学園長派は五大派閥の中でも最弱の部類だが、安全圏にいたし、一派に隙を見せず押さえつけていた。
御影が来てからだ、綻びが見え始めたのは。
まず学園長派が窮地に陥った。
今は解決したが、一時は十枚をきり、他派閥から狙われていた。
次に信用だ。玲奈が問題を起こし、一に付け入る隙を与えてしまった。気付いていたが、部下に任せ七月のフェイルゲームにかかりっきりとなってしまったため、気付いたときには生徒会内でのパワーバランスが逆転していた。
そして何より玲奈の脱退が痛かった、
せっかく、根回しして、『貴族派』に悪印象を植え付け、こちらの派閥にくるよう誘導したが、一番肝心な時に逃げられた。
言葉のチョイスをミスしたが、御影が来なければ最低でも抜ける事はなかったはずだ。
どうする。
学園生を攻撃した映像はまずい。相手に落ち度はなく一方的に攻撃していたため弁解の余地はない。これが学園にばれれば、生徒会長としての地盤が揺らぎ、人気が低下し、さらに一派の優位になる。
全部映っていると仮定して、狙いは何だ。見せてきたという事は交渉の余地があるという事だ。
「用件を言ってください」
そういう他なかった。例え両派閥全員を集め、舞先生と戦闘した所で負けるのは目に見えている。自分達が不利になるだけだ。
それよりも、素直に要求を聞くのが正解だと天音が考えた末の結論だ。
そんな優等生ぶっている天音を嘲笑し、舞先生が口を開いた。