表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/238

海にて08~高級エリア03~


「清音お姉ちゃん」


「げっ、ギルド長」


「よぉ、ひょんな所であったなぁ翼」


「あらあら、清音お姉さんも隅に置けませんわね。もう付き合ってお泊まりですか」


「何でこんなところにいるのさ」


 三者三様、風花達がばったりとあったのは、清音とディーノのペア。


 手は恋人繋ぎしており、風花達と会ったとき、ディーノはバツが悪そうな顔をしており、清音はまさかここに妹達がいるとは思っておらずびっくりしていた。


 それは風花達も同じで、翼は気まずそうな顔をしており、風花や雫も、清音はいろいろ忙しいため、ここにいるとは全く思っていなかった。


 とりあえず入り口で邪魔だという事もあり、五人で中に入る事となった。




「とりあえず生でいいか、あぁ、嬢ちゃん達はジュースだなぁ」


「あ~、すいません俺はウーロン茶で頼みます」


 ディーノは目を疑う。『とりあえず生』は冒険者の間では常識だ。飲めない者は馬鹿にされる。未成年は飲まないのは当然として、あの三度の飯より酒好きな翼が飲まないのは、驚きだった。


「真夏の海でビールを飲みてぇのは山々ですが、今は風花達の保護者だから、さすがに飲めめぇですよ」


 翼が補足する。一~五杯までなら全然平気なのだが年頃の嬢ちゃん達の前で、醜態をさらすのもあれだし、一杯飲んだらとまらなそうにないと思ったので自制した。夜、ホテルに帰ったら朝まで飲もうと。


「そっちはどうなんすか。まだ忙しいのに、まずいんじゃないですか」


 翼は強引に、話題を変える。


 ディーノは倍返しされた気分になる。自ら墓穴を掘ったみたいだと。


 まずいかまずいないかでいえばまずい。後始末がようやく終わったところだ。これから気を引き締め、復興に尽力しようと思った矢先。


 翼が驚いたのも無理はないだろう。


「それは私は無理を言ったのさ。忙しくなる前にどこかに泊まりに行こうと。そっちこそ随分と妹が『世話』になってるみたいなのさ」


 ディーノが、まごついている間に、清音が翼にキラーパスを送る。さらに倍返しだ。


 今度は翼が言葉が出てこない。


「クラブの皆で海に行くことになって、私が翼さんを誘ったんです。翼さんは悪くないですよ」


 言葉に詰まっている翼を風花は養護する。庇われた翼は何ともいえない表情で居心地が悪そうだった。


「あらあら、こうなってしまってはディーノさんも翼さんも形無しですわね。清音姉さんは何時実家に報告に行くのですか」


「ここに来る前、もう行ってきたさ。もちろん両親の了承ももらってきた。ディーノさんががちがちに緊張しちゃって、見物だったさ」


「おぃ清音」


 ディーノは文句を言おうと、抗議の声を上げようとするが、墓穴を掘りそうだったのでやめておいた。


 屈強な男達だが、こうなったら形無しで、嵐が収まるのを、猫より大人しく見守った。


 ディーノの訪問話と、翼との出会いと今までの話を、三姉妹が楽しく話しているのは、羞恥心的に拷問だったが、食事が来て、ようやく話の流れが変わり、ディーノが話題を変えた。


「良かったなぁ、いい師匠に巡り会えてよぉ」


 翼が、伸び悩み、不遇の時代を送っていたことをディーノは知っていた。ディーノは斧使いな為、剣の事は基本的なことしかわからない。


 心当たりがある者に手を回したが、一子相伝や門下生や流派の人間ではないと断られた。


 そんな翼が、良い師匠に巡り会えた。嬉しくないはずがなかった。


「俺も諦めてたんですがね、年甲斐もなく、今が一番楽しい。『俺達』は本当に運が良かった。桜花学園の講師の件ありがとうございます」


「おうっ、いいって事よ。今までなにもできなかった俺からのプレゼントだぁ」


 ギルド長のディーノは、ニナが生きていることを知っている。


 事情を聞き、知ってて見逃した。翼を講師として推薦したのもディーノだ。


 その時、初めて御影と言葉を交わしたが、第一印象は底が見えないだ。武器を使うのに秀でた奴はいる、魔法に秀でた奴もいる。しかし両方兼ね備えた奴は、ディーノは会った事はない。翼とニナ、一流の冒険者の得意分野を両方教えられる人間は。


 他にもクラブ全員を教えていると聞く。


 はっきり言って異常だ。人はそんなに全方向には延びず、一つの物に集中しほんの一握りの物が一流になれる。できるとしたらその人は仙人だ。


 そして闇が深い。得意なダンジョンを聞いたとき、心ダンジョンと闘ダンジョンと言っていた。


 ダンジョンの得意不得意は、その人の性質も関係している。


 闘ダンジョンはまぁいい、そのダンジョンが得意と言った者は大抵が戦闘狂だ。ディーノもそう聞かれたら真っ先にそう答える。


 問題は心ダンジョンだ。これをあげるのはド○か、精神異常者や破綻者か、既に精神が壊れている者か。


 誰だって、痛いのは嫌だし、トラウマなんてみたくない。


 ディーノは一回だけ行ったが、それっきり行ってない。御影は既十回以上行っており、その全てを平然とした表情でクリアしたと岬から聞いた。


 話していて、違和感は見られなかった。


 あのばあさんが言ってたことは本当なのかもなぁ、噂をすれば来たみたいだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ