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海にて13~最高級エリア04~


「師匠をうるはずない。帰って」


 元々、普通に聞けるとは、天音も思ってなかった。


 しかし、そうは問屋がおろさない。


 はいそうですかと帰るわけにはいかなかった。


 天音は九割方、御影の参加を確信している。今回は絶対に勝たなければならない。そうしたら、とれる手はとっておくに限る。


 美夜は危険を察知し、後ろに飛び退く。


 元居た場所に長針が刺さっていた。


 三十センチほどあり、細く薄い針。


 やっぱりと美夜は思う。元々話し合いというのは建前で、最初から拘束する気だったのだと。


 針を投げたのは、花。不意をついて一発でしとめようと思ったが、避けられた事に驚く。


 そしてなるほどと思う。天音さんが警戒するわけだと。


 美夜の試験の動画を見たが、はっきり言ってとるに足らない存在だと花は思った。


 確かに、試験を受けている受験生の中では上位だが、花が入学した時よりも弱い印象で、三年の内に成長した今の自分の足元にも及ばないと。


 初撃で決めるつもりだった。どこかで侮っていたのかもしれない。


 この急成長の裏には御影がいると天音は言っていた。


 美夜だけじゃなく、カティナも水流もシンリィもほかの者も急成長を遂げている。


 御影と協力関係の雫や、この前学園長派を脱退した玲奈でさえも。


 それは、資料から分かっていた。


 天音は、今回の『フェイルゲーム』の最大の障害は御影だと言っていた。


 戦闘力だけで言えば、自分よりも上だと。


 花にとって、学園生で天音に適うものなどいないと思っていたので、俄には信じられなかった。


 今でも半々だ。しかし今回自分が参加するので、確率を上げておきたい。


 天音の期待に、花は答えたかった。


 天音の秘書みたいな形で、書記として影ながら支えていた。生徒会は今、対立している。一派と天音派に別れて。


 フェイルゲームの負けに、玲奈の脱退。ここの所、天音の失態続きで、一派が優位に立っている。


 今度のフェイルゲームは、五人一組だ。人数が足りないチームは、足りないチーム同士で補う。


 勝つためには最低でも、三人は必要だ。


 本来花と玲奈、クラブ派の蓮と桃子で組む予定だった。


 団と天音が話し合い、水面下でその様に動いていた。


 結果は花以外不透明だ。


 玲奈は既に派閥の人間ではなく、桃子は拒否し、蓮は、隼人に荷担し反乱した責任をとって団が謹慎と降格処分を下した。


 天音や団が色々と手を尽くしているが、戦力低下は否めない。


 本来ここに来るような時間はなかったが、花が我が儘を言った。


 死ぬ覚悟は既にしていた。遺書も大事に保管している。


 その前に、どうしても天音との思い出がほしかった。


 そのことを話すと、天音は二つ返事で了承し、クラブ派との懇親会という事で手配し、最高級ホテルを予約してくれた。


 正直身に余る光栄だ。私のために天音さんがここまで手を尽くしてくれた。


 本当に嬉しい。


 それに、こうして運も向いてきた。


 美夜を拘束し、御影と交渉し『フェイルゲーム出場辞退』の魔法契約書をかわすのが今回天音が即興で考えた作戦だ。




 早く誰かの元に行かないと。気配から周囲は敵が囲んでいるのは分かっていた。


 後ろを向いたらやられる。


 今はまだ、花の攻撃だけだ。それを美夜は最小限の動きで避ける。


 武器もないので避けるのみだ。


 天音と団の動きも注視し、花の攻撃も避ける。


 相当なプレッシャーで、精神力や体力がジリジリと削られてゆく。


 まだ数分だが、天気のせいもあり、額から汗がしたたり落ち、頭がぼやける。脱水症状にも似たような感じだ。


「そろそろ終わりにします」


 花は決めにかかる。


 もう少し追いつめても良かったが、天音の視線が決めろと言っている。仕込みはすでにすんでいた。


「冬虫夏草」


 見えていた針が消えた。


「んっ!」


 美夜の体内から這い出て、血吹雪が舞う。


 あくまで殺しが目的ではなく、人質として生け捕る為、致命傷となる部分は避けた。


 美夜は地面に張り付けとなっていた。


 動けない。


 地面に縫いつけられているように、力を入れても動けない。


 三人が近づいてくる。


 美夜にはどうすることもできなかった。



























「よくもまぁ、随分とやってくれたな。この代償は高くつくぞ」







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